紙の本を読みなよ

主に読み終わったマンガ、小説、その他の本についての感想です

【マンガ】『このマンガがすごい!2019』―1位は何かって?考えるまでもないね!

このマンガがすごい!2019』宝島社

f:id:A-key-Hit:20181211202654j:plain2018.12.11発売

 

このミステリーがすごい!』のマンガ版も同日発売しましたね。

2019と書いてありますが、2018年に発売されたマンガが対象です。

オトコ編とオンナ編があります。掲載誌の種類別ですね。

オトコ編1位は『天国大魔境』石黒正数)でした。

f:id:A-key-Hit:20181211203317j:plain←来月に2巻が発売!!

 

まあ当然ですね。議論の余地がありません。

石黒正数信奉者の自分からすれば、何の不思議もない順位だったので少々ガッカリしたくらいです。(期待を裏切って欲しい。)

 

オンナ編1位は『メタモルフォーゼの縁側』(鶴谷香央理)でした。

寡聞にしてタイトルすら知りませんでした。

こういう出会いがあるから楽しいんですよね(^0^)/

 

オトコ編オンナ編合わせて7割くらいは知っていましたが、あえてスルーしてきた作品も多くあり、「そんなに人気ならやっぱりちょっと読んで見ようかな」という気にさせられるのも、この本の醍醐味の一つです。

 

ちなみに「このマンガがすごい!」は、「マンガ大賞」と似ていますが、若干異なります。その年の面白かったマンガ作品を投票によって選ぶという点では同じです。

(投票者は書店員や編集者、評論家などのマンガ好きな人たち)

マンガ大賞」は、選考時点で最大8巻までしか発売されていないものしかエントリーできない、という条件が大きいですね。なので超有名作品がランクインしてきて邪魔しないので、未知の作品に出会える可能性が高くなります。

選考期間も「このマンガがすごい!」とは少しズレています。

 

 僕は少年マンガや青年マンガは大体新刊はチェックできている自信はあるのですが、少女マンガ(特にレディース系雑誌)は目が完全には行き届いていません。

だからこういう特集本の存在は助かります。

 

早速、未読だったマンガをAmazonでまとめて注文しました。

『このミステリーがすごい』の記事でも書きましたが、ハードカバーの小説や文庫本よりもマンガの方が、こういったランキング発表時に店頭に並べるのが間に合っていないことが多いです。

コレとコレはあったけど、肝心のアレが置いてない(出版社に発注しているけど入荷待ち)というパターンに遭遇します。

特にランキング上位(ベスト5)は揃えていても、下位は専用コーナーにすらまとめてくれてなかったりします。(大型書店はスペースに余裕があるのでベスト20位くらいまでまとめてくれています。)

 

僕はひねくれ者なので、まず下位を攻めたいのですが、そうするとAmazonに頼ることになってしまいます。

町の書店を応援したいのですが、今回は許して下さい。

一刻も早く読まねばならぬのです。

 

【マンガ】『数字であそぼ』(1巻)―数学が苦手な我々のために

『数字であそぼ』絹田村子 / 小学館

f:id:A-key-Hit:20181210203945j:plain←2018.12.10発売

 

僕は数学が苦手です。(というか得意な科目なんてありません。)

数学が苦手な人ほど、数学ができる人に憧れを持ってしまうものです。

 

このマンガでは、記憶力だけは抜群に優れている(一度見たものは忘れない)主人公が、その特技を活かして有名大学の理学部に入学するところから始まります。

彼は最初の数学の授業についていけませんでした。

そのことにショックを受け、2年間留年することになります。

復学して再度数学の講義を履修するも、理解ができないのは変わらず。

そこで同じ留年生の友人ができ、彼に数学の基礎から教えてもらえることになります。

数学とは定理や公式を覚えるものではなく、

それらをたとえ知らなくても、考えて理解する学問なのだと。

 

そもそも大学で数学は何を学ぶのか?

数学科の講義を受けたことがない方には未知の世界ですよね。

高校までの数学で十分高度な気がしますし、これ以上何を学ぶのか。

 

大学の数学は、高校まではあやふやだった基本的な定義から学ぶそうです。

実数とは?有理数とは?無理数とは?

