【マンガ】『さよならミニスカート』(1巻)―単なるジェンダー論で終わらない一級のミステリーサスペンス!
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『さよならミニスカート』牧野あおい / 集英社
⇧2018年11月発売。
<最強の少女マンガの誕生>
おそるべき面白さです。
少女マンガ雑誌「りぼん」で連載しているのですが、テーマ性を考えるとそれもすごいことです。小学生が読んで理解できるのかが多少疑問ですが、小学生の女子は男子よりも圧倒的に精神年齢が高いので大丈夫なのでしょう。
「りぼん」、「ちゃお」、「なかよし」が毎月3日の発売日でそろっているので、
各出版社も対象読者年齢をそろえてきているはずなのですが、
「りぼん」は他社よりも対象年齢を若干高めに設定しているようですね。
ちなみにその3誌の後に控えているのが、毎月2回発売の
「マーガレット」「sho-comi 」「花とゆめ」です。
メインターゲット層は女子中高生。
月刊誌なら「別冊マーガレット」「別冊フレンド」「ベツコミ」。
もうちょい上には「cookie」、「LaLa」、「デザート」などがあります。
『さよならミニスカート』はこれらの内いずれに掲載されていても,全く不自然ではありません。大人が読んでも面白い内容です。
<あらすじ>
主人公・神山仁那は中学時代に5人組アイドルのセンターとして有名でした。
ある日ファンイベントの握手会にて、刃物を持った変質者に腕を切り付けられ怪我を負います。ショックと恐怖からアイドル活動を辞め、普通の高校に通うことにしました。
男性が怖いというトラウマが植え付けられたのもさることながら、
「握手で釣ってCD何枚も買わせてたんだろ?」
「女を使って男釣って儲けてるんだから、恨みを買われて当然だろ」
「嫌なら最初からアイドルなんてやるなっつーの!」
という批判にさらされて、自身の女性性を嫌悪するようにもなります。
そのため、周りの同級生の女子は全員スカートの制服を着ているけれど、一人だけ男子と同じスラックスの制服を着用して高校に通うスタイルを貫きます。
「自分は女なんかじゃない」
「男に媚び売るようなバカ女じゃない」と自分に言い聞かせます。
強がってトガって生きているため周囲からは異端児扱いされて孤立しています。
それでも街中を一人で歩くのは怖い。(犯人はまだ捕まっていない。)
柔道部のイケメン・堀内光は、妹が仁那のファンであったことから(?)、仁那の正体に気付きます。仁那が一人で学校から帰るのに怖がっていることにも。
だから帰り道送るよ、という提案までします。
徐々に仲良くなってきた二人でしたが、仁那の正体に気付いている者による盗撮写真が元所属事務所宛に送られてきます。どうやら仁那のストーカーがいる(正体がバレている)ようだと、元メンバーから注意を促す電話がきます。
かつて刃物で切り付けてきた、まだ捕まっていない犯人は、逃走中に柔道を駆使して警備員を全員投げ飛ばしていました。
「こんなこと言いたくないけど、あなたがよく話す「光くん」って柔道やってるんだよね?」
「なんでアナタの正体が分かったの?」
「妹なんてほんとうにいるの?」
「何か犯人のクセってなかったの?」
そういえば、フードをかぶって顔は見えなかったけど、耳をかいていた・・・。
横を歩く光の姿を見れば、犯人と同じように左耳をかいていました。
これが第2話のラストシーンです。
こわっ!!まさかの闇展開?!
続きが気になり過ぎて苦しいです。
月刊誌なので2巻は当分先でしょう。
<女の敵は女?>
この作品を問題作と言うと語弊がある気がします。
単にジェンダー論に深く切り込んでいるだけでなく、ミステリーやサスペンスとしても一級品のエンターテイメントで構成されているので、グイグイ読まされます。
伏線の張り方が絶妙に上手い。
あと絵が綺麗でメチャクチャ上手い。
文句のつけどころが見当たらない、完璧な1巻がスタートしましたね。
デリケートなテーマを描くと批判にさらされやすく、リスクが高いので、著者や出版社にも勇気が必要です。その覚悟も、テーマと真摯に向き合う姿勢も素晴らしい。
「たとえ小学生でも分かってくれる読者はいる」
「生ぬるい作品は世に出さないぞ」
という攻めのクリエイター魂が伝わってきます。
自身の女性性に嫌悪感を抱いて悩む少女は少なくないと思います。
「思春期あるあるだよ」と言ってしまうのは簡単ですが、悩んでいる本人は現在進行形で深刻に苦しんでいるわけですし、大人になったら自然に解決する問題でもありません。
チカンされることが死ぬほど嫌で、恐怖しか覚えない女子もいる一方で、
逆に自分の容姿や女性性にプライド(あるいは虚栄心)を持ち、チカンされたことがあることも自身のステータスだと捉える女子もいます。
(このマンガでいうと未玖というキャラクターです。)
同じことをされても対極の価値観を持ってしまうことは、問題を根深くしています。
無理解な男、軽薄な男たちだけが問題を深刻化・複雑化させているわけではないのかもしれません。
「女の敵は女」・・・これこそが最も越えることが困難な壁なのかも。
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