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【マンガ】『プラネットガール』1巻―宇宙船でやって来た異星人の少女

『プラネットガール』大石 日々 / 小学館

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⇧1巻は、2019/11/12発売

 

<地球人に似た宇宙人>

この宇宙のどこかには、地球と似たような環境の惑星が存在していて、そこには人間と非常に似た生物が生息している ―という説があります。

地球と似たような大気、海、土壌があれば、そこで生命が誕生し、地球と同じような進化の過程をたどり、やがて人間が生まれるだろうという推測です。

地球の生物はそうやって環境に淘汰され、適応してきたからです。

 

一方、進化の過程でたまたま現在の状態になっただけで、たとえ環境が同じでも、地球と同じような生物が出現するとは限らないと言う人もいます。

環境ですべてが決まるわけではないし、地球上の生物も、遺伝子が少し違うだけで外見が全く変わってくるからです。

そもそも全く同じ環境などほとんどあり得ないのだから、環境の小さな違いが、外見上の大きな違いとなる可能性は十分にあります。

 

この漫画では、地球とよく似た環境の「ナズル」という惑星が登場します。

人類はナズルに到達しており、資源採掘や定住を視野に入れています。

そのナズルから、一人の少女が地球にやって来ます。

主人公たちは少女と意思疎通を図り、共同生活を始めます。

 

 「地球 画像」の画像検索結果

 

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<あらすじ>

主人公は造船所の整備士として働く24歳の青年・遠坂砂鉄。

中学の頃から働いているので、腕はすでにベテランの域です。

彼は宇宙が好きで、仕事のかたわら、宇宙で使われた実験用機体を自作しました。

最近は、その機体の安全性をシミュレーションで繰り返しチェックしています。

 

遠坂には宇宙飛行士の父がいました。

父は15年前、「海のある星」とされるナズルに、初の有人探査へ向かいました。

しかし機体トラブルにより宇宙船が遭難し、還らぬ人となりました。

その後、安全システムを厳しく見直し、人類は無人探査を重ねてきました。

そして来年、16年ぶりに二度目の有人探査を行うことが発表されました。

 

 遠坂は、父の行方をロクに捜索しなかった「宇宙環境開発管理機構」を恨んでいました。

そして実験用機体を試作してシミュレーションを重ねた結果、機体の安全性には問題がなかったことを確信しました。

 つまり組織は、遭難の本当の原因を隠しているのです。

 遠坂は原因は現地の環境要因だと考えていましたが、確かめる方法がありませんでした。

 

ある日、宇宙デブリ業者が造船所にやって来て、拾った物を置いていきました。

それは遠坂の父が乗っていた宇宙船に付属する作業船です。

父の行方の手がかりを求め、遠坂は作業船をこじ開けることにしました。

すると中には、一人の少女が入っていました。

少女は外見は人間そのもので元気そうでしたが、15年間も宇宙を漂っていたことから人間ではなさそうです。

 

遠坂は少女をソラと名付けました。

ソラは何の疑問もなく人間のご飯を食べましたが、話すことは出来ませんでした。

 

作業船だけでも地球に帰還していたという事実が、なぜニュースになっていないのか、遠坂は疑念を抱きました。

つまり、宇宙開発管理機構が何か隠しているということです。

また、彼女の存在を公表すれば、実験材料にされるかもしれません。

遠坂は一人ぼっちのソラを見ているうちに、自分が自作した実験用機体を使って、ソラをナズルに還してあげることを思いつきます。

 

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<まとめ>

 地球とよく似た環境の惑星「ナズル」。

一人の少女(宇宙人・ソラ)がそこから地球にやって来ます。

ナズルで遭難した宇宙飛行士を父に持つ主人公(遠坂)は、ソラが乗って来た宇宙船を調べながら、ソラと共同生活を始めます。

 

 まだまだ物語は始まったばかりで、今後、本格的に宇宙に飛び出すのかは不明です。

ソラの生態は徐々に明かされていきます。

地球に似た惑星ではどういう生物が生まれるのか、著者のアイデアが楽しみです。

 

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【小説・ミステリー】『太陽は動かない』―テロに巻き込まれた諜報員【2020年5月映画&ドラマ化】

『太陽は動かない』吉田修一 / 幻冬舎

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⇧文庫版は、2014/8/5発売

『太陽は動かない』は【鷹野一彦シリーズ】の1作目で、鷹野の31歳の頃が描かれています。

シリーズ第2作目の『森は知っている』は、鷹野の17歳の頃を描いた青春篇です。

こちらもすでに文庫化されています。

 

 

2020年5月15日(金)から映画公開されます。

さらに5月24日(日)からドラマ放送もスタートします。

(毎週日曜夜10時~, 全6話, WOWOWプライム)

映画版とドラマ版ではストーリーは異なります。

主演は藤原竜也さんで、その相棒役は竹内涼真さんです。

 

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【小説】『太陽は動かない』【2020年5月~ドラマ&映画化】

 

 

<民間の情報屋>

 諜報機関として有名なものに、CIA(アメリカ)やMI6(イギリス)やモサド(イスラエル)などがあります。

これらの組織は巨大で、人員も豊富です。

彼らの仕事は、自国の利益につながるような活動を支援・誘導することです。

利益のためには倫理観を無視しがちなのが特徴です。

 

CIAほど巨大組織ではないですが、民間にも諜報機関のように情報を扱うことを生業としている会社はあります。

この小説の主人公(鷹野)が所属する会社・「AN通信」がまさにそうです。

情報収集が仕事で、その情報を売ってお金を稼ぎます。

民間会社なので、社員は自国のために動くのではなく、自社の利益のために動きます。

諜報機関と同様に、儲かるなら倫理観は無視しがちです。

 

