【マンガ】『犯罪交渉人 峰岸英太郎』(全5巻)―説得を開始します!
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『犯罪交渉人 峰岸栄太郎』記伊孝 / 講談社
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紙の本は絶版。僕は古本屋で入手しました。
1巻が2001年出版で、連載中にあの「9.11」が起こりました。
当時はまだ「犯罪交渉人」という職業(役職)が珍しく、聞いたことがないという人も多かったのではないかと推測します。
今ではハリウッド映画をはじめとして、日本のドラマや映画、小説にマンガなどあらゆるエンターテイメントで題材として取り上げられていて、多くの人が知っている状況になりました。
犯罪交渉人とは、ハイジャックや銀行強盗などの立てこもり事件の犯人と対面で交渉を行って、要求を聞いたり自首を促したり人質解放を説得したりして、警察と犯人とのパイプ役を務める人(役職)のことです。
警察官という身分ではありますが、他の警官と役割が違います。
死傷者をゼロに抑えることが仕事です。
だから犯人が重装備で武装していても、交渉人は警戒されないように極力武器を所持しないで犯人と対峙します。
このマンガの主人公・峰岸英太郎も拳銃さえ持たずに犯人に向かっていきます。
もっとも死のリスクが高い立場と言えます。
1巻ではハイジャック事件。
2巻では飛び降り自殺の女子高生の説得と、銀行強盗事件。
3巻では誘拐事件。
4.5巻でカルト教団の立てこもり事件が扱われます。
2巻までは犯罪交渉人という仕事の説明も兼ねた助走の段階(十分面白いです)で、
4.5巻の事件で物語は最大の盛り上がりを見せます。
著者が全身全霊、渾身の力を込めて描き切ったことが伝わってきます。
著者の魂を刻み付けるかのような迫力があります。
この作品は著者のデビュー作で、若さゆえか全編を通して絵柄がまだ安定していないことが欠点として批判されがちです。
しかし、マンガというのは絵柄・画力(絵の上手さ)は大切な要素ですが、最重要なことではありません。
『LIAR GAME ライアーゲーム』の著者・甲斐谷忍氏は何かのインタビューで、
「マンガで重要なのは絵よりもストーリー」とおっしゃってました。
僕もそうだと思います。
絵の上手さが最も重要ならば、『進撃の巨人』はあんなに大ヒットしないでしょう。
作品のテーマや本質はストーリーに込められていて、絵はそれを補強するための説得手段に過ぎないのです。(上手い絵はもちろん力強い説得力を持ちます。)
著者の描きたい気持ちが紙面からあふれてくる作品は、それだけで良いものだと分かります。
勢いがあるので画面に迫力がありますし、絵が少々上手くなくてもそれを補う情熱があれば、読者にそれは伝わるものです。(キレイ事ではなく本当のことです。)
主人公の英太郎はそれなりに歳をとっているのに童顔で、声がいいという、交渉人としての才能に恵まれています。(強面や老け顔の警官はそれだけで犯人に警戒されやすいし、声が通らないと緊迫した説得に不向きです。)
もちろん才能だけで交渉人をやっているわけではありません。
3巻の後半ではNY市警に、警視庁初の交渉人研修生として留学しています。
全編にわたって、交渉をする上での原則、心得、手法、セオリーが解説されていて、英太郎はそれに則って行動しています。
しかし現場がいつもセオリー通りに行くとは限りません。
そんなときでも英太郎は先陣を切って交渉に当たろうとします。
彼の最大の武器は才能や技術ではなく、勇気と決断力なのです。
ここまで無防備な人間と対峙したとき、犯人は彼を無闇に攻撃できなくなるのです。
気迫と狂気が犯人を上回っているからです。
場の空気を制するには、そこにいる誰よりも覚悟を見せつければよいことを教えてくれます。
スポーツ、仕事、議論などどんな場面でも当てはまる高等技術ですね。
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