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【小説・ミステリー】『ジェリーフィッシュは凍らない』—鮮やかな密室脱出トリック!

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『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人 / 東京創元社

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⇧2016年出版。

 文庫化はまだされていません。あと半年くらい先だと思います。

 

<密室モノ>

 「自然環境が作り出す密室モノ」といえば、絶海の孤島だったり、吹雪の山荘だったり、大雨や嵐による増水で橋が壊された館(陸の孤島)が定番の舞台設定ですね。

 要は、外界と連絡手段が絶たれてエリア内に人が出入り出来なくなった状況です。

これにより、しばらくの間は警察という邪魔者が介入できなくなり、

誰も逃げられないので連続殺人が実行しやすく、

犯人は逃亡できなくなるため容疑者は絞りやすくなるということです。

ミステリーにはうってつけの設定です。

 

 この小説はジェリーフィッシュという真空気嚢飛行船での殺人事件から始まります。

飛行船は人里離れた山(吹雪で下山不可。無線不通。)に不時着します。

6人の乗組員が逃げ場がない状況で次々に殺されていきます。

つまり飛行船という「上空の密室」と「吹雪の山荘」のコンボです。

 

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<内部犯か外部犯か>

冒頭から犯人像にせまるエピソードがいくつも描かれるのに、後半のクライマックスまでその正体が全然つかめないという珍しいパターン。

普通は容疑者が絞られて、読者は「コイツかコイツかコイツだろうな」という推測が出来るもの(そういう書き方をされている)ですが、この小説は一切分かりません

僕がポンコツだからという理由ではありません。

この場合は、書き方が上手いからです。

 

飛行船には6人が乗り込んでいたわけですが、6人とも他殺体として発見される結果になります。警察は捜査を進めるも、犯人像がつかめず暗礁に乗り上げます。

(名探偵は登場しません)

検死を再度行っても、結果は変わらず。

船内で全員殺し合いでもしたのかといえば、毒殺の2体が胸に手を組んで安置されていた事実から見てそうではないようだ。

最後の2人が相打ちで死んだのかといえば、死体の位置がそれぞれ離れているので違うようだ。

 

内部犯なのか、外部犯がいたのか、それすら最後まで分からない展開。

これは非常に珍しい(上手い)構成です。

大抵は、密室モノは様々な条件から外部犯の可能性が否定されて、内部に犯人がいて、「容疑者はここにいる〇人」と絞られるものです。

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この小説では

内部犯という前提に立てば、全員他殺という状況から外部犯しか考えられないという結論になってしまい、

外部犯という前提に立てば、どうやってこの雪山から脱出できたのか(飛行船は雪山で焼失。)分からず、内部犯しか考えられないという結論になってしまいます。

まるでウロボロスの蛇のようにぐるぐると正解の出せない思考で、一歩も前に進んでいない感覚が味わえます。

殺害方法は検死から明らかなのに、脱出方法と犯人像が最後まで一切分からない演出は恐ろしいほど巧みな技術です。

 

ラストの解決編では読者の誰もが「なるほど~!」と唸ることでしょう。

ポルナレフなら「ブラボー!おお!ブラボー!」と叫んでいるところです。

 

 鮮やかすぎて思わず声が出ました。

 
この作品は著者のデビュー作です。

前書きで触れられているように、著者も練りに練った渾身の一作だったようです。

素晴らしい。

今年読んだミステリーで一番感動したトリックでした。

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