情報収集しているだけはお金にならないので、それをどこかに売る必要があります。

対立する組織があれば、どちらが自分達が持っている情報を高く買ってくれるかが重要になってきます。

倫理的に正しい方ではなく、利益がより出せる方に情報を渡すわけです。

当然のことながら敵も作りやすいし、どちらの陣営からも命を軽視されやすい存在でもあります。

 

 これは、そんな民間の諜報機関(スパイ組織)の物語です。

 

 「情報 画像」の画像検索結果

 

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<あらすじ>

 主人公の鷹野一彦は、AN通信情報部の情報員です。

AN通信は表向きはアジアのニュース配信会社ですが、裏では諜報機関の顔を持っています。

鷹野は部下の田岡と一緒に、裏の仕事に従事しています。

田岡は情報収集能力は高いですが、麻薬に溺れていた過去があります。

鷹野は田岡の薬物中毒が再発しないよう、監視の役目も担っていました。

 

鷹野はベトナムのサイゴンにいました。

ベトナム政府から「新たに油田を発見した」との発表があったので、中国のエネルギー企業たちが動くだろうと考えたからです。

近年、中国の大手企業グループは利益追求を優先し始め、中国政府の支配が及ばなくなってきていました。

「中国の情勢を把握するためには中国政府の動きだけを見ていればよい」という時代は終わったのです。

 

 

 鷹野は、中国で開催されるサッカーの日韓戦で、ウイグルの過激派がスタジアムを爆破しようとしている情報を手にしていました。

そのテロの目的は、新疆ウイグルの「新源石油」と、日韓企業との提携を阻止することです。

過激派を支援しているのは、中国政府とCIAです。

「新源石油」が言うことを聞かないので、中国政府は事業の拡大を妨害しようと考えたのです。

 

テロの流れはこうです。

もしスタジアム爆破が成功すれば、ウイグル民族の現状が露見し、日韓の世論はウイグル「新源石油」を非難する方向に傾きます。

すると「新源石油」は、イメージダウンを懸念した日韓企業と提携できなくなります

「新源石油」は孤立してしまい、中国政府主導の企業と提携せざるを得なくなります。

 

 鷹野と田岡は、ウイグル過激派と交渉して日韓企業側に寝返ってもらおうとします。

両者を引き合わせた時に、テロ情報が高く売れるはずだと考えたのです。

さっそく鷹野は、ウイグル過激派と繋げてくれそうなツテを当たるため、上海に向かいました。

 

鷹野は独りでウイグル過激派と会いに行きますが、交渉は決裂しました。

そしてその間に田岡が何者かに誘拐されてしまいました。

誘拐犯の要求は、テロを阻止することです。

誘拐犯によれば、田岡は爆破されるスタジアムのどこかに隠されたようです。

 

テロ実行まであと3日。

テロを止めるための交渉はすでに失敗済みです。

果たして鷹野は、爆破のタイムリミットまでに田岡を救い出せるのでしょうか。

 

 「タイムリミット 画像」の画像検索結果

 

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<まとめ>

 スパイ組織「AN通信」に所属する2人の諜報員(鷹野と田岡)が、機密情報を巡って、各国のエージェントや権力者達と頭脳戦を繰り広げます。

 いろんな勢力が入り乱れてお互いを探り合う、王道スパイサスペンスです。

石油や太陽光といった、エネルギー産業を題材にしています。

 

機密情報を売買する以上、命の危険は発生します。

人の命よりも、巨大な利権のかかった情報が重視される世界です。

息詰まる情報戦が楽しめます。

 

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【小説】『太陽は動かない』【2020年5月~ドラマ&映画化】

【マンガ】『亜童』―軍事機密能力者の少年たち【令和版AKIRA】

『亜童』天野 雀 / 講談社

⇧1巻は、2020/2/6発売

 

 

<息つぎなしの逃亡劇>

 漫画やアニメで、魅力的な逃亡劇を描くのは大変です。

会話が多い推理ものや、一ヶ所で戦うバトルものと違って、背景が固定できない(使い回せない)からです。

次々と場面が切り替わっても、読者が今何が起きているのか理解できるよう、作者は背景描写を逐一丁寧にやる必要があります。

似たような背景を描かない作画は、かなり手間がかかるのです。

 

そして、ただ逃げている主人公と、追いかけて来る敵を描いていればいいわけではありません。

なぜ逃亡劇になったのかという状況説明も必要になります。

ところが下手に回想シーンを入れると、逃亡劇のテンポや緊迫感が失われるので、説明はタイミングと長さが重要になってきます。

 

 背景描写が上手く、状況説明のタイミングも量もバッチリな漫画は、息つくヒマもなく一気に読まされます。

この漫画がまさにそうです。

読み始めたら最後まで止まらない、非常に構成の上手い作品です。

 

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<あらすじ>

日本が移民を受け入れて、人種のるつぼとなった近未来。

ネット環境は5Gになり、顔をスキャンすれば氏名・年齢・国籍がすぐに分かり、本人確認が容易な時代です。

自動運転車もありますが、人間が運転している車も多いです。

最近では、雇用を奪われた日本人の一部が、移民を排斥するデモを行っています。

 

19歳の冴木リコは、15歳のときに家を出てからフリーターとして暮らしていました。

彼女は今、コンビニのバイトをしていますが、店長がネチネチと絡んでくるので嫌気がさしていました。

そして6度目の遅刻を機に、彼女はバイトを辞めました。

 

