【新書】『小説の読み方』―分析的に読むと感動が増す
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『小説の読み方 感想が語れる着眼点』平野啓一郎 / PHP
⇧2009年発売。
現在絶版のため中古でしか入手できません。
電子書籍版はありません。
10年前の本ですが、小説の読み方は時代によってそこまで変わらないだろうと思います。つまりこの本は今から10年後に読まれても通用します。
<国語の試験問題>
学生時代、僕は国語のテストが嫌いでした。
中でも一番嫌いなのが、
「このときの〇〇さんの気持ちとして正しいものを、次のA~Dの4つの選択肢の中から選びなさい」
あるいは、
「この一文を書いた著者の意図を答えなさい」
という問題形式です。
当時は「そんなの本人(主人公や著者)にしか分かるわけないだろ!」と思い、イライラしながら問題を解いていました。
ちゃんと著者に「これで合ってますか?」と、出題者が確認を取った上での問題なんだろうな?!と。
解釈が一つに絞り込めるのはおかしいのではないかと考えていました。
せめて「選択肢の中から正解に一番近いものを」という表記に変えて欲しいものです。
他人の気持ちや思考を100%正確に言い当てることなんて出来るはずがないからです。
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<小説の読み方>
そもそも小説の読み方とは何でしょうか。
「そんなのどう読もうが読者の自由でしょ」といえばその通りだと思います。
この本ではより深く楽しむための読み方、あるいは他人に感想を伝えるためには、どういう視点で小説に向き合えばいいのかが解説されています。
つまり分析的な読み方です。
小説をどう読むかはもちろん個人の自由ですが、「こういう読み方もできるんだ」と知っているだけで、これからの読書ライフがより豊かになります。
我々素人の読み方なんてあっても数通りであり、しかも突き詰めていない漠然としたものです。
なんとなくで実行していることでも、言語化してもらった方が腑に落ちます。
もちろん自分が思いもしなかった視点があることも教えてもらえます。
著者は現役の第一線で活躍されている作家さんなので説得力があります。
具体的には、基本的な4つのアプローチが紹介されています。
1)、メカニズムから見る
舞台設定、登場人物、配置と出入り、プロットの展開、文体など。
2)作家の背景に着目する
その作品が初期のものか、晩年に書かれたものか。扱うテーマの変遷など。
3)ジャンルから読み解く
ミステリーやSF、あるいは「泣ける小説」という漠然としたものでもよい。
4)作品の歴史的位置づけに注目する
作品が発表された社会情勢や文学的な立ち位置はどういうものか。
別に上記の全てを網羅した読み方をする必要はなく、作品によって適宜、いずれかの視点で眺めてみるとより深く理解できますよという主張です。
純文学からミステリーあるいはケータイ小説まで、実際の作品を例にとって解説してくれています。
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<書き手の配慮>
小説家ならではの視点も面白いし、なるほどなと思わされます。
例えば、
地の文で「彼女は、非の打ちどころのない美人だった」と書かれていたら読者はその人物造形を嘘っぽく感じるけれど、
会話などで「彼女は、非の打ちどころのない美人だよ」と書かれていれば、そうなのかと自然に受け止めることができます。
些細なことですが、このちょっとした手続きで、作者の恣意的な設定という印象が後退すると説明されています。
確かに言われてみればその通りです。
小説家はこんなに細かい部分にまで気を配って書いていたのかと感動しました。
今や本を読むということは「マイナーな趣味」になってしまいました。
これから小説を読む人口はさらに減りはしても、増えはしないでしょう。
小説がこの世から無くなる日が来るとは思いませんが、業界の縮小は、良い作品を生み出す可能性の縮小でもあります。
小説好きの一人として、もっと色んな作品を紹介していこうと思いました。
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