【マンガ】『まくむすび』1巻―高校演劇の脚本をつくる
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『まくむすび』保谷伸 / 集英社
⇧2019年7月19日発売。
<漫画を描く才能>
漫画を描くには、小説と同じように物語を作る必要がありますが、それに加えて絵も描かなくてはいけません。
単にキャラクターの顔が描けるだけではダメです。
人間の全身を描けないと話になりませんし、小道具や乗り物や背景も必要です。
どういう角度からその場面を見せるのか、あるいは被写体とカメラの距離感(アップなのかロングなのか)を決めるカメラワークも1コマずつ考えないといけません。
コマ割りが単調にならないように、ページ毎のコマの形や配置、レイアウトも考えないといけません。
アニメや映画ならばそれぞれの仕事を担当する人達(部署)に分かれていますが、漫画はアシスタントがいるとはいえ、ほとんど作者一人でそれをやるのです。
すべてをこなすのは至難の業です。
つまり「漫画が描ける」というのは、色んな才能が合わさった作業なのです。
もちろん、脚本だけしか作れない人がダメなわけではありません。
漫画でも原作と作画担当が分かれているパターンもあります。
自分の得意分野を活かせばそれでいいのです。
この漫画の主人公も漫画を描いていましたが、途中で挫折してしまいました。
量だけはこなしましたが、誰にも理解されることがありませんでした。
その不毛さに気付き、漫画を描くことをやめたのです。
長年無意味なことを続けていたと思いそうになる主人公でしたが、ついにその努力が役に立つときが来ました。
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<あらすじ>
主人公は高校一年の土暮咲良(つちくれ さくら) 。
高校に入学したばかりで、どこの部活に入ろうか悩んでいました。
幼馴染の友達からは「漫画描くの好きだったから、漫研に入れば?」と勧められますが、咲良は漫画を描くことをやめようと決めていました。
小さい頃からずっと漫画を描いてきたけれど、誰にも内容を分かってもらえなかったからです。
入学式から帰宅後、咲良は漫画と決別するために、自分の部屋にある漫画を描いた100冊以上のノートを処分しようとします。
ところが読み返しているうちに時間が過ぎ、処分できませんでした。
翌日、学校でカバンを開けた咲良は、処分するはずの漫画ノートがなぜか一冊入っていることに気付きます。(※飼っている犬が入れた)
一刻も早く処分したい咲良は、職員室にシュレッダーを借りに行きます。
しかし自分で処分することはできず、教師にノートを渡すことになってしまいました。
数日後、咲良は新入生歓迎会での各部活紹介に参加します。
まだどの部活に入るか決めきれない彼女は、友達と一緒に吹奏楽部に入ろうかという気持ちになっていました。
そんなとき、演劇部の番が回ってきます。
なんとそこで演じられた内容は、咲良が描いた漫画と同じでした。
教師に渡したはずのノートが演劇部の部室に置き忘れられ、部員がそれを見て脚本のネタに使ったからです。
咲良は驚き、勝手に改変されたことに怒り、演劇部員たちに文句を言いに行きます。
ところが演劇部2年の佐藤萌佳にこう言われます。
「キミの漫画は読めたもんじゃない。
状況が分からないし、絵はド下手だし最低だ。
だが素晴らしい戯曲だった。
私が君の作品を完成させてあげる。
来てみないか。【高校演劇】の世界に!」
それから咲良は演劇部に入り、演劇のイロハを勉強すると同時に、脚本を漫画で描くことに夢中になっていきます。
誰にも届かなかった彼女の描く物語が、ようやく日の目を見る機会に巡り合ったのです。
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<まとめ>
高校の演劇部をガチで題材にした漫画は非常に珍しいです。
(ギャグ漫画ならいくつかありますが。)
ただ何となく演劇をやるのではなく、文化部のインターハイと呼ばれる総合文化祭の一種目・全国高等学校演劇大会での優勝を目指しています。
けっこう本格的です。
発声のための筋トレや脚本の分類や創作の過程など、細かい部分まで描かれています。
個々のキャラクターが立っていて、皆イキイキしています。
絵も可愛らしく、物語のテンポもよく、ベテランの余裕さえ感じさせます。
背景も上手く、コマ割りも多彩で、カメラワークは完璧すぎて鳥肌が立つほどです。
漫画を描く才能がないと諦めて挫折した咲良が、演劇の脚本家としての才能を開花させていく様はワクワクします。
何かを一生懸命やった経験は無駄になることはないということですね。
これは別にキレイ事ではありません。
何かに真剣に打ち込んで得たものは、別の分野でも本質的なことが似ていたり、発想を転用することができるからです。
創作活動を頑張っているすべての人達の励みになる漫画です。
2巻はなんと来月(8月19日)発売予定。
二ヶ月連続刊行です。
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