リコはある日、トラックに轢かれそうになった少年・エイトを救いました。

エイトは迷子のようだったので、警察に連れて行きました。

リコは警察でエイトの母なんじゃないかと言われましたが、本人確認後に疑いは晴れました。

一方、エイトのIDデータは警察に登録されていませんでした。

「アンタ、このままだと孤児院に送られるよ」というリコの発言を受け、エイトは警察署から逃げ出します。

 

リコはエイトの預け先に困りましたが、とりあえず夕飯を食べに中華料理屋に入りました。

 いざ料理が運ばれてきて、さあ食べようという瞬間、窓際に座っていたエイトは外から狙撃されました。

窓ガラスが割れたことにリコも周囲の客も驚きますが、もっと驚いたことは、エイトの右腕が植物化し弾丸を受け止めていたことです。

 

 その後、エイトを狙撃した武装部隊は店内に突入してきました。

 彼らはエイトを殺害するため、容赦なく一斉射撃を始めます。

エイトは防御しきれずに重傷を負っていきます。

リコは射撃の間隙をぬってエイトを店内から連れ出し、射撃部隊から逃亡しました。

事態はよく飲み込めていないリコでしたが、このままエイトを放り出すのは寝ざめが悪いので、エイトを守ることを決意しました。

 

実はエイトは、軍の研究所で生み出された特殊能力者の一人だったのです。

彼らは「亜童」と呼ばれ、自分の肉体を植物化して攻撃や防御が出来ます。

エイトは研究所から脱走したのですが、軍の追手に見つかってしまいました。

機密保持のためか、エイトには殺処分命令が出ていました。

 

果たしてエイトとリコは、軍の追跡から逃げ切れるのでしょうか。

 

「植物 画像 人体」の画像検索結果

 

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<まとめ>

 近未来を舞台とした、本格SFアクション漫画です。

 軍によって生み出された特殊能力を持った少年が、研究所から逃げながら、追手の軍と戦います。

肉体を植物に変えられる能力は特別斬新なものではありませんが、その能力発動の迫力は抜群です。

 

絵は上手く、オリジナリティもあります。

新人作家とは思えない巧みな画面構成、テンポ、キャラクターの表情の豊かさが魅力です。

まさに令和版『AKIRA』とも呼べる、存在感のある作品です。

 

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【小説・ミステリー】『微笑む人』―犯行動機が読めない犯人【2020年3月・ドラマ化】

『微笑む人』貫井 徳郎 / 実業之日本社

⇧2015/10/3発売(文庫)

 

2020年3月1日ドラマ放送されます。

(夜9時~テレビ朝日<日曜プライム>)

主演は松坂桃李さんです。

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【小説】『微笑む人』/ 犯行動機の読めない犯人【2020年3月ドラマ化】

 

 

<動機の読めない犯人>

夫が妻を(妻が夫を)殺すような家庭内殺人が起きたとき、世間やマスコミは分かりやすい動機を探そうとします。

・普段からケンカが絶えなかった

・金銭トラブルを抱えていた

・どちらかが浮気をしていた

・仕事で問題を抱えていた

などです。

 

そしてそれらが見当たらない場合、犯人の人格形成に原因を求めがちです。

・幼少期に親から虐待を受けていた

・学校でひどくイジメられていた(あるいはイジメの主犯格だった)

・貧しかった

・トラウマを抱えるようなショッキングな出来事があった

・動物虐待などの猟奇的兆候があった

などです。

 

真実はそんなに単純なものではないはずなのに、多くの人は分かりやすい理由を求めます。

早く答えを手にして納得したいからです。

モヤモヤした気持ちを解消するため、お手軽な答えで済ませようというわけです。

 

とはいえ、世の中には上記のどれにも該当しない犯人もいます。

この小説の犯人がまさにそうです。

犯行動機を供述してはいますが、常人にはおよそ理解できないものです。

主人公は事件を取材し、犯人の本当の動機を探ろうとします。

 

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<あらすじ>

 主人公の「私」の本業は小説家ですが、次の作品はノンフィクションを書いてみることにしました。

マスコミが報道していた、とある家庭内殺人の犯人に興味を持ったからです。

犯人とされた仁藤俊実は、すでに逮捕されて犯行動機も自供していました。

しかしそれがあまりに常識からかけ離れていたため、世間も「私」も、供述は嘘なのだろうと考えていました。

 

事件のあらましは以下の通りです。

 

2009年4月11日。

神奈川県の安治川で水難事故が起こりました。

娘が川に流されて、それを救おうとした母親も溺れたようです。

通報を受けた救急隊が現場に駆け付けたとき、夫である仁藤俊実は妻に人工呼吸をしていました。 

その後、救急隊が手を尽くしましたが、仁藤の妻と娘は蘇生できませんでした。

 

仁藤は遺体を自宅に搬送し、葬儀の手続きをしました。

ところが近所の葬祭場の枠がいっぱいで、火葬は3日後だと言われました。

これが完全犯罪になりかけた仁藤の運命を分けました。

火葬の前日に、仁藤の犯行の目撃者が現れたのです。

目撃者は事件当日、仁藤が妻の頭を川の中に押し付けている様子を見て、怖くなって逃げ出しました。

彼は何かの見間違いだと思い込もうとしますが、ニュースを見て現実だと分かり、通報を決意したのでした。

 

最初は犯行を否認していた仁藤でしたが、妻の爪の間から仁藤の皮膚が発見された後は、犯行を認めて自供しました。

 彼が妻と娘を殺害した動機は、なんと「本が増えて家が手狭になったから」というものでした。

妻や娘がいなくなれば、その分部屋が空き、本が置けるようになるというわけです。

実際仁藤は読書家で、家には本があふれていましたが、警察もマスコミもその説明では納得できませんでした。

 