√2の数直線上の位置を決定するために「切断」という概念を使って説明していました。

 

そういえば『Q.E.D』の15巻の後半で「デデキントの切断」の話があったことを思い出しました。『数字であそぼ』を読んで、ようやく両方とも分かりました。

Q.E.D』の話をちゃんと理解できていなかったことが分かりました。よかった。

f:id:A-key-Hit:20181210210515j:plain←紙の本は絶版。今は古本屋か電子書籍でしか読めません。

 

円周の長さの求め方は知っているけど、円の面積の公式をまだ習っていないとき、どうやって面積を求めたらいいのか。

この問題に対するトイレットペーパーを使った解説には感動しました。

このマンガの白眉は間違いなくこれでしょう。

「公式を覚えていなくても考えれば分かる」とはこういうことかと体感できます。

 

女性マンガ誌「flowers」連載ですが、いい意味で少女マンガっぽくありません。

「flowers」は個性的な作家さんが多いです。

ドストレートな恋愛モノは絶対描かせないという編集方針でもあるのか、唯一無二の題材やテーマを発掘してきますね。単なる変化球というよりも、独創性を重視している感じです。

「こんな題材で売れるのか?」と心配になるのですが、結局買ってしまうという。

少女マンガに限れば、なんだかんだflowersコミックを一番買っている気がします。

編集部の戦略にまんまとハマってしまっているのでしょうね。

 

【小説・ミステリー】『このミステリーがすごい2019』―2018年で面白かったミステリーランキング

『このミステリーがすごい2019』 / 宝島社

f:id:A-key-Hit:20181209180048j:plain乃木坂46高山一実さん。表紙に人間が採用されたのは初?

 

12/11発売なのに、Amazonで予約したら9日に届きました。あざす<(_ _)>

 

毎年12月初頭に発売される、その年1年間に発表されたミステリーのランキングです。

売上げ冊数ランキングではなく、人気投票です。

全国のミステリー読者たち(評論家、書評家、各大学ミステリー研究会など)が個人的ベスト6を提出し集計されたものが結果となります。

毎年11月上旬くらいから、「そろそろ発売されるぞ!」とソワソワしてきます。

 

2018年のランキングなのに、タイトルが2019年なのはややこしいですね。

タイトルと内容が1年ずれているのです。

おそらくですが、この本は数か月(長ければ半年)店頭に置かれているので、

この本を目にする機会が2019年になってからの方が日数的に多いわけです。

2019年になれば「2018」とタイトルに書かれている本は、何となく古臭いイメージを抱いてしまいます。周囲には季節モノのフェア商品として、「2019年」と書かれた年賀状製作本やビジネス手帳、暦が並んでいるからです。

「もう古い」と瞬間的にでも頭をよぎった本を、消費者は手に取りません。

だから「タイトル詐欺じゃないか」と言われようとも、新鮮味を与えられる方を選択したのだと勝手に思っています。実際の理由は知りません。

 

マンガの月刊誌なんて、月の後半に発売されるものは、2ヶ月先の表記になります。

(例:10月25日発売のものなら「12月号」になる)

つまり日本の雑誌やムックは、実際の日付よりかなり先取りした号数にするというルールみたいなものがあるのです。海外ではどうなのでしょうか。

 

 国内編と海外編の各ベスト20が発表されます。

ランキング結果自体がこの本の白眉でもあるので、記載は控えます。

 

最寄りの書店とAmazon不定期観測だけでは、やはりチェックからすり抜けている作品が多くあるので、見たことのないタイトルがランクインしていると嬉しいですね。

まだこんなにも面白そうな作品が未読なのだとワクワクしてきます。

今回は、国内編がそんな感じだったのでラッキーです。

海外編は1位の予想が当たり、未読のため事前に注文していたので少々ガッカリ。

こういうのは期待を裏切ってほしかったので。(現在上巻を読了)

 

 結果が分かったので、未読のものは直ちにAmazonでまとめて注文しました。

こういう年間ランキングは、発表直後に最寄りの書店では全部は揃っていません。

発表前に問屋から事前に結果を教えてもらえるのですが、発注しても「このミス」発売日に間に合っていない時があるのです。

紙の本や、町の書店には頑張ってほしいし応援しているのですが、まとめ買いしたいときにAmazonの気軽さという誘惑にはどうしても敵いません。すいません。<(_ _)>

 

数日後(注文が届いて)から、怒涛のミステリー週間が始まります。

視力がさらに悪化すること請け合いです。

 

【小説・ミステリー】『ジェリーフィッシュは凍らない』—鮮やかな密室脱出トリック!

ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人 / 東京創元社

f:id:A-key-Hit:20181206181506j:plain←2016年出版

 

 「自然環境が作り出す密室モノ」といえば、絶海の孤島だったり、吹雪の山荘だったり、雨嵐による増水で橋が壊された館(陸の孤島)が定番の舞台設定ですね。

 要は、外界と連絡手段が絶たれてエリア内に人が出入り出来なくなった状況です。

これにより、しばらくの間は警察という邪魔者が介入できなくなり、

誰も逃げられないので連続殺人が実行しやすく、

犯人は逃亡できなくなるため容疑者は絞りやすくなるということです。

ミステリーにはうってつけの設定です。

 

 この小説はジェリーフィッシュという真空気嚢飛行船での殺人事件から始まります。

飛行船は人里離れた山(吹雪で下山不可。無線不通。)に不時着します。

つまり飛行船という「上空の密室」と「吹雪の山荘」のコンボです。

 

冒頭から犯人像にせまるエピソードがいくつも描かれるのに、後半のクライマックスまでその正体が全然つかめないという珍しいパターン。

普通は容疑者が絞られて、読者は「コイツかコイツかコイツだろうな」という推測が出来るもの(そういう書き方をされている)ですが、この小説は一切分かりません。

僕がポンコツだからという理由ではありません。

書き方が上手いからです。この場合は。

 

飛行船には6人が乗り込んでいたわけですが、6人とも他殺体として発見される結果になります。警察は捜査を進めるも、暗礁に乗り上げます。(名探偵は登場しない)

検死を再度行っても、結果は変わらず。

船内で全員殺し合いでもしたのかといえば、毒殺の2体が胸に手を組んで安置されていた事実から見てそうではないようだ。

最後の2人が相打ちで死んだのかといえば、死体の位置がそれぞれ離れているので違うようだ。

 

内部犯なのか、外部犯がいたのか、それすら最後まで分からない展開。

これは非常に珍しい(上手い)構成です。

大抵は、密室モノは様々な条件から外部犯の可能性が否定されて、内部に犯人がいて、「容疑者はここにいる〇人」と絞られるものです。

内部犯という前提に立てば、全員他殺という状況から外部犯しか考えられないという結論になってしまい、

外部犯という前提に立てば、どうやってこの雪山から脱出できたのか(飛行船は雪山で焼失。)分からず、内部犯しか考えられないという結論になってしまいます。

まるでウロボロスの蛇のようにぐるぐると正解の出せない思考で、一歩も前に進んでいない感覚が味わえます。

殺害方法は検死から明らかなのに、脱出方法と犯人像が最後まで一切分からない演出は恐ろしいほど巧みな技術です。

 

ラストの解決編では読者の誰もが「なるほど~!」と唸ることでしょう。

ポルナレフなら「ブラボー!おお!ブラボー!」と叫んでいるところです。

 

 鮮やかすぎて思わず声が出ました。

 

前書きで触れられているように、著者も練りに練った渾身の一作だったようです。

素晴らしい。

今年読んだミステリーで一番感動したトリックでした。

 

【マンガ】『Artiste』(4巻)―いい仕事に傲慢さはいらない

『Artiste』さもえど太郎 / 新潮社

f:id:A-key-Hit:20181207194807j:plain←2018.12.07発売

 

3巻から1年8ヶ月ぶりの新刊です。

コミック刊行ペースがゆっくりになってきているのは何故でしょうか。

 

 ようやく厨房内では仲間意識が全員に芽生え、仕事が上手く回りだしたかに見えたところで、今度は厨房とホール(給仕長)との連携が上手くいきません。

給仕長の偉そうで嫌味な態度に厨房スタッフたちは彼をバカにします。

「どうせホールの奴らなんてロクに料理も作れやしないのに」と。

給仕長は厨房の人達に「お前たちは何も考えずただ料理作ってりゃいい」と言います。

 

一方、主人公・ジルベールの住むアパートの住人・アキオは、趣味で描いてネットで公開していたマンガが日本の編集者の目に止まり、「その作品でプロとして雑誌連載しませんか」という勧誘を受けました。

