【マンガ】『ノラと雑草』1巻―JKを貧困と虐待から救えるか
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ノラと雑草』真造圭伍 / 講談社
⇧2018年11月発売。
2巻は2019年6月21日に発売されています。
<貧困ビジネス>
「貧困ビジネス」という言葉をご存知でしょうか。
普通のビジネスは、顧客対象が大衆だったり富裕層だったりしますが、
貧困ビジネスは、ホームレスや生活困難に近い年金受給者、あるいはニートや派遣労働者やギャンブル依存症などで借金まみれの者といった社会的弱者を顧客にしています。
まっとうなビジネスならば社会的弱者の救済にもなりえますが、大抵はそれを取り仕切る者(組織)がピンハネしてしまい、救済どころか搾取になっているものです。
貧困ビジネスの多くは詐欺に近いといえます。
では「JKリフレ」という言葉をご存知でしょうか。
「女子高生リフレクソロジー」の略で、女子高生(の格好をした)女性従業員が個室などでマッサージを行う店・サービスのことです。
表向きは単なるマッサージ店ですが、裏オプションとして性的なサービスが用意されている店もあるそうです。
手っ取り早く多めにお金を稼ぎたい女子高生は、普通のアルバイトよりもこういった業態の仕事を選択しがちです。
あるいは他の業態では(保証人が必要だったりして)働けない者がたどり着く業態ともいえます。
大抵の女子高生はお金をあまり持っていないので、社会的弱者ともいえます。
「JKリフレ」は顧客ではなく従業員に対する貧困ビジネスとして成立している面もあるのです。
働ける仕事(アルバイト)の選択肢が限られている女子高生に対して、救済措置のように見せかけた搾取構造になっているからです。
このマンガに登場する少女・海野詩織も、そんな「JKリフレ」で働いていました。
しかし理由は遊ぶお金欲しさや、高級ブランド品を買うためではありません。
生活のため、 他では働けないので仕方なくやっています。
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<あらすじ>
酒浸りの母親からのネグレクト(育児放棄)気味の虐待を受けている高校1年の少女・海野詩織。父親はいません。
高校にも行かず、家出して家に帰りたくない彼女は、生活のためにJKリフレで裏オプションも込みの仕事をしていました。
警視庁生活安全課の警部補の山田は、詩織が働く店にガサ入れを行います。
警察は店の就業員や居合わせた客を警察署に連行し、事情聴取を行いました。
関係者が各々警察署から去っていき、最後に残ったのが詩織でした。
彼女は色んな男のところを転々としてきて、最後にJKリフレの店に行きついたのです。
(自分が家出した女子高生だとSNSに書き込めば誰かが声をかけてくれるので、その人の家に転がり込むという手法です。)
山田にはかつて娘(こずえ)がいました。
しかしこずえは水難事故で亡くなりました。
詩織がこずえに似ていたことから、山田は詩織の行く末が気になります。
店からは補導しましたが、彼女の住所が山田の担当する地域の管轄外だったので、部下からは「もう関係ないでしょ」とたしなめられます。
警察は詩織を実家に送り届けますが、結局彼女はまた家を出ます。
家にいると母に殴られるからです。
再びSNSでその日泊めてもらえる場所を探します。
食事や宿泊を了承してくれる、外見からはマジメそうに思える人たちは、詩織を監禁したり殺そうとしたりしてきました。
彼女は命からがら逃げ出します。
詩織は町をさまよう内に、山田と出くわします。
一度は山田のカバンを盗んで逃げだした詩織でしたが、母親にも頼れず、SNSで出会った男から殺されかけた今は、他人が全員恐ろしく思えてきて、結局山田に頼ることになりました。
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<まとめ>
未成年が虐待に合うと、家にはいられないし、かと言ってお金も無いからどこかに部屋を借りることも出来ません。
学校に行っても精神状態が不安定なので、学業に専念できないし友達をつくることも困難です。(価値観や話題についていけない)
大人に相談するという発想が浮かんだとしても、先生や近所の人がまともに相手にしてくれないことも多々あります。
警察も虐待の証拠がなければ動きません。
つまりどこにも居場所がなくなるのです。
よって、家には帰りたくない女子高生が、お金を稼ぐためにJKリフレで働くのは自然な流れといえます。(親が保証人になってくれないなら、女子高生が就ける仕事はさらに限定される。)
貧困、虐待、家出などはセットとなって問題となるケースが多いです。
複合的に絡み合っているので、個別に解決していけるものでもありません。
このマンガでは、家出少女が刑事の家に一時避難するという展開になりますが、根本的な問題の解決にはなっていません。
果たして山田は詩織を救うことができるのでしょうか。
どうなれば彼女を救ったことになるのでしょうか。
作者が物語をどう着地させるのかが非常に気になります。
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