【小説・文学】『むらさきのスカートの女』―狂気とコメディは紙一重【芥川賞受賞作】
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『むらさきスカートの女』今村夏子 / 朝日新聞出版
⇧2019年6月7日発売。
第161回芥川賞受賞作です。
文庫版はまだありません。
<前情報>
著者は『あひる』で注目が一気に集まり、第155回芥川賞候補になります。
その後『星の子』でも芥川賞候補に入り、今回三度目のノミネートでついに受賞されました。
◆『あひる』/ KADOKAWA
⇧2019年1月に文庫版が発売。
◆『星の子』 / 朝日新聞出版
⇧2017年発売。文庫版はまだありません。
直木賞は娯楽要素の多い大衆小説から選出されますが、
芥川賞は芸術性を重視した純文学から選出されます。
そのため、芥川賞を受賞した作品の多くは文体も攻めているものが多く、テーマも凝っていて分かりにくく、大衆小説のようにスラスラ読めないことがあります。
それが普段本を読まない人をさらに遠ざける要因になっています。
しかしこの『むらさきのスカートの女』は違います。
文体は凝っていないですし、使われる言葉も平易なものが選ばれていて非常に読みやすいです。
ストーリーもシンプルで分かりやすいです。
普段、本を読まない方でもすんなり読めるはずです。
芥川賞なのに読みやすいというのは、かなり珍しい事例です。
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<あらすじ>
話の語り手である<わたし>の名前は権藤。
彼女は近くに住んでいる「むらさきのスカートの女」を毎日付け回しています。
なぜそんなアダ名を付けているかといえば、当然むらさきのスカートばかりをはいているからです。
むらさきのスカートの女の名前は日野まゆ子といいます。
権藤は日野が気になって仕方なく、ひたすら日野の行動を観察し続けます。
日野には決まったルーティンがあり、パン屋でクリームパンを買って、公園のベンチでそれを食べるというものです。
権藤は日野の行動が誰にも邪魔されないように、日野の先回りをして、いつも日野が座っているベンチに人が座っていたらどいてもらうよう働きかけたりします。
日野には、時期によって働いていたり働いていなかったりします。
今は無職で、仕事を探して面接を繰り返していますが、結果はどれも不採用でした。
日野はひどく痩せていて声も小さく、見た目も清潔感がなかったからです。
権藤は日野が権藤のいる職場に来るように裏で動き始めます。
日野を助けることができるし、同じ職場なら観察活動が容易になるからです。
権藤の仕事はホテルの清掃員であり、いつも職場は人手不足だったので、面接にさえ来たら誰でも採用間違いなしです。
権藤は求人誌を日野がいつも座るベンチに置いたり、日野のパサパサの髪をなんとかしてあげるために良い匂いのするシャンプーの試供品を日野の家の玄関に届けたりします。
その結果、日野は権藤の目論見通り、権藤のいる職場に採用されました。
最初は意外にも皆から気に入られていた日野ですが、徐々に疎外されていきます。
そしてついに日野とまともに話が出来る事件が起こりますが、そこから日常は崩壊していきます。
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<まとめ>
この小説はタイトルのとおり、むらさきのスカートの女についての話でもあり、彼女にずっと付きまとって監視し続ける女の話でもあります。
最初は日野の方が普通じゃない感じのキャラクターとして描かれますが、しばらくすれば常に監視している権藤の方が実は相当ヤバい奴だと分かります。
仕事があるくせにそういうことをしているということは、遅刻や無断欠勤を平気で連発しているということだからです。
さらに権藤は住んでいるアパートも家賃滞納で追い出されています。
住む家を失って金欠状態なのに、監視活動を止めないのです。
狂っているというのは簡単ですが、現実世界でもこういう人はいそうです。
もともとは権藤は日野と友達になりたくてそのタイミングをはかっていただけなのに、いつの間にか取り返しのつかない事態にまでなってしまいます。
ストーカー気質の女の狂気としても読めますし、友達になりたいけれど超引っ込み思案なために中々声をかけられず、チャンスをうかがい続ける女のコメディとしても読めます。
哀しくて切なくなりつつも、笑ってしまう物語です。
傍から見たら、狂気とコメディは紙一重なんですね。
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