【マンガ】『鬱ごはん』1巻―詩的私的死的グルメマンガ
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『鬱ごはん』施川ユウキ / 秋田書店
⇧2013年4月発売。
現在3巻まで出て来ます。
<著者と作品>
タイトルからもお分かりのように、読んでもハッピーな気持ちになれるマンガではありません。
かなり読む人を選ぶ作品です。
落ち込んでいるときには読まない方が賢明です。
著者の代表作は、なんちゃって読書家マンガ『バーナード嬢曰く。』です。
⇧こちらは完全に学園ギャグマンガであり、明るく笑って読み終えることが出来ます。
本を読むのがめんどくさいけれど、「読書家」という響きに憧れて知ったかぶる主人公がバカバカしくて面白いです。
アニメ化になったことにも納得です。
しかしこの『鬱ごはん』は真逆です。
明るいキャラクターや明るい展開など微塵も描かれていません。
ダークな作品が好きじゃない方は間違いなく最後まで読み切れないでしょう。
著者はご自身でも認めておられるように、絵が上手くありません。
しかしそのハンデを帳消しにして、さらにお釣りがくるほどのセリフやナレーションのセンスがあります。
これはマンガ家の中でもトップクラスでしょう。
鋭い観察眼や奇抜な視点から生み出される言葉たちは、まるで詩を読んでいるかのようです。
マンガを読んでいると思うから「絵が下手だな~」と感じるだけで、
挿絵の多い詩や文学作品を読んでいると思えば、何も違和感はありません。
さらにそれがニヤリとさせられる笑いも含んでいるのだから、お高くとまっている文学作品などよりも、はるかに親しみやすいでしょう。
小説やマンガを読むときに、常日頃からセリフの言い回しに注目している方ならば絶対に楽しめる作品です。
一応、ギャグマンガです。
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<あらすじ>
主人公は鬱野たけし(22歳)。
就職浪人が決まり、特にすることもなくなんとなく生きています。
そんな状況に特段焦ることもないけれど、閉塞感や倦怠感を覚えています。
無職であることに恥ずかしさを感じてはいるけれど、努力して現状から抜け出そうという気概があるわけでもありません。
周りの人間からはダサいとかウザイ奴だと思われたくないと、自意識過剰な行動や発言を繰り返しています。
彼は食にあまり興味があるわけではなく、ただ腹を満たすために食事をとっています。
「生きるためには面倒だが食べなきゃ仕方がない」という感覚です。
そんな鬱々とした毎日が繰り返され、ついには自分にだけに見える(薄汚れた猫の)妖精が現れて話しかけてくるようになりました。
妖精は、主人公がさらに鬱になるようなマイナスのことしか言いません。
妖精の存在を鬱陶しく思いながら、今日もまたいい加減な食事をするのでした。
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<変化球グルメマンガ>
世の中にグルメマンガは数多くあります。
ほぼ間違いなく料理が主役であり、美味しそうな料理や調理法が描かれているものです。登場するキャラクター達も、料理や食べることが大好きで、より美味しいものを目指したり探したりしていきます。
このマンガはそれと全く対極にあります。
主人公は食に興味がないし、登場する料理もその辺にありふれたものばかりです。
ファミレス、回転寿司、ファストフード、カップ麺などです。
わざわざ紹介するまでもないものばかりです。
そもそも料理が主役なのではなく、そのありふれた食事を通して主人公がどんな思考や発言を繰り出すのかがこのマンガの醍醐味です。
例えば
「いちいち(豚の)死を噛みしめて肉食うくらいなら、ベジタリアンにでもなったらどうや?」と言う妖精に対して、主人公はこう答えます。
「そんなモノは偽善だ。
思うにベジタリアンの前世は、ハエ取り草に食われたハエだ。
奴らは植物に復讐心を燃やし、執拗にサラダを食らう。」
こんな発想はどうやっても自分では思いつけません!
主人公だけでなく、著者も相当な鬱屈を抱えて生きておられるのではないかと推察します。
これは数多のグルメマンガたちへのアンチテーゼとなる作品です。
世の中に一つくらい、こういうふざけたグルメマンガがあってもいいじゃないかと思います。
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