「私」は仁藤の仕事先や近隣住民や学生時代の友人たちに、仁藤の人柄や言動を聞いて回りました。

すると、誰もが口をそろえて彼を褒めたたえました。

仁藤は仕事は出来るし、後輩に偉ぶることもなく、誰にでも親切で、適度な冗談も言うし、いつも穏やかで笑顔を絶やさない人物のようです。

感情的になることは全くなく、殺人を犯すような人間では決してないという評価です。

彼が自供した後でも、彼の知り合いたちの中には「冤罪ではないか」と疑っている者が多くいました。

 

「私」は取材を重ねるたびに、仁藤の犯行動機の異常性と、彼の知人が語る人物像とがあまりにも違うことに困惑していきます。

 

「微笑 画像」の画像検索結果

 

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<まとめ>

「家が手狭になったから」という理由で妻と娘を殺害した男。

そんな理由では納得できない警察と世間。

小説家の「私」は、本当の動機を探るために取材を重ねます。

 

男はトラウマを抱えているわけでもなく、暴力的なわけでもありません。

浮気や金銭的トラブルもなく、職場でも全く問題がありません。

人を殺す動機が一切見当たらないのです。

 

 果たして、本当の犯行動機とは一体何なのでしょうか。

 

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【小説】『微笑む人』/ 犯行動機の読めない犯人【2020年3月ドラマ化】

【マンガ】『アニメタ!』―アニメーターの厳しい世界

『アニメタ!』花村ヤソ / 講談社

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⇧1巻は2015/12/22発売。

 最新刊の5巻は、2020/1/23に出ました。

 アニメーターを題材とした漫画です。

 

 

<アニメーターの厳しい世界>

 アニメーターの世界で食べていくのは厳しいと言われています。

「絵を描く才能が必要」とか「長時間労働がキツイ」といった理由もありますが、最大の理由は「動画は出来高制」だということです。

つまり、いくら時間をかけて何枚も描いても、OKが出なければお金にならない(給料がゼロ)ということです。

何十回も修正してようやくOKをもらえても、それは1枚の絵を描いた値段でしか評価されません。

 

新人の頃は誰しも一番技術がないので、修正だらけになります。

修正している間は一切お金を稼げていない状態なので、新人アニメーターの給料は極端に少なくなります。

この漫画の主人公は、新人で知識も経験も少なかったので、5日で210円(時給7円)しか稼げませんでした。

それではたとえ休みなしで働いたとしても、月給6万8000円にしかなりません。

 

アニメーターの1、2年目は、一番生活が苦しい時期です。

一番練習しなければならない時期でもあるので、生活のためにバイトしていたら練習時間がなくなり、技術はなかなか上がりません。

つまり親の仕送りなどの援助がなければ、とても続けていけない職業なのです。

もちろん、「アニメが好き」という気持ちがあるのは大前提です。

 

この漫画は、そんな厳しい新人アニメーターの世界を描いています。

 

 「アニメーション 原画」の画像検索結果

 

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<あらすじ>

 主人公・真田幸は小学生の頃は、何にもやりたい事がない空っぽの人間でした。

周囲の友人にもテキトーに話を合わせ、部活で頑張っている同級生たちを冷めた目で見て毎日を過ごしていました。

ところが、彼女が中学生になって偶然録画されてしまったアニメを観た瞬間に心を奪われ、アニメーターを目指す決心をしました。

 

19歳になった真田は、業界では有名な「N2 FACTORY STUDIO」の入社試験を受けました。

彼女はアニメの専門学校や美術系の学校を出ていないので、アニメ制作の基本的な流れや専門用語を知りません。

では絵の才能があるのかといえば、全くそんなことはありません。

しかし書類選考は突破し、なんとか二次試験の実技と面接に進むことが出来ました。

そして何故か面接後に第7スタジオの監督に気にかけられ、採用が決定しました。

 

出勤初日、真田は他の新入社員と一緒に研修を受けました。

研究期間の動画の師匠は、動画検査を担当している富士です。

富士はまず、真田たちに「原トレ」してみるよう指示しました。

「原トレ」とは「原画トレス」の略で、原画の線をなぞって清書することをいいます。

これは動画の基本中の基本なので、他の新人たちは当然知っていましたが、専門教育を受けていない真田だけは知りませんでした。

 

真田は「原トレ」をやったことがないので、勝手が分からず戸惑いました。

線を一本引くのにも、思い通りにいかなかったからです。

何度やってもやり直しになり、全然課題が終わりません。

一方、他の新人たちは経験者なので、ダメ出しを食らいながらも次のステップへ進んでいきます。

真田は「早く描かなきゃ、キレイに描かなきゃ」とますます焦ることになり、線は最初よりも歪んでいきます。

 

真田は家に帰ってからも練習を重ね、ゆっくりですが技術を向上させていきます。

果たして彼女は、アニメーターとして生き残れるのでしょうか。

 

「アニメーション 原画」の画像検索結果

 

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<まとめ>

 技術も知識もない業界未経験の主人公(真田)が、アニメーターになって成長していく物語です。

真田はアニメが好きですが、ちょっと絵が描けるだけという素人同然のレベルです。

だからアニメ業界のことを知らない読者でも、彼女と同じ目線でアニメーターの仕事を学んでいくことが出来ます。

 

話は分かりやすくて丁寧なので、アニメ業界のことを知りたい方は読んで損はないと思います。

「お仕事漫画」としても面白く、共感できる人は多いはずです。

 

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【小説】『時空旅行者の砂時計』―探偵はタイムトラベラー【このミステリーがすごい2020・21位】

『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵 / 東京創元社

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⇧2019/10/11発売。(ハードカバー)