(※ジルベールの住むアパートは一芸を持っていることが入居条件で、画家、音楽家など様々な芸術家たちが住んでいます。ジルベールは異常嗅覚で合格。)

アキオは大手企業で働いていましたが、編集者に「連載作家は忙しいから兼業は無理だ」と言われて仕事を辞めて、連載準備に専念することにしました。

しかし、当初編集者が提示した「10月開始」という時期から、12月、2月、5月とどんどん後ろにズラされていきます。言ってたことと違うし、それを謝りもしない。

「連載開始時期が延期になることなんてフツーにあることです。

それを2月に開始できる状態にまで持っていけたのは僕が頑張ったからですよ?」

とまで言い放ちます。

目茶苦茶腹が立ちますねこんな奴は。

 

他にも、マンガ業界にありがちな、新人作家の作品を「売れるメソッド」とやらでこねくり回し本来あったはずの良い部分を無くしてしまう、傲慢で視野の狭い編集者の悪癖が遺憾なく発揮されています。

「そんなに変更したら元の作品とは別物になってしまいますよ」とアキオが訴えても、

「我々はプロなので僕の言う事に従っていればいい」と聞く耳をもたない。

「作品のテーマが全然変わってしまっているじゃないですか!」と言っても、

「じゃあこの作品にはどんなテーマが込められているんですか?」と聞く始末。

アキオは愕然とします。

「それを分かっていないのに、俺に声をかけてきたんですか」と。

 

編集者は作家が何に苦しんでいるのか、何が不満なのか、何が不安なのか理解しようとしません。編集者にとってアキオは、何百人と抱えている新人作家の卵の一つに過ぎないのだから、いくらでも使い捨てできるので気にならないのでしょう。

マンガ編集者が全部こんな奴ではないとは思いますが、一部ではこんな奴も実在しているのでしょう。嫌ですね。

 

仕事は一人では出来ません。

パートナーやチームメイトとの信頼関係がないと、仕事そのものが破綻します。

長年の経験とやらが人を傲慢にさせ、傲慢さが誠実さを失わせます。

誠実さのない仕事ぶりは、パートナーやチームメイトに信頼されません。

きちんと謝ること、言葉を尽くして説明すること、不安なら話し合うこと。

簡単そうでいて、いつもちゃんと出来るかは難しいものです。

 

結局、ジルベールたちは給仕長と歩み寄ることができましたが、

アキオは編集者と袂を分かつことになりました。

一冊の中での対比の構図の描き方が上手いですね。

 

【新書】『恐怖の構造』―人は恐怖よりも不安を恐れる

『恐怖の構造』平山夢明 / 幻冬舎

f:id:A-key-Hit:20181206175643j:plain←2018年7月出版

 

平山夢明氏は有名なホラー小説作家です。

『独白するユニバーサル横メルカトル』や『ダイナー』が有名ですが、前者はほとんどミステリーですし、後者はホラーというよりコメディ色が強いです。

 この本を読んで、著者の本格ホラー作品は実は未読だったことに気が付きました。

f:id:A-key-Hit:20181206180033j:plain←2007年「このミス」1位。  f:id:A-key-Hit:20181206180102j:plain

 

この本では、恐怖とは何かについて語られます。

心理学的な面ではなく、ホラー作家としての視点から。

 

人は恐怖よりも不安を恐れるという法則。

「恐怖」は対象がハッキリしているので対策を立てやすく、覚悟を決めやすい。

一方「不安」は対象が曖昧で漠然としていることが多く、対策も立てにくいし、いつまで耐えればいいのかも分からないので精神的に参ってしまう。

だから「恐怖」よりも「不安」の方が厄介なのだと説きます。

 

例えば、胸にしこりを感じて医者の元へ診察してもらいに行くとします。

自分ではガンなんじゃないかと疑っています。

そこで医者に「ガンです。余命〇年です」と宣告されたとしたら、その後はどうやって生きるか、どうガンと向き合っていくかを考えればいいだけです。

ガンは恐怖ですが、戦う対象が明確なので覚悟が決めやすいとも言えます。

覚悟ができれば、恐怖は和らぎます。

 

しかし、医者に「いや、何ともないですね」と言われて信用できず、別の医者に行っても同じことを言われたとしたら・・・?

