【小説】『小説の神様』―小説が売れる主人公とは【2020年5月映画化】
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『小説の神様』相沢沙呼 / 講談社
⇧2016/6/21発売
文庫です。
続編の『小説の神様 あなたを読む物語』(上下巻)も出ています。
著者は『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第1位を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の相沢沙呼さんです。
2020年5月22日から映画公開されます。
監督は久保茂昭さん。
主演は佐藤大樹さんと橋本環奈さんです。
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【小説】『小説の神様』―小説が売れる主人公とは【2020年5月映画化】
<売れる主人公とは>
物語の主人公には大きく分けて二種類あります。
「読者から憧れられる系」と「読者が応援したくなる系」です。
前者は強さ、賢さ、上手さ、行動力などの特定のパラメータが物語の最初から突出していて、周りを引っ張ったり魅了していくタイプです。
後者は最初は弱かったり、バカだったり、下手だったりして、周りから笑われたり期待されていなかったりするけれど、素直でひたむきな努力家でもあるタイプです。
前者のタイプには、欠点や苦手分野もあわせ持っていることが多いです。
それを仲間から助けてもらったり慕われたりしながら、チームが出来上がっていく流れが王道パターンです。(例:『ONE PIECE』)
後者のタイプには、実は隠された特技や長所があって、今までそれを活かしきれていなかっただけだったということが多いです。
サポートしてくれる仲間に出会うことで、徐々に才能を開花させていく流れが王道パターンです。(例:『NARUTO』)
本が売れる主人公とはどちらでしょうか。
傾向として、最初からスゴいキャラは底抜けに明るく、才能がまだ眠っているキャラはやや暗い性格が多いです。
辛い現実から離れたくて物語を読んでいる人なら前者の主人公を選ぶでしょうし、
辛い現実を味わっているのは自分だけじゃないと思いたいなら、後者の主人公を選ぶでしょう。
また、必死に努力しているのに見下されバカにされている主人公がいれば、我々は応援せずにはいられません。
この小説では、どちらのタイプの主人公が売れるのかが議論されています。
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<あらすじ>
主人公は高校2年の千谷一也(ちたに いちや)。
彼は学校の文芸部に所属していますが、すでに中学生でプロデビューした小説家でもあります。
デビュー以降も何冊か本を出版していますが、全く売れていません。
ネットで自分の作品を検索しても低評価ばかりなので、彼はもう小説を書くことが嫌になっていました。
一也は最初は、自分の文章力に自信を持っていました。
デビュー作が選考委員に褒められたからです。
しかし彼の小説は売れることはなく、稚拙で中身も特徴もない文章を書く後輩作家が売れっ子になっていく姿を見て、自分の価値観は世間と大きくズレているのだと気付きました。
それ以降、売れる小説を書ける作家は偉くて、売れない小説しか書けない自分には価値がないと考えるようになりました。
ある日、一也のクラスに転校生がやって来ました。
彼女の名前は小余綾詩凪(こゆるぎ しいな)。
詩凪もまたプロデビューした小説家でした。
そして一也とは違って、出版する作品は全てヒットしている人気作家です。
しかも担当編集者は一也と同じ河埜(こうの)でした。
一也がなかなか執筆のやる気を出さないので、河埜は一計を案じました。
それは詩凪との合作です。
一也は文章が上手いけれど、プロット作りにいつも苦しんでいました。
詩凪はプロット作りは上手いけれど、文章はまあまあです。
二人が長所を合わせれば、良い作品が生まれるのではないかというわけです。
一也と詩凪は河埜が熱心に頼むので、その企画を引き受けることにしました。
ところが二人の小説に対する価値観が対立し、制作は難航します。
一也は「小説で人を救うことはできないし、小説は何の役にも立たない」と言い張り、
詩凪は「小説には人生を左右する大きな力が宿っている。私には小説の神様が見えるから」と主張します。
一也は「売れる主人公は明るくなければダメだ」と考えていますが、詩凪が設定する主人公にはやや影がありました。
果たして、二人の合作は上手くいくのでしょうか。
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<まとめ>
すでにプロデビューを果たした二人の高校生が、小説の合作をする青春小説です。
ただし一方は売れない作家で、もう一方は人気作家です。
デビューしてからの境遇が全く違うので、二人の価値観は対立します。
小説に救われた人は現実にいるのかもしれませんが、
救われようと思って小説を読む人はいません。
また、誰かを救おうと思って小説を書いている人もいないでしょう。
いたとしたら、それはカッコつけているだけです。
期待せずに読むから、思いがけず救われることがあるし、
意図せずに書くから、誰かを救うことがあるのだと思います。
つまり「救い」を一番に考え出すと嘘臭くなるのです。
書き手と読み手の姿勢を考えさせられる小説でした。
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