『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第21位にランクイン。

 

 

<登場人物の多いミステリーの対処法>

登場人物の多い小説が苦手な人は多いと思います。

読み進めていくと、誰が何をやっていたかゴチャゴチャになるからです。

ミステリーにおいても、登場人物が多過ぎると困ります。

読者が容疑者の行動や発言を追いきれなくなるからです。

 

例えば、富豪の一族が所持する館や別荘などで一堂に会して、そこで殺人事件が起きるというミステリーはよくあります。

4世代くらいの親戚一同が集うので、登場人物が多いです。

彼らは名字(姓)がほぼ同じなので、名前でしか読者は区別できません

とはいえ、名前も似ていたりするので、どちらが兄(姉)でどちらが弟(妹)なのか瞬時に思い出すのは難しいものです。

叔父、叔母、姪、甥などの関係性などは覚えていられません。

 

こういったミステリーに慣れていないと、読み進めるのが嫌になるかもしれませんが、安心して下さい。

犯人が用いたトリックは、読者が容疑者の人間関係を細かく覚えていなくても、理解できるよう設計されています。

人間関係の細部を突くような真相にすれば、「分かりにくい」という批判が殺到することを作者は心得ているからです。

つまり、あなたが「ややこしそう」と感じる描写は、飛ばし読みしても問題ないのです。

 

「登場人物が多いミステリー」というだけでは何のウリにもなりませんから、作者は別の仕掛けを用意する必要があります。

この小説では、それはタイムトラベルです。

 

「タイムトラベル 画像」の画像検索結果"

 

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<あらすじ>

 2018年。

主人公・加茂冬馬は、病院で容体が悪化してゆく妻の伶奈を見守っていました。

やがて伶奈はICU(集中治療室)に移動し、人工呼吸器を着けることに決まりました。

彼女は夫にこう言いました。

「こうなることは分かっていた。ずっとずっと前から」

 

伶奈の家系—竜泉家には呪いがありました。

1960年に当主の誕生日パーティーがあり、別荘に集まった親類と関係者が次々と殺されました。

生き延びた者たちも、続けて発生した土砂崩れに巻き込まれ、全滅しました。

当主のひ孫・文乃が知人に預けられていたことで、一族の遺産をすべて受け継ぎましたが、その17年後に強盗に殺されました。

文乃の子孫のほとんどは、35歳になる前に死亡しています。

伶奈は今や、竜泉家で唯一の生き残りなのです。

 

加茂はICUで必要なものを買いに行くため、一旦病院を出ました。

すると彼のスマホに”マイスター・ホラ”と名乗る人物から、電話がかかってきました。

ホラは、予め加茂の車に置いておいた砂時計を使えば、タイムトラベルが出来ると伝えました。

「1960年に起きた事件を解決すれば、竜泉家の呪いで伶奈が死ぬことは避けられる」というホラの口車に乗り、加茂は一縷の望みに賭けて過去にタイムトラベルします。

 

この小説のタイムトラベル(時空移動)には4つの制約があります。

<1>12時間以上間を空けなければ、能力を再発動できない。

<2>移動の最小単位が一辺3mの立方体なので、その中に入っていた物も転送されてしまう。

<3>目標地点から±5m、時間は±2時間の誤差が出る。

<4>同じ時間に同一人物が二人以上存在することは出来ない。

 

つまり危険なので、安易にタイムトラベルを使えないということです。

 

タイムトラベル後、文乃が味方してくれたこともあり、加茂は竜泉家の別荘にゲストとして受け入れてもらえました。

その時はすでに、第一の殺人事件は起きた後でした。

加茂は私立探偵として振る舞い、事情聴取を始めます。

事件解決のタイムリミットは、土砂崩れですべてが飲み込まれるまでの4日間です。

 

果たして加茂は、犯人を見つけ出して現代に帰還できるのでしょうか。

 「タイムトラベル 画像」の画像検索結果"

 

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<まとめ>

 瀕死の妻を救うため、主人公の夫(加茂)は1960年にタイムトラベルします。

そこで妻の一族に伝わる呪いを解消すれば、現代では病気にならなくて済むという理屈です。

 タイムトラベルに設けられた制約が、物語を面白くすると同時にトリックにも関係してきます。

 

登場人物の多さに戸惑うかもしれませんが、家系図がついているので理解を助けてくれます。

人間関係を把握しきれなくても、後半からの急展開は十分楽しめるので、安心して読んでください。

 

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【マンガ】『Dr.STONE』14巻―石化は最高の回復方法!【アニメ第二期決定】

『Dr.STONE』稲垣理一郎・Boichi / 集英社

⇧2020/2/4発売

 

アニメ第二期が放送されることが決定しました。 

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<前巻までのあらすじ>

ある日、世界同時に原因不明の人類石化現象が起こりました 。

それから地球では何千年も経過し、当然科学文明は崩壊し、失われました。

3700年後、高校生の主人公・千空(せんくう)は石化から目覚めました。

石化が解除されたメカニズムは不明のままですが、試行錯誤の末に、解除方法は発見できました。

石化している人間に、ある特定の濃度のナイタール液(復活液)をかけるのです。

(※ナイタール液=コウモリの糞尿から抽出した硝酸+アルコール) 

 

千空は、同級生だった大樹(たいじゅ)と杠(ゆずりは)を復活液で目覚めさせ、

行きがかり上、格闘術の達人・司の石化も解除することになります。

司は、薄汚い大人がいる社会を復活させる必要などない、これは人類をリセットするチャンスだと言って、千空たちと対立します。

 

 千空は石化から免れた人間たちの末裔であるコハクと出会い、彼女の住む村で暮らし始めます。

科学を使って村人たちを次々と魅了していき、皆から仲間だと認めてもらえるほど信頼を獲得しました。

 

