【小説・ミステリー】『熊と踊れ』—スウェーデンで実際にあった銀行強盗
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『熊と踊れ』アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ / 訳:ヘルンハルメ美穂、羽根由 / 早川書房
↑2016年出版。「このミステリーがすごい!」海外篇1位
これは実際にスウェーデンで起きた銀行強盗事件をモデルにした小説です。
3人の兄弟とその友人の4人組で銀行強盗をするのですが、長男の緻密な計画のおかげで何度も成功を収め、最終的に1日に2件の銀行を同時に襲うという大胆なものにまで発展します。(金はいくらあってもいい。今度も失敗するはずがない。)
長男以外の仲間は、ビビり屋だったり、思慮の足りないお調子者だったりで足手まといになりそうな予感しかしません。
しかし銀行強盗は一人では出来ませんし、信頼できる仲間も兄弟以上の人材はいません。(成功した後もそれを言い触らさないのは大事なポイントです。)
仕方なく長男は、暴力で統制をとってチームを率いることになります。
回を重ねるごとに警察の警戒も強化されていきます。
銀行強盗よりも、銀行を襲った後の逃亡手段が大事です。
警察の包囲網をいかにくぐり抜けるか。
果たして、最終的に勝つのは警察か、兄弟か。
銀行強盗という題材は、エンターテイメントとしては派手で面白いですが、
現実に実行するとなるとリスクが大きすぎて、利益に見合わない気がします。
最低3~4人は必要なので、金を分配しなければならず、そこでトラブルも起きやすい。
誰かがヘマをして警察に捕まれば、芋づる式に全員捕まります。
ビジネスモデルとしては、ベンチャー起業よりもリスクが高いし成功率も低い。
セキュリティもどんどん向上していて、短時間では物理的に不可能になりつつあります。
やろうとする方がバカげていると言えます。
そもそも、ヨーロッパではキャッシュレス社会が進んでいて、紙幣がどんどん廃止されていっています。これは世界的な流れなのですが、日本は遅れています。
いずれ、紙幣の銀行強盗なんて神話になってしまうでしょう。
20年後の人々はこう言うはずです。
「え?昔は銀行にお金が紙や金属で保管されてたの?!そりゃ盗まれて当然でしょ。」
まあ20年後の世界に銀行が存在していればの話ですが。
銀行強盗モノとしては、この小説がもしかしたら世界で最後の大ヒット作品になりえるかもしれません。(そういう意味でも貴重な作品。)
銀行からお金を盗むのはハッキングするしかなくなるからですが、ハッキングだけだとエンターテイメントとしてはショボくなります。
一つのジャンルが消えてしまうのは、なんだかさみしいですね。
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