しこりを感じているのは自分だけが分かる事実で、ひょっとしてガンが発見されにくい位置にあるのか、それともガンとは違う病気なのか、気のせいなのか。

この不安はいつまで経っても終わらず、しまいにはノイローゼになったり神経質になったりして精神的な疲労が蓄積していきます。

不安は戦う対象が不明瞭なので、どういう姿勢で何と向き合えばいいのか分からないので、覚悟のしようがありません。

結果、言いようのない恐怖がずっと付きまとうことになります。

確かにこっちの方が嫌ですよね。

 

そして小説でも映画でも、ホラーというのは恐怖の対象を具体的に恒常的に描くと怖くなくなるそうです。だから不安を煽りに煽って焦らした後に「ワッ!」と読者や視聴者を驚かす手法が一番怖いのだとか。

「エイリアン」「羊たちの沈黙」といった映画を例に解説してくれます。

 

ちなみに僕はホラーというジャンルが苦手です。

この本を読んだ今、ホラー作品を分析的視点で観賞できるはずなので、これまでのようにビビらずに済みそうです。(とにかく怖い思いをしたくない)

 

【マンガ】『アオアシ』(15巻)―過信や保身では未来は拓けない

アオアシ小林有吾 / 小学館

f:id:A-key-Hit:20181204204233j:plain←2018.11.30発売

 

ジャンプコミックと一緒にAmazonで予約したら、発売日に届かずに12/4に届きました。発売日が違う本は一緒に予約注文したらダメということを学びました。

 

この巻ではチームのNo.2といっても過言ではない技術を誇る、桐木というメンバーにフォーカスが当てられます。

彼は今までもずっと国際試合があるたびに、年齢別の日本代表選手のチームに選出されていたのに、今回はそれが見送られる結果となります。

代わりに自分よりも下だと思っていた、同学年の阿久津が選出されることになりました。

 

チームのコーチは「代表に1回受かった落ちたで上も下もない」と言いますが、選手の立場からしたらそういうことが非常に大事だったりします。

気にしないわけがありません。

自分がプロになれるかどうか、もっと大舞台で今後活躍できるかどうかといった不安を、多少なりとも抱えながらいつも練習に励んでいるわけですから。

そういった代表メンバーの常連選手であることが心理的保証や自信になります。

ミスをしたわけでもないのに代表メンバーの選考から落ちるというのは、悲しいというよりも悔しいし、サッカーエリート(ずっとユースに在籍)としてのプライドも崩されるわけですね。

 

監督は、「代表メンバーが欠けたチームをまとめて次の試合に絶対に勝て」という命令を桐木に出します。勝てなければしばらくお前をレギュラーとして使わないとも。

桐木はこの試合を自分のための試合だと考え、出来るだけパスは出さずに自分の個人プレーだけで攻撃を組み立てます。これまでの経歴が過信を生み、プライドが壊される結果となった今、周りを気にしている余裕はありません。

 

代表メンバーが抜けた穴は、1年生のサブメンバーが埋めることになります。

1年生達にとっては、やっと巡ってきた大ビッグチャンス。

逆にここでミスしようものなら、自分にはもうチャンスはやって来ないだろうと考え、無難なプレーに終始します。

 

これではチームプレイが上手くいくはずがありません。

 

安全を求めて無難なプレーでピンチを招く守備陣に対して1年生の冨樫は言います。

「リスクを背負ってでも、爪痕残さないと(俺たちに)次はねえぞ!

俺は逃げねえ!お前らも逃げるな!」と。

 

我々素人は簡単に考えがちですが、

彼らにとっては毎試合毎試合、自分の人生が懸かっていると言ってもいいのです。

だから失敗したくない、なんとかここに留まりたいと考えて、安全策に走ってしまうのは仕方のないことです。

1年後の未来すら非常に不確かな状態で、毎日不安と闘っているのです。

勇気を出せと言ったって、恐ろしい程の重圧がかかっているので簡単にはいきません。

 

しかし、安全策だけで得点はできませんし、勝つことはできません。

リスクを背負って行動した者だけが、勝利を掴むことができるのです。

 

さて、次巻はどうやってチームが一つにまとまるのでしょうか。楽しみです。