ついに司軍との決戦を迎え、千空たちは勝利を収めます。

しかしその戦争で司が重傷を負ってしまい、医療が不十分の世界では彼を救えないので、一旦コールドスリープさせることにしました。

その間に石化現象の謎を解き、司を再度石化させ、さらに石化を再解除しようという計画を立てます。

石化解除時に起こる謎の身体修復現象を利用して、司の致命傷が治癒することに望みを託そうと考えたのです。

 

石化現象の謎を解明するため、千空たちは船を造って日本を旅立ちました。

まずは宇宙飛行士の父親が残した貴金属(プラチナ等)を手に入れるため、父親が暮らしていた島に向かいました。

島には小規模な村があり、かなりの数の住人達が暮らしていました。

 

千空たちが島に上陸してすぐに、島の支配者勢力たちによって、仲間たちのほとんどが石化されてしまいました。

なんと彼らは、狙った人間を石化できる《石化武器》を所持していたのです。

石化を免れた千空、コハク、ゲン、銀狼たちは、仲間の石化の解除を試みつつ、《石化武器》を奪い取る作戦を計画します。

 

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<石化は最高の回復方法>

 謎の光によって瞬時に肉体が石化してしまう【人類石化現象】。

そのメカニズムは不明ですが、解除方法は1巻からすでに提示されています。

石化している人間に、ある特定の濃度のナイタール液(復活液)をかけるのです。

(※ナイタール液=硝酸+アルコール) 

 

 石化が解除できなければ永遠に動けないままです。

 何かの衝撃でバラバラに砕ければ、それは死と同義です。

しかしバラバラになっても、破片をくっつけてから復活液をかければ、つながった状態で肉体は石化から解除されます。

さらにその人が石化される前に抱えていた故障やケガも、【石化➡石化解除】を経ることで、治った状態で復活できます

 

つまり石化させる方法と、石化解除する方法の二つを手にすれば、医者いらずというわです。

深刻なケガを負えば、わざと石化されて解除してもらえば治るからです。

まさにタイトル通り【Dr.STONE】です。

 

千空は石化解除の手段を持っていますが、石化させる手段は持っていません。

敵は逆です。

両方の手段を手にした者は最強です。

石化武器は回避不能の攻撃アイテムですし、石化解除で大ケガは何度でも治せます。

 

いずれ石化のメカニズムも、科学的に解明されるでしょう。

楽しみですね。

 

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<まとめ>

敵の石化光線を浴びずに済んだ千空たちは、石化された仲間たちを一人ずつ石化解除していきます。

同時に、人間を石化させる《石化武器》の争奪戦が始まります。

徐々に敵の内情や、石化武器の秘密も明らかになっていきます。

 

 もちろん科学的な工作トピックもあります。

毎巻、新しい事が学べるSF冒険漫画です。

 

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【小説】『鹿の王』―致死性の疫病・黒狼熱の謎を解け!【2020年9月映画化】

『鹿の王』上橋菜穂子 / KADOKAWA

⇧文庫版(全4巻)は、2017/6/17発売。

ハードカバー版は上下巻の2冊に分かれています。

2015年の本屋大賞受賞作です。

ファンタジー小説であり、大人でも楽しめる児童文学でもあります。 

 

続編の『鹿の王 水底の橋』は2019/3/27に出ました。

 ハードカバーです。

 

 

2020年9月18日からアニメ映画が全国公開されます。

制作はProduction I.Gです。

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<存在感のある世界観>

本当に面白い児童文学は、大人が読んでも面白いものです。

作者が子どもをナメて、わざと平易な設定にしたとしたら、それは大人はもちろん、子どもにとっても面白くないものになります。

一見難しそうな概念や現象を、作者なりの表現力で分かりやすく読ませてくれるのが優れた児童文学なのです。

 

 児童文学やファンタジー小説が面白いかどうかの一つの指標として、作品世界における「医学」の扱われ方があります。

病理学的な設定は特に重要です。

つまり、「どのレベルまで科学的な知見を導入するか」という問題です。

あまりリアルにやり過ぎると作品の世界観と合わなくなりますし、何でもアリにし過ぎると病気やケガの深刻さが読者に伝わらなくなります。

例えば超リアルにやりたいなら「最初から〈医療モノ〉を書けよ」という話になりますし、回復魔法があるなら「さっさと治療しろよ」というツッコミが入ります。

 

また、複雑な設定にすると読者が付いて来れなくなりますが、簡単すぎる設定だと薄っぺらく見えるというジレンマもあります。

この『鹿の王』は児童文学ですが、子どもの知力をバカにせず、人間の免疫系病気の感染経路についても、独自の言葉で分かりやすく説明してあります。

さらに病理学だけでなく、飛鹿(ピュイカ)という架空の動物の生態についても詳しく設定されており、作品世界の存在感を強固にしています。

 

要はこの小説は、読者が安心して身を委ねられる、非常に安定感のある作品だということです。

 

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<あらすじ>

 舞台は南北を海で挟まれ、東西を東乎瑠(ツオル)帝国とムコニアという巨大な国に挟まれた架空の地域・アカファ

東乎瑠帝国はその勢力を拡大するべく、アカファに点在する様々な民族を支配下に置こうとしています。

東乎瑠には圧倒的な兵力があるので、ほとんどの民族は今では恭順を示しています。

 

「鹿の王 地図」の画像検索結果"

 

