【マンガ】『名探偵コナン』(17巻)―珠玉の一話(第6話)
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『名探偵コナン』青山剛昌 / 小学館
⇧1997年出版。もう20年以上前なんですね。
<息抜きの回の意義>
多くの長期連載マンガには、「息抜きの回」というものが存在します。
作者がサボっているわけではありません。
ずっと本編で緊迫感をもったままだと読者が疲れてしまうために、あえて一旦休憩させるかのようなエピソードを挟むことで、ストーリーに緩急をつけるテクニックです。
『バクマン』でも言及されていましたね。
例えば、バトルマンガだけど、「息抜きの回」で主人公たちの日常の生活風景を描くことで、キャラクターに設定の深みが出ます。(学校生活のエピソードなど)
キャラクターの違った一面を見せることで、より親しみを持ってもらうための回でもあります。
ちなみに、モブキャラ(脇役)に過ぎない人物に、1話だけスポットを当ててみるという手法もあります。それで意外と人気に火がついてしまうこともあります。
サイドストーリーのはずが人気が出たので、別のマンガとして出発することになった作品は枚挙に暇がないですが、『サイコメトラー エイジ』は非常に分かりやすい例ですね。
<「名探偵コナン」の場合>
『名探偵コナン』は大抵、3~4話くらいを使って一つの事件が描かれます。
「起」「承」「転」「結」に分かれていると言えます。
しかし、17巻の第6話目に、1話完結の「息抜きの回」的なエピソードが挟まっています。コナンに限らず、探偵モノ(推理モノ)での1話完結は珍しいです。
「息抜き」と僕が勝手に呼んでいるだけで、作者は息抜きのつもりで描いていません。
1話完結だからこそ、著者のストーリーをまとめる技量が如実に分かります。
この第6話がメチャクチャ完成度が高くて、非常に好きなんです。
「コナンの好きな回はどれ?」という質問があれば、1位は
11巻の霧天狗の話か、この17巻の第6話目になります。
<あらすじ>
毛利小五郎(コナンの居候先の養育責任者)が足を骨折して入院しているので、
コナンたち少年探偵団(歩美、元太、光彦のみ。灰原はまだいない。)はお見舞いに病院にやってきました。
小五郎と同室の患者には、老人と火傷を負った男がいました。
老人の息子(中年男性)もお見舞いにやって来ていました。
ここまでは何気ない日常の1コマですが、和やかな雰囲気の小五郎の周りでは、恐ろしい事態が進行していました。
中年男性は娘を人質に取られて、火傷の男を銃で殺すように脅されていたのです。
銀行強盗の聞き込み調査のために病院を訪れた警察の一団に、犯人に気付かれないようにトイレで相談しようとしたところ、警察官に変装した犯人の仲間に阻まれます。
指定されたタイムリミットが迫り、誰かに救援を求められない状況の中、中年男性は
「火傷の男はどうやら犯罪者のようだし、殺したって別に・・・」と自分に言い聞かせようとします。
娘の命か、見知らぬ犯罪者の命か、どちらかを選ばねばならないなら前者を取るのは仕方のないことです。
そこへ、すべてを見抜いていたコナンが登場して、犯人グループを撃退し、人質救出にも成功します。
<珠玉の一話>
普通、人質誘拐事件ならばもっと話数をかけて描かれるものです。
緊迫感を徐々に盛り上げていって、犯人グループとの一進一退を描くなら1冊まるまる使ってもいいほどです。
なのに1話にまとめてしまっている贅沢さ。
週刊少年マンガ雑誌の1話分は、大体20ページくらいです。
たった20ページにこの事件を詰め込むとなると、ページ数が少ないので、1コマですら無駄にできません。
かと言って、詰め込みすぎると読みにくいですし、バランスが大事です。
つまり1話完結というのはメチャクチャ難しいのです。
この第6話は無駄なコマなど一切なく、完璧な構成で仕上がっています。
正直、恐ろしいほどです。
読み返してみても、なぜ20ページでまとまるのか謎です。
最終ページ。
あまりにも鮮やかな解決に、おどろく中年男性。
「君は一体・・・?」
いつものようにコナンは答えます。
「江戸川コナン。探偵さ」
そして少年探偵団のもとへサッカーボールを持って走っていき、
日常に戻っていきます。(最後の表情がまたいいですね。)
カッコよすぎるコナン。
完璧な構成。完璧な1話です。
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