【ビジネス】『アルゴリズム思考術』―自分の最適化は他者への優しさにもなる
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『アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール』ブライアン・クリスチャン / 訳:田沢恭子 / 早川書房
⇧2019年4月3日発売(文庫版)。
<アルゴリズムとは>
最近のビジネス書業界では、「論理的思考をして発言・行動することが問題解決につながる」という主張の本が多く出版されています。
「相手と議論の前提条件を共有せよ」とか「まずは使う言葉の定義を決めろ」とか「行き当たりばったりに話すのではなく、結論まで順序立てた明快な構成を心がけよ」とか、様々なことが述べられています。
ただこういった漠然とした抽象的な説明だと、色味が無いし具体的なイメージが湧きにくいものです。
この本では、「アルゴリズム」をモチーフにして日常生活における問題解決方法を説明しています。
アルゴリズムとは「問題を解くための一連の単純な手順」という意味です。
一見、アルゴリズムという言葉だけを聞くと難しそうに思えますが、実は身近に転がっているものなのです。
アルゴリズムを使うのは数学だけではありません。
レシピを見てパンを焼くのはアルゴリズムに従うということですし、
編み図を見てセーターを編むときもそうです。
昔からアルゴリズムは人類のテクノロジーの一部をなしてきたのです。
我々は学術的、社会的、あるいは日常的な問題を考えるときに、あまりに複雑すぎるために考えるのをやめて、直感で行動してしまうことがあります。
そして失敗して後悔するのです。
そうならないために、行動に移す前の思考段階で、コンピュータ科学が出す答えが意外にヒントになったりします。
つまりアルゴリズムを通して問題を眺めてみることで、簡単に解決できてしまうことがあるのです。
「人間の感情が絡む複雑な問題を、コンピュータのようにすべて単純化して考えるのには抵抗がある」と考える方もおられるかもしれません。
しかし一旦冷静になるという意味でも、「こういう考え方もある」と知っておくだけで救いになることもあれば、思いがけない場面で役立つこともあります。
知識は持っていないと使えません。
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<探索と活用>
我々が生きていられる時間は有限です。
そのためできるだけ無駄なことは省き、最も効率のいい方法を知りたいと願います。
我々はいつも何かを探しています。
より家賃の安いマンション、より安い食材のスーパー、より目的地に近い駐車場、条件のいい仕事、面白い漫画、優秀な部下、最高の結婚相手などです。
人生は有限なので、いつまでもそれらを探索し続けているわけにはいきません。
いつかは探索を切り上げて何らかの選択をします。
果たしてそれは正しい決断だったのでしょうか。
もっと良い条件のものにその後に出会えた可能性があるのでは?
どうしたら最適な選択をすることができるのでしょうか。
人生一度切りなんだから、そんなの分かるわけないと思われるでしょう。
しかし最適な選択をする確率を上げることはできます。
いつ探索を止めて選択すれば最適解が得られるのかという答えです。
実は「37%ルール」というものがあります。(数学の最適停止問題。)
例えば最良の物件に入居できる可能性を最大にしたければ、部屋探しに充てる時間の37%(1ヶ月かけるつもりなら最初の11日間)までは結論を出さずにただ物件を見て回ります。
しかしそれ以降はそれまでに見たどの物件よりもよい部屋に出会ったらすぐさま保証金を払って契約するのです。
これは最適であることが証明可能なんだそうです。
これは選択肢が多く、順番に見ていくタイプのあらゆる問題に応用できます。
この「37%」という数字を知っているかどうかで、自分の選択に対する不安感もかなり拭えるのではないでしょうか。
他にも多くの数学的・統計学的なアプローチによる日常的な問題の解決方法が解説されています。(ソート、キャッシュという概念、ベイズの法則、ラプラスの法則、乱択アルゴリズム、進化したゲーム理論など内容が盛りだくさん。)
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<アルゴリズム的発想>
奇妙に聞こえるかもしれませんが、コンピュータ科学においては、計算とは「悪いもの」だということが暗黙の原則になっているそうです。
優れたアルゴリズムの根底には必ず、思考の労力を最小限に抑えよという命令があります。
我々は他者とコミュニケーションを取るとき、相手に計算の必要な問題を与えます。
明確な依頼や要求だけでなく、こちらの意図や信念や好みを解釈してみろという力も働きます。
相手に負荷をかけているのです。
深刻なものから些細なものまで、現実の生活では問題にあふれています。
できるだけ問題をシンプルな形にして渡してあげると、相手の負担は軽減されます。
それだけで社会は良い方向に向かいます。
要はアルゴリズム的発想は、自分の効率化だけでなく、他人への優しさでもあるのです。
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