【小説】『まほり』―謎解き冒険民俗学【このミステリーがすごい2020・19位】
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『まほり』高田大介 / KADOKAWA
⇧2019/10/2発売。
文庫版はまだありません。
『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第19位にランクイン。
<民俗学>
民俗学という学問をご存知でしょうか。
(※字と音が似ていますが、民族学ではありません。)
民間伝承を資料にして、人々の日常生活の歴史的変遷を明らかにしようとする学問のことです。
高校までの日本史で習うのは政治的・軍事的な権力者たちの動きですが、民俗学では一般市民の日常生活を対象にしています。
自分が当たり前のように毎日繰り返している生活の、歴史的な意味や様式に疑問を持つ人はあまりいません。
しかし100年も経てば、人々の生活はガラリと変わります。
例えば、衣食住、家族制度、社会制度、仕事、娯楽、習慣、信仰などです。
つまり価値観が大きく変わるわけです。
昔と現在とを比較することで、文化生活の大きな流れを掴むことが出来ます。
また、現代人が疑問を持たずに無意識のうちに行っている事、あるいは合理的な説明ができないのにやっている事の意味を見つけ出せたりもします。
日本の民俗学は「在野の学」ともいわれ、大学の研究者だけが研究しているのではなく、民俗事象に興味関心のある者なら誰でも参加できます。
だから無名の博学者が多く活動している世界なのです。
この小説にも、頼りになる在野の研究者が多く登場します。
この小説は、民俗学的な手法で、とある山奥の限界集落の秘密を解き明かそうとするミステリーです。
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<あらすじ>
この小説には主人公が二人います。
一人は中学生の長谷川淳。
もう一人は大学生の勝山裕です。
もともと淳は都会で暮らしていましたが、妹の肺炎がひどかったので、家族全員で田舎に引っ越すことにしました。
彼は元いた学校では成績も運動もそこそこ出来ましたが、田舎では年下の遊び仲間にもナメられてしまうほど、山のことを分かっていませんでした。
それゆえ沢を登るときでも、皆の後れを取ってしまいました。
ある日彼は、仲間の子どもたちを見返すため、山女魚を釣って帰ってやろうと一人で山奥に入っていきました。
絶好のポイントを見つけて釣りを始めようかという時、鮮やかな赤い着物を着た少女に出会いました。
少女は淳と同じくらいの年齢です。
その後、少女を追って来た男が合流し、少女を引っぱたいて連れて行ってしまいました。
一方、裕は大学生活で一人浮いていました。
彼は返済不要の奨学金をもらっていたので、全ての授業で「優」を取る必要がありました。
また、社会学の研究者になるという目標がすでにあったため、そのための勉強にも余念がありません。
よって、ヘラヘラと気楽に大学生活を送っている周囲の奴らとは、話が合わなかったのです。
ある日、裕は同じゼミの学生から、グループ研究を手伝ってほしいと頼まれました。
いくつかアドバイスをすると、その後に飲み会に誘われました。
裕は飲み会の席で、ある山の田舎町で二重丸が描かれた紙が至る所に貼り付けられているという話を聞き、興味を持ちました。
その話の舞台が、彼の出身地に近かったからです。
実は裕の亡くなった母親は戸籍に入っておらず、旧姓すら不明でした。
両親が揃っていた頃の生活は何も問題がなかったし、両親から生まれたことに裕は確信を持っています。
それなのに、なぜか裕は戸籍上「庶子」(私生児)という扱いになっていました。
父親に問いただしましたが、何も答えてもらえません。
裕は母親の出身の秘密は、二重丸の紙が貼られていた村と深い関係があるのではないかと考えました。
裕は二重丸の怪談の秘密と自分のルーツを探るべく、地元に戻って問題の山村について調べ始めます。
少女を追う淳と調査を続ける裕が、出会うことは必然でした。
二人は閉鎖的な村の恐ろしい秘密に迫ります。
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<まとめ>
とある山村の恐ろしい秘密を解き明かそうとする怪奇ミステリーです。
民俗学的なアプローチで調査が進められます。
非常に本格的で、 民俗学の凄さと面白さを体験できます。
ストーリーや設定の細密さはもちろん、キャラクター造形も見事です。
京極夏彦さんの『京極堂シリーズ』の主人公・中禅寺秋彦は、本業は古書店主ですが、妖怪や宗教、民俗学にも詳しいキャラクターです。
この小説では、中禅寺のような博識な人物が何人も登場します。
主人公も大学生としては高いレベルの知識を持っています。
彼らの会話は知的で非常に楽しいです。
ミステリーとしても、ホラーとしても一級品の小説です。
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