【小説】『時空旅行者の砂時計』―探偵はタイムトラベラー【このミステリーがすごい2020・21位】
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『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵 / 東京創元社
⇧2019/10/11発売。(ハードカバー)
『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第21位にランクイン。
<登場人物の多いミステリーの対処法>
登場人物の多い小説が苦手な人は多いと思います。
読み進めていくと、誰が何をやっていたかゴチャゴチャになるからです。
ミステリーにおいても、登場人物が多過ぎると困ります。
読者が容疑者の行動や発言を追いきれなくなるからです。
例えば、富豪の一族が所持する館や別荘などで一堂に会して、そこで殺人事件が起きるというミステリーはよくあります。
4世代くらいの親戚一同が集うので、登場人物が多いです。
彼らは名字(姓)がほぼ同じなので、名前でしか読者は区別できません。
とはいえ、名前も似ていたりするので、どちらが兄(姉)でどちらが弟(妹)なのか瞬時に思い出すのは難しいものです。
叔父、叔母、姪、甥などの関係性などは覚えていられません。
こういったミステリーに慣れていないと、読み進めるのが嫌になるかもしれませんが、安心して下さい。
犯人が用いたトリックは、読者が容疑者の人間関係を細かく覚えていなくても、理解できるよう設計されています。
人間関係の細部を突くような真相にすれば、「分かりにくい」という批判が殺到することを作者は心得ているからです。
つまり、あなたが「ややこしそう」と感じる描写は、飛ばし読みしても問題ないのです。
「登場人物が多いミステリー」というだけでは何のウリにもなりませんから、作者は別の仕掛けを用意する必要があります。
この小説では、それはタイムトラベルです。
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<あらすじ>
2018年。
主人公・加茂冬馬は、病院で容体が悪化してゆく妻の伶奈を見守っていました。
やがて伶奈はICU(集中治療室)に移動し、人工呼吸器を着けることに決まりました。
彼女は夫にこう言いました。
「こうなることは分かっていた。ずっとずっと前から」
伶奈の家系—竜泉家には呪いがありました。
1960年に当主の誕生日パーティーがあり、別荘に集まった親類と関係者が次々と殺されました。
生き延びた者たちも、続けて発生した土砂崩れに巻き込まれ、全滅しました。
当主のひ孫・文乃が知人に預けられていたことで、一族の遺産をすべて受け継ぎましたが、その17年後に強盗に殺されました。
文乃の子孫のほとんどは、35歳になる前に死亡しています。
伶奈は今や、竜泉家で唯一の生き残りなのです。
加茂はICUで必要なものを買いに行くため、一旦病院を出ました。
すると彼のスマホに”マイスター・ホラ”と名乗る人物から、電話がかかってきました。
ホラは、予め加茂の車に置いておいた砂時計を使えば、タイムトラベルが出来ると伝えました。
「1960年に起きた事件を解決すれば、竜泉家の呪いで伶奈が死ぬことは避けられる」というホラの口車に乗り、加茂は一縷の望みに賭けて過去にタイムトラベルします。
この小説のタイムトラベル(時空移動)には4つの制約があります。
<1>12時間以上間を空けなければ、能力を再発動できない。
<2>移動の最小単位が一辺3mの立方体なので、その中に入っていた物も転送されてしまう。
<3>目標地点から±5m、時間は±2時間の誤差が出る。
<4>同じ時間に同一人物が二人以上存在することは出来ない。
つまり危険なので、安易にタイムトラベルを使えないということです。
タイムトラベル後、文乃が味方してくれたこともあり、加茂は竜泉家の別荘にゲストとして受け入れてもらえました。
その時はすでに、第一の殺人事件は起きた後でした。
加茂は私立探偵として振る舞い、事情聴取を始めます。
事件解決のタイムリミットは、土砂崩れですべてが飲み込まれるまでの4日間です。
果たして加茂は、犯人を見つけ出して現代に帰還できるのでしょうか。
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<まとめ>
瀕死の妻を救うため、主人公の夫(加茂)は1960年にタイムトラベルします。
そこで妻の一族に伝わる呪いを解消すれば、現代では病気にならなくて済むという理屈です。
タイムトラベルに設けられた制約が、物語を面白くすると同時にトリックにも関係してきます。
登場人物の多さに戸惑うかもしれませんが、家系図がついているので理解を助けてくれます。
人間関係を把握しきれなくても、後半からの急展開は十分楽しめるので、安心して読んでください。
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