【マンガ】『グッバイ、ノーベル!』1巻―ノーベル文学賞候補作家がゴーストライターに!
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『グッバイ、ノーベル!』竹充ヒロ / 小学館
⇧2019年6月28日発売。
<ノーベル文学賞>
ノーベル文学賞は1901年からスタートしました。
現在それから120年が経とうとしていますが、賞を取った日本人は今のところ川端康成と大江健三郎の二人だけです。
(※カズオ・イシグロはイギリス人)
文学賞候補に日本人作家の名前があがることはありますが、実際に受賞するまでには至っていません。
そもそも今の日本人は、ノーベル文学賞の名前は知っていても作品にあまり興味を示しません。
受賞報道時に書店で瞬間的に特設コーナーが作られるだけで、そのコーナーの商品が売り切れ(品薄)になっているところを見たことがありません。
文学に興味を持っているのは、日本人の中に1%もいないでしょう。
現代にはもっとお手軽な娯楽があふれているので当然の結果です。
大衆がどんなものに感情を動かすかは時代によって変わっていきます。
今なら漫画のように絵(映像)があるか、文字だけなら音声や動画になってないとなかなか作品を見てもらえません。
大衆に受け入れられるコンテンツは「分かりやすさ」「気軽さ」が最も重要な要素です。
ノーベル文学賞受賞作品は一筋縄ではいかないものばかりなので、分かりやすさも気軽さもありません。ヒットコンテンツになるには不適切です。
つまり大衆(特に若者)と文学には、今や大きな隔たりがあるのです。
この漫画では、文学に全く興味のない女子高生と文学一筋で生きてきた作家の青年が出会い、お互いの価値観を衝突させながら作品を共同で生み出していきます。
(※ちなみに選考委員のゴタゴタにより、2018年には文学賞の選考が見送られました。
2019年以降はどうなるかまだ分かりません。)
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<あらすじ>
日本で一番ノーベル文学賞に近いと言われている天才作家・龍平ナヲキ。
彼は何度も文学賞の候補になっていましたが、毎回受賞を逃していました。
そしてついに、自らも大傑作だと思える作品を書き上げます。
それはノーベル文学賞受賞を確信するほどの出来でした。
完成の報告を電話で編集者にしようかというとき、床にバラまかれた原稿用紙で足を滑らせ、机の角に頭をぶつけて死んでしまいます。
そして幽霊となった彼は天国へ行く前の中継地点で目を覚まし、自分が死んでしまったことを知りました。
そこには彼と同様に死んだ直後の人達が集められており、自分の死を受け入れられない人もいました。
そこで「現世への未練が強すぎると、悪霊になって現世をさまよってしまう」と注意を受けます。逆に言えば、未練を強くすれば現世に戻れるということだと解釈したナヲキは「死んでも死にきれない」と強く念じます。
ナヲキは大傑作を世に出す前に死んでしまったことが心残りでもありましたが、もっと心配なことがありました。
それは彼の死後に自分の書斎に入られて、机の引き出しを開けられてしまうことです。
引き出しの中には、隣に住む女性への想いを夜な夜な綴った、大量のラブレターが入っていました。恥ずかしいので人知れず処分してしまいたかったのです。
現世に幽霊として戻ったナヲキでしたが、幽体のままでは物質に触れることができませんでした。
その後、書店で唯一彼の姿が見える女子高生・すずと出会います。
ナヲキはすずに、書斎から書き上げた原稿を回収して編集者に見せ、ラブレターを処分してくれるよう頼みました。
ナヲキの渾身の作品をすずが書き上げたことにして編集者に見せますが、酷評されて終わりました。その小説はすずにも不評でした。
しかし処分するはずのラブレターはすずを感動させます。
恥ずかしさしか感じないナヲキはさっさと処分するよう命じますが、すずはSNSに手紙の写真を投稿し、なんとそれがバズってしまいます。
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<まとめ>
ナヲキとすずの感性がことごとく食い違うのが、この漫画の面白さです。
ナヲキの渾身の小説はすずには一ミリも響かなかったのに、
ナヲキが恥ずかしくて稚拙な文章だと思っているラブレターにすずは感動します。
文学界では超有名人であり熱烈なファンも多数いるナヲキのことを、すずは一ミリも知りません。知ったあとも興味を持ちません。
ナヲキの著作を読んでも「超つまんない」という感想しかありません。
回りくどい比喩表現が鬱陶しく、意味が分かりにくいからです。
文学に興味のない女子高生と天才作家は、こんなにも分かり合えないものなのかと恐怖すら