【マンガ】『アデライトの花』1巻―ホラー×メルヘンのパニック群像劇
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『アデライトの花』TONO / 朝日新聞出版
⇧1巻は2017年2月発売。
2巻は2019年3月に発売されています。
少女マンガ誌『Nemuki+』(ネムキプラス)に連載されています。
マイナー雑誌ですが、コアなファンが多いです。
このマンガ雑誌のカラーは、ホラーと日常からの浮遊感だと僕は勝手に解釈しています。
この『アデライトの花』も、ホラーなのにふわっとした空気が流れています。
よくよく読めば怖いのですが、見た目は可愛らしいという奇妙な印象です。
ホラーとメルヘンを掛け合わせたパニック群像劇です。
著者がベテラン作家だからか、ストーリーの安定感がすごいです。
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<あらすじ>
ハント一族は南の国との貿易で財を成していました。
お互いの友好関係を築く目的で、南の国から許嫁としてアデライトがやって来ます。
しかしアデライトの夫となるはずのハント一族の家長・クラックはすでにパイロープと結婚していました。
今さら国には帰れないアデライトは、2番目の妻でいいからここに置いてくれるよう頼みます。クラックはその願いを聞き入れ、アデライトを屋敷から離れた西の塔に住まわせます。
やがてアデライトは息子・ピートを産み、パイロープは息子・キューブを産みます。
それから数年後、屋敷で働く者たちが奇妙な病気を発症して次々死んでいくという事態に見舞われます。
身体から植物が生えてくる症状で、甘い匂いを発して、他人に感染していきます。
どうやらアデライトが原因のようで、南の島の風土病を持ち込んだのだという説を医者は唱えます。
しかし当のアデライトもその病を発症してしまい、西の塔に隔離されました。
様子を見に来たクラックも感染していまい、西の塔から出られなくなり、ついには死亡してしまいます。
ハント一族の財産を引き継ぐのは正妻であるパイロープなのか、息子のキューブになるのか。それとも全員感染してしまうのでしょうか。
明確な治療法が見つからないまま時は過ぎ、やって来た医者たちは次々とさじを投げていきます。
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<見た目はカワイイが心はクズ>
アデライト以外はまあ全員クセモノぞろいです。
清らかな心を持った者など一人もいません。
卑屈で嫉妬深いか、傲慢で他人を見下しているかのどちらかです。
パイロープはボランティア活動として毎週貧民街で子供たちにパンを配っていますが、心の中では彼らの不潔さを嫌っていて、見下しています。
かつては自分も貧民だったけれど、クラックに見初められて結婚し裕福な身分になったことで、差別意識が鮮明になったのです。
キューブは小さな頃から帝王学を授けられたせいか、一部の人間以外は動物に見えるという性質があります。「必要なのは人を人とも思わない冷酷さだ」と教えられてきたことが具現化したようです。
キューブの姉・コロナは許嫁が決まっており、自分の身分を盾にして夫やその家族に対して傲慢にふるまいたくて仕方ない様子です。自分が選ばれた人間だということを信じて疑いません。
使用人のチーズは他人の使用後の皿をなめたり、ゴミの中から他人の食べ残しを拾ったりしています。キューブに取り入るために身内の悪口を言ったりしますが、キューブにはその魂胆を見抜かれています。
他の登場人物たちも控えめに言っても好かれる性格・人格ではありません。
シンプルにクズばかりです。
これをそのままストレートに描いたのでは、単に嫌な気分になるサスペンスや身も蓋もないホラーになるだけです。
しかし柔らかい線の可愛い絵柄や動物たちがそう感じさせなくさせています。
ハードな設定や人間関係なのに、重く感じないし嫌な気持ちにならないのが不思議です。物語の印象を決めるのは、絵の力が非常に大きいことが分かります。
見た目は可愛いのに中身はハード。
このギャップのある作風が根強いファンを獲得しているのでしょう。
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