【小説】『鹿の王』―致死性の疫病・黒狼熱の謎を解け!【2020年9月映画化】
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『鹿の王』上橋菜穂子 / KADOKAWA
⇧文庫版(全4巻)は、2017/6/17発売。
ハードカバー版は上下巻の2冊に分かれています。
2015年の本屋大賞受賞作です。
ファンタジー小説であり、大人でも楽しめる児童文学でもあります。
続編の『鹿の王 水底の橋』は2019/3/27に出ました。
ハードカバーです。
2020年9月18日からアニメ映画が全国公開されます。
制作はProduction I.Gです。
<存在感のある世界観>
本当に面白い児童文学は、大人が読んでも面白いものです。
作者が子どもをナメて、わざと平易な設定にしたとしたら、それは大人はもちろん、子どもにとっても面白くないものになります。
一見難しそうな概念や現象を、作者なりの表現力で分かりやすく読ませてくれるのが優れた児童文学なのです。
児童文学やファンタジー小説が面白いかどうかの一つの指標として、作品世界における「医学」の扱われ方があります。
病理学的な設定は特に重要です。
つまり、「どのレベルまで科学的な知見を導入するか」という問題です。
あまりリアルにやり過ぎると作品の世界観と合わなくなりますし、何でもアリにし過ぎると病気やケガの深刻さが読者に伝わらなくなります。
例えば超リアルにやりたいなら「最初から〈医療モノ〉を書けよ」という話になりますし、回復魔法があるなら「さっさと治療しろよ」というツッコミが入ります。
また、複雑な設定にすると読者が付いて来れなくなりますが、簡単すぎる設定だと薄っぺらく見えるというジレンマもあります。
この『鹿の王』は児童文学ですが、子どもの知力をバカにせず、人間の免疫系や病気の感染経路についても、独自の言葉で分かりやすく説明してあります。
さらに病理学だけでなく、飛鹿(ピュイカ)という架空の動物の生態についても詳しく設定されており、作品世界の存在感を強固にしています。
要はこの小説は、読者が安心して身を委ねられる、非常に安定感のある作品だということです。
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<あらすじ>
舞台は南北を海で挟まれ、東西を東乎瑠(ツオル)帝国とムコニアという巨大な国に挟まれた架空の地域・アカファ。
東乎瑠帝国はその勢力を拡大するべく、アカファに点在する様々な民族を支配下に置こうとしています。
東乎瑠には圧倒的な兵力があるので、ほとんどの民族は今では恭順を示しています。
この物語には主人公が二人います。
一人は、トガ山地出身のはぐれ者集団《独角》の頭領・ヴァン。
もう一人は、東乎瑠帝国の皇帝から信頼されている、オタワル王国の末裔の天才医師・ホッサル。
彼らが中心となって、アカファ地域で発生した疫病の謎と陰謀に立ち向かいます。
・・・・・・・・
ヴァンは《独角》を率いて東乎瑠帝国と戦いましたが、敗北して捕虜になりました。
彼はアカファ岩塩鉱に連れて来られ、他の地域から集められた奴隷たちと共同生活をしながら、塩を掘る仕事をさせられます。
それは「死体となるまで長くて3ヶ月」と言われるほどの重労働環境でした。
夜は足枷をはめられて脱獄しないよう監視がついています。
ヴァンはそこで死ぬ気はありませんでしたが、特に脱出計画を練っていたわけでもありませんでした。
ある夜、ヴァンの寝ている地下フロアに、山犬(オッサム)が侵入してきました。
労働者たちは皆、鎖でつながれているので逃げられません。
山犬は次々と人を噛んでいきます。
ヴァンも同様に噛まれましたが、反撃し山犬を撤退させることに成功しました。
その後、長くうなされて目を覚ましたヴァンは、同じフロアの労働者たちが全員死んでいることに気付き、驚きました。
山犬に噛まれた者たちが何かの感染症になったことが疑われましたが、ヴァンだけが生き残った理由は不明です。
ヴァンは足枷を破壊し、地上に出てみました。
すると監視員や料理係の女たちも、全員死亡していました。
いつまでもこんな物騒な場所にいられないので、唯一生き残っていた子ども・ユナを連れて、ヴァンは西へ旅立ちました。
数日後、医師ホッサルは部下を連れて、死亡事故があったという岩塩鉱を訪れました。
現場の状況を聞き、遺体を検分した彼は、《黒狼熱(ミッツァル)》である可能性を推理しました。
黒狼熱はかつて彼の祖国が滅ぶ原因となった、6000人以上が亡くなった疫病です。
しかし250年前に流行して以来、発症した者はいなかったので、未だ治療薬はありません。
ホッサルたちの現場検証の結果、労働者を収監していた牢獄から、一人の脱走者(ヴァン)がいることが分かりました。
その脱走者は黒狼熱に感染しても生き延びたことから、黒狼熱の免疫を持っていると思われます。
ホッサルは黒狼熱の治療薬を早急に創りたかったので、追跡の専門家にヴァンの捜索を依頼しました。
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<まとめ>
致死性の疫病・黒狼熱が拡大しようとしている架空の地域・アカファ。
そこで生きる飛鹿使いのヴァンと、天才医師のホッサルは、黒狼熱に関する陰謀に巻き込まれます。
キャラクターは誰もが魅力的だし、ストーリーも文句の付け所がありません。
病理学や動物の生態の設定も見事で、児童文学ですが、大人が読んでも存分に楽しめるよう練り込まれています。
風景描写も非常に丁寧で、作品世界の存在感が抜群です。
誰もが夢中で読めるファンタジー小説です。
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