【小説・ミステリー】『天城一の密室犯罪学教程』—これであなたも密室トリックマスター
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『天城一の密室犯罪学教程』天城一 / 日本評論社
↑2005年版「このミステリーがすごい」第3位。
ミステリーを50冊ほど読めば、密室モノといくつか出会うことでしょう。
そこで
「密室トリックって他にもどんなのがあるんだろう」
という疑問が自然と頭に浮かぶものです。
ミステリーにおける「密室」とは、空気の出入りすら遮断されている部屋を指すのではなく、基本的に人間が侵入不可能なもののことを言います。(その中で殺人事件や不可能犯罪が起こるからこそ謎が生まれるわけです。誰が?どうやって?)
もちろん空気すら通れない密閉具合である方が望ましい(設定としてカッコイイ)のですが、大抵の読者は密閉具合まで気にしません。
密室にも段階があって、
完全な密閉空間(空気も出入り不可)→空気はギリ通れる→糸ならドアや窓の隙間を通せる→ロープくらいなら通せる→片手なら手首までは入る
くらいのユルさまでは許容されるレベルです。(個人的感覚)
江戸川乱歩の『続・幻影城』の「類別トリック集成」というものがあるそうですが、生憎、僕はまだ読んでおりません。
←2004年出版。まだ絶版になってません。
『続・幻影城』を読んでいなくても全く問題ありません。
この『天城一の密室犯罪学教程』では実例の10個の短編(すべて著者の自作)を参考にして、密室の種類と構造について丁寧に解説してくれています。
密室ビギナーはもちろん、ミステリー作家を目指す方にも十分勉強になる内容です。
密室のことについて知りたくなっても、体系的にまとめられた教科書的な本はほとんどありません。(需要がないのでしょうか?)
まあ、まとめる(編集する)方も面倒でしょうし、労力に見合う採算が取れないように思えます。
こういう本が一冊あるだけで、ミステリーがさらに面白く読めるようになるはずなのに・・・。
解説されているのは
「抜け穴密室」「機械密室」「時間差密室」「逆密室」「超純密室」など、『名探偵コナン』や『京極堂シリーズ』を読んでいればすんなり理解できるパターン分けがしてあります。
解説の一つ一つが、歴史的背景や著者自身の戦争体験なんかも織り交ぜてあって、重厚で味わい深いエッセイとしても読めます。
東野圭吾や松岡圭祐といった人気作家たちは、どちらかと言えば文章の味わいよりもストーリーやキャラクターで読ませるスタンスですが、
この著者は文章が非常に上手く、カッコイイ。
ミステリーでこういう文章が読めるのは貴重です。
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