この物語には主人公が二人います。

一人は、トガ山地出身のはぐれ者集団《独角》の頭領・ヴァン

もう一人は、東乎瑠帝国の皇帝から信頼されている、オタワル王国の末裔の天才医師・ホッサル

彼らが中心となって、アカファ地域で発生した疫病の謎と陰謀に立ち向かいます。

              ・・・・・・・・

 

ヴァンは《独角》を率いて東乎瑠帝国と戦いましたが、敗北して捕虜になりました。

彼はアカファ岩塩鉱に連れて来られ、他の地域から集められた奴隷たちと共同生活をしながら、塩を掘る仕事をさせられます。

それは「死体となるまで長くて3ヶ月」と言われるほどの重労働環境でした。

夜は足枷をはめられて脱獄しないよう監視がついています。

ヴァンはそこで死ぬ気はありませんでしたが、特に脱出計画を練っていたわけでもありませんでした。

 

 ある夜、ヴァンの寝ている地下フロアに、山犬(オッサム)が侵入してきました。

労働者たちは皆、鎖でつながれているので逃げられません。

山犬は次々と人を噛んでいきます。

ヴァンも同様に噛まれましたが、反撃し山犬を撤退させることに成功しました。

 

その後、長くうなされて目を覚ましたヴァンは、同じフロアの労働者たちが全員死んでいることに気付き、驚きました。

山犬に噛まれた者たちが何かの感染症になったことが疑われましたが、ヴァンだけが生き残った理由は不明です。

ヴァンは足枷を破壊し、地上に出てみました。

すると監視員や料理係の女たちも、全員死亡していました。

いつまでもこんな物騒な場所にいられないので、唯一生き残っていた子ども・ユナを連れて、ヴァンは西へ旅立ちました。

 

数日後、医師ホッサルは部下を連れて、死亡事故があったという岩塩鉱を訪れました。

現場の状況を聞き、遺体を検分した彼は、《黒狼熱(ミッツァル)》である可能性を推理しました。

黒狼熱はかつて彼の祖国が滅ぶ原因となった、6000人以上が亡くなった疫病です。

しかし250年前に流行して以来、発症した者はいなかったので、未だ治療薬はありません。

 

ホッサルたちの現場検証の結果、労働者を収監していた牢獄から、一人の脱走者(ヴァン)がいることが分かりました。

その脱走者は黒狼熱に感染しても生き延びたことから、黒狼熱の免疫を持っていると思われます。

ホッサルは黒狼熱の治療薬を早急に創りたかったので、追跡の専門家にヴァンの捜索を依頼しました。

 

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<まとめ>

 致死性の疫病・黒狼熱が拡大しようとしている架空の地域・アカファ。

そこで生きる飛鹿使いのヴァンと、天才医師のホッサルは、黒狼熱に関する陰謀に巻き込まれます。

キャラクターは誰もが魅力的だし、ストーリーも文句の付け所がありません。

 

病理学や動物の生態の設定も見事で、児童文学ですが、大人が読んでも存分に楽しめるよう練り込まれています。

風景描写も非常に丁寧で、作品世界の存在感が抜群です。

 

誰もが夢中で読めるファンタジー小説です。

 

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【マンガ】『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』―飛天御剣流よりヤバい殺人剣!

『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』榎本俊二 / 講談社

[榎本俊二]の斬り介とジョニー四百九十九人斬り (アフタヌーンコミックス)

 ⇧2010/12/10発売。

1冊で完結です。

 

 

<人を斬りまくる漫画>

誰もが暴力的な気分になることはあります。 

しかし実際に行動に起こすと犯罪になるので、代替手段が必要になります。

その手段の一つが、シンプルで暴力的な漫画を読むことです。

とはいえ、暴力衝動に身を任せただけの作品は意外と少ないものです。

 

漫画作品で戦いが描かれる時、対立する二つの勢力の両方に言い分があります。

どちらが正しくどちらが間違っているかは、実際には決められないことが多いです。

大抵は、そういった現実に即したドラマが描かれます。

 

勧善懲悪もの」だったとしても、どういう風に相手が悪く、それを倒そうとする主人公側にどういう正しさがあるのかを説明する必要があります。

これは大人だけでなく、子どもを対象とした物語にも当てはまります。

(例:水戸黄門、戦隊もの.etc)

 

このように、手軽にスカッとしたい漫画が読みたいだけでも、状況や設定の説明を理解するという手続きが必要なのです。

面倒なので省略してほしいと思う方もおられるはずですが、そんな漫画は世の中にほとんどありません。

 

一方、これから紹介する『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』は、なんと設定の理解が不要の漫画です。

ただひたすらに人を斬りまくるだけだからです。

 

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<あらすじ>

 ストーリーは至ってシンプルです。

世界観は「侍がいる時代」という理解だけでOKです。

 

とある村の娘が野武士にさらわれます。

村人は通りすがりの腕の立つ二人の侍に、娘を取り返して欲しいと依頼します。

敵の数も分からぬまま、二人は野武士のアジトに乗りこみます。

野武士たちは大勢いたので、大乱戦になります。

二人は連携しながら、バッサバッサと敵を斬り倒していきます。

 

以上があらすじです。

ほとんどセリフがない戦闘シーンがメインに描かれます。

主人公の二人が圧倒的に強いので、次々に敵を倒していく展開になります。

善悪や倫理観、背景にある人間関係などを一旦置いておけば、純粋にチャンバラ漫画として楽しめます。

 

絵柄はリアルではなく漫画的にデフォルメされているので、そこまでグロテスクではありません。

とはいえ迫力は抜群です。

縦横無尽に動くカメラワークが、読者を飽きさせません。

背景描写も細部までこだわりが感じられます。

 

