【小説・冒険】『世界のはての少年』―イギリスで起きた無人島取り残され事件
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『世界のはての少年』ジュラルディン・マコックラン / 訳:杉田七重 / 東京創元社
⇧2019/9/20 発売。
ハードカバーです。
少年たちが無人島に取り残されてサバイバルする、冒険小説です。
<孤島に残された少年たち>
世界には、絶海の孤島に取り残される少年たちの物語が多くあります。
以下に例を挙げてみます。
◆『ロビンソン・クルーソー』
ダニエル・デフォー / 訳:海保眞夫 / 岩波少年文庫
◆『十五少年漂流記』
ジュール・ヴェルヌ / 訳:波多野完治 / 新潮社
◆『蠅の王』
ウイリアム・ゴールディング / 訳:黒原敏行 / 早川書房
(or 訳:平井正穂 / 新潮社)
いずれも無人島に漂着して、脱出手段が見つけられないので、助けが来るまでそこでサバイバルするという話です。
『ロビンソン・クルーソー』は一人だけですが、多くの漂流冒険小説では、複数人の登場人物がいます。
これから紹介する『世界のはての少年』でも、12人の人間が無人島に取り残されます。
無人島にいつ助けが来るか分からないので、精神状態はみんな張りつめ続けています。
そんな中で集団生活をするので、人間関係で必ずトラブルが起きます。
しかも子どもたちだけの集団だと、単純に年齢の高い者や腕力の強い者が場を支配してしまい、簡単に間違った方向に進んでしまいがちです。
まあ大人がいても、マトモな判断ができる人は少ないですが・・・。
多くの者がイライラしたり、不安をこぼしたり、他の者を非難したりする中で、一人だけ正論を言っても聞き入れてもらえません。
たとえ言い方に気をつけても、です。
集団の中には場を仕切ろうとする者が必ず現れます。
彼は全員が自分に従順でなければ気が済まず、自分に反論する者は集団から排斥しようとします。
この小説の主人公もそれに悩まされます。
ちなみにこの本の内容は、実際にイギリスで起きた事件なのだそうです。
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<あらすじ>
舞台は1727年、イギリスのスコットランド、セント・キルダ諸島。
(イギリスの北西にある小さな島 / 地図参照)
セント・キルダ諸島の一部であるヒルタ島で暮らす少年・クイリアムは、子ども9人と大人3人で、無人島「戦士の岩」へ出発しました。
そこで海鳥を大量に捕獲して持ち帰り、肉や油や革製品を都会に売るためです。
これは毎年やっている行事であり、子どもたちにとっては、その仕事に参加することが大人への通過儀礼でもありました。
参加する子どもの親が船を出してくれて、12人は無事に無人島に到着しました。
船はヒルタ島に帰っていきます。
海鳥は何千羽もいるので、一日ではとても捕獲しきれないからです。
クイリアムたちは寝るための拠点と、仕留めた海鳥を保管しておく倉庫を作り、毎日仕事に励みました。
迎えの船がやって来るはずの3週間後、船は姿を現しませんでした。
最初は大人たちはヒルタ島で何かトラブルがあったので、船を出すのが少し遅れているのだろうと考えていました。
ところが、それから2週間が経ち、3週間が経っても船はやって来ません。
一体ヒルタ島で何があったのか、大人たちは不安になりました。
子どもたちにも不安は伝染し、果たして家に帰れるのかと怯え始めます。
ある日、信仰の厚いユアンが「世界はすでに滅んでいる」という説を唱えました。
だから迎えの船はもう来ないし、この島は小さいから、皆を天国に連れて行く天使が自分達を見過ごしてしまったのだと。
子どもたちは怖がりましたが、ユアンを信じたくない気持ちでいっぱいです。
ところが、この説を大人の一人であるケインが支持しました。
ケインはヒルタ島では教会の墓掘りでしたが、無人島に来てから皆に教会の儀式を押し付けるようになっていました。
子どもたちを怖がらせ、自分を「牧師」と呼ぶよう強要し、逆らう者を殴るのです。
彼は密告制度を導入し、子どもたち全員の弱みを握ろうと画策しました。
他の二人の大人はケインをバカにしつつも、出来るだけ関わらないよう行動しているので、子どもたちはケインに従うしか身を守る方法がありません。
やがて従順ではないクイリアムはケインに目を付けられ、皆で暮らしている洞窟から追い出されてしまいました。
果たして、頼りにならない大人と弱気な子どもたちの中で、クイリアムは生き延びることが出来るのでしょうか。
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<まとめ>
大人3人、子ども9人が無人島に取り残されてサバイバルする冒険小説です。
来るはずの迎えの船が一向にやって来ないので、誰もが不安になり、徐々に精神的におかしくなっていきます。
そんな中で、主人公のクイリアムだけが正気を保ち、皆を励まし続けます。
極限状態になれば、大人だって頼りにならないことが学べます。
児童文学(カーネギー賞受賞作)ですが、大人でも楽しめる本です。
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