【マンガ】『響 小説家になる方法』12巻―50年ぶりの文芸誌創刊
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『響 小説家になる方法』柳本光晴 / 小学館
⇧2019年6月28日発売。
<純文学と大衆小説>
「文芸誌」というものをご存知でしょうか。
詩やエッセイや書評や評論もありますが、主に小説が主体の雑誌のことです。
漫画専門誌があるように、小説専門誌も存在するのです。
文芸誌は大きく2種類に分けられます。
「純文学」と「大衆小説」です。
これらは明確に区分できるものではなく、どちらにも当てはまりそうな作品も多数存在します。
一言で説明するのはかなり難しいのですが、この『響』に登場する鬼島という人物が簡潔な表現をしていたので紹介します。(5巻参照)
手の届く範囲の「出来事」を扱うのが純文学。
手の及ばない「事件」を扱うのが大衆小説。
もっと大雑把にいえば、
芸術性の高いものが純文学。
娯楽に寄っているのが大衆小説です。
ちなみに芥川賞は新人作家による純文学小説、直木賞は中堅作家による大衆小説が選考対象になっています。
文芸誌は純文学系よりも大衆小説系の方が圧倒的に数が多いです。
純文学は難しそう、意味が分かりにくそう、堅苦しそうというイメージがあるから敬遠されてしまうのでしょう。
大衆小説雑誌の例としては、
「オール讀物」(文藝春秋)、「小説現代」(講談社)、「小説新潮」(新潮社)、「小説すばる」(集英社)、「小説宝石」(光文社)などがあり、
ミステリーなら『メフィスト』(講談社)、『ミステリーズ!』(東京創元社)など、
SFならば『SFマガジン』(早川書房)などがあります。
一方、純文学系の雑誌は
「新潮」(新潮社)、「文學界」(文藝春秋)、「群像」(講談社)、「すばる」(集英社)、「文藝」(河出書房新社)などがあります。
芥川賞は大抵、この5誌に掲載されたものの中から選ばれます。
出版業界では新しい雑誌が毎年のように創刊されていますが、
純文学系の雑誌はこの50年創刊されたことがありません。
現在休刊にならずに存続している文芸誌ですら赤字続きであり、雑誌を創刊しても利益を見込めないからです。(本の売上げで利益を回収しています)
このマンガではそんな純文学系雑誌が創刊されようとしていました。
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<あらすじ>
デビュー作『お伽の庭』が、芥川・直木賞同時受賞により世間で話題になり、
全国高校文芸コンクールで文部科学大臣賞を受賞した主人公・響。
彼女は高校3年生になり、進路について考えるようになりました。
彼女は小説は好きだけれど、作家になるというビジョンにはまだ現実感がなく、
かといってどこかの大学に特別行きたいという願望もありません。
最終的な結論としては、
「外国の小説も気になるから海外に行く。
今は仕事に興味はない。これからは留学のための勉強に集中する。」
というものになりました。
そのために英語の勉強に集中する響でしたが、彼女の周りの人達は目まぐるしく動いていました。
『お伽の庭』の大ヒットが世間に文芸ブームをもたらし、そのため彼女がデビューした小論社から純文学の新雑誌が創刊されることになったのです。
編集長に抜擢されたのは、響の編集担当の花井ふみ。
花井は記者会見のときも響を守ることを最優先に考えた良心的な編集者です。
「新雑誌の創刊の条件は、響の新連載を載せること」だと会社の上層部から強く要請がありましたが、花井は受験生の響に負担をかけたくないと悩みます。
花井は新雑誌のことを響に話しました。
もともと高3の1年間は小説を書くつもりはなく、受験に専念するつもりだった響でしたが、純文学の新雑誌は楽しそうだから参加したいと申し出ます。
そこから響は創作モードに入り、周りの雑音に反応しないほど集中していきます。
その裏では、響の知らぬ間にきちんと断ったはずの『お伽の庭』の漫画化の話がスタートしていました。
響の許可を得ていないので、担当編集の花井にも内密で話が進められていき、もう阻止できないほど規模が大きくなっていきます。
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<小説家の収入源>
新雑誌の連載陣は、活躍の場が少ない若くて実力のある作家を中心に選ばれました。
花井は編集長として、連載してほしい作家たちに依頼して回ります。
原稿料も出せるからと。
小説家の主な収入源は、本の印税と雑誌連載の原稿料です。
しかし小説は、漫画と違って雑誌連載せずに、いきなり本として出版される「書き下ろし」というパターンがあります。
その場合、原稿料はもらえません。
「本が出版できたんだからいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、要はその一冊が出版されるまで収入がゼロだということです。
だから印税が振り込まれるまで、現在の貯蓄だけで暮らさなくてはいけません。
それでは生活できないので、新人作家はバイトをしたり、何かの仕事と兼業している人がほとんどです。
つまり新雑誌を創刊するということは、作家に定期収入をもたらし、小説だけに専念させてあげられるということです。
もちろんファンたちも喜びますから、業界自体も盛り上がります。
逆にいえば、50年も新雑誌が創刊されない業界は相当テンションが下がっているということです。
我々の生きている現実世界で、果たして純文学系文芸誌が新しく創刊される日は来るのでしょうか?
この漫画は、純文学の再興を願う物語でもあります。
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