テーマは特にありません。

どちらに正義があるとか、小難しいことも考える必要はありません。

ただひたすらに剣劇アクションを楽しめばよい漫画です。

終盤の劇的な展開と、最後のオチも笑えます。

 

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<まとめ>

さらわれた娘を奪還するため、二人の侍が大人数の野武士たちと戦います。

凄腕の2人 VS 499人の大乱戦です。

とにかく敵が多いので、主人公の二人は高速で敵を斬り倒していきます。

『るろうに剣心』の飛天御剣流も真っ青な、超神速の殺人剣です。

 

 敵の野武士たちが高速でまとめ斬りされるように、意図的な配置になっています。

これが一番の爆笑ポイントです。

主人公二人の容赦の無さや、敵を倒すために手段を選ばない点(ウンコを敵の顔に投げつける)、 敵の下っ端たちのザコっぷりも笑えます。

 

 著者の榎本俊二さんは、短編をメインに描かれている作家です。

この漫画は、その慣例を破って長編に挑戦した作品です。

なんとネーム112ページを描くのにほぼ1年かかり、そこからペン入れをした完成原稿が出来上がるまで2年近くかかったそうです。(あとがきより)

確かに、1コマ1コマに魂がこもっている感じがします。

 

著者の作風は、シュールなギャグです。

この漫画も、シリアスさを装ったギャグです。

最後のページで笑って、スカッと読み終われます。

 

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【マンガ】『アオアシ』19巻―ハーフ選手の才能と彼らへの差別【サッカー】

『アオアシ』小林有吾 / 小学館

⇧新刊の19巻は、2020/1/30発売

 

<日本のハーフ選手>

 サッカーだけのスポーツに限った話ではありませんが、昨今、日本代表の頼もしい戦力になりつつあるのが、外国人をルーツに持つハーフ選手の存在です。

日本人は世界レベルで見ればどうしても「フィジカル」が弱いですが、ハーフの選手は強靭な肉体を持っていることが多いからです。

 

それは単に「力が強い」「足が速い」「倒れない」というだけではありません。

日本人の肉体では不可能な動きが出来ますし、それゆえに日本人の常識からはあり得ないプレーが生まれます。

ズルいと思われるかもしれませんが、スポーツで完全に平等な条件が成立することはないので、仕方ありません。

肉体的に生まれつき優れていることも、一つの才能なのです。

 

とはいえ、ハーフの選手全員が優れているわけではありません。

そして肉体的に優れているだけで、代表選手になれるわけでもありません。

さらにハーフとして生まれただけで、外国語が話せるわけでもなく、日本しか知らない人も大勢います。

彼らは自分を日本人だと思って生活していますが、周囲の日本人は彼らを差別しがちです。

 

この19巻では、ハーフ選手として差別を受け続けたけれど、チームに恵まれて才能を開花させた男がクローズアップされます。

 

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<あらすじ>

 主人公の青井葦人(アシト)は愛媛出身の高校1年生です。

彼はサッカーが好きで、プロになるために東京に上京してきました。

そして「東京シティ・エスペリオン」のセレクションに合格し、晴れてユース生になりました。

彼は持ち前の「視野の広さ」を活かし、BチームからAチームに昇格し、試合にも出場できるようになりました。

 

高校サッカー・プレミアムリーグで、エスペリオンの次の相手は船橋学院です。

お互い、現在リーグ内上位3位の中でシノギを削っているチームです。

エスペリオンはユースで、船橋学院は高校の部活です。

高校サッカー界で、ユースと部活は昔から反目し合っているので、この試合は宿命の対決と言えます。

 

 船橋学院には、今期プレミアリーグで得点王のトリポネ・ルフィンがいました。

彼は高校3年生で、U-18日本代表にも選ばれている選手です。

トリポネはハーフ選手ですが、日本しか知らない日本人でもあります。

しかし彼を知らない人からすれば、彼は身体の大きな黒人であり、日本人として見られませんでした。

 

トリポネは中学時代までは、凡庸な控え選手でした。

体格的にはすでに恵まれていたものの、力任せのプレーしかしていなかったからです。

彼は小さい頃から差別を受け続けていつも孤独に戦って来たため、「仲間」という概念がよく分かりませんでした。

だからチームプレーも重視しませんし、試合のない時はチームメイトたちと壁を作っていました。

 

ある日、練習試合の相手選手たちに、トリポネの弟が肌の色をバカにされました。

弟は泣き崩れ、トリポネは怒りに震えました。

しかしサッカー特待生である彼は、暴力沙汰を起こせません。

一部始終を見ていたチームメイトは、トリポネの悔しさを晴らすため、その試合で徹底的に彼にパスを渡しました。

監督も、相手チームの責任者の発言に怒りを表明してくれました。

 

それ以降、トリポネはチームメイトや監督のために尽くそうと決心しました。

やがて彼の才能は開花し、チームメイトからも頼りにされる存在となりました。

そんな彼らの泥臭いチームワークは、アシトたちユースチーム(エスペリオン)の華麗でスマートな戦術を脅かしました。

 

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<まとめ>

 あらゆるスポーツで、日本のハーフ選手は、一様に小さい頃から傷つく言葉と戦っています。

それがキツくて夢を諦めた人もいるはずです。

アシトの対戦相手のトリポネも、差別を受け続け周りを信じられなくなっていました。

しかし心許せる仲間と出会えたことで、その才能を開花させることが出来ました。

 

ハーフ選手は体格に恵まれていたとしても、それ以上に生活面の差別で苦労している人も多いのです。

それゆえ強いモチベーションにもなり得ます。

活躍すれば、同じ境遇の人達へのメッセージになるからです。

 

 固い結束力で高いパフォーマンスを発揮する仲間たちを描いた19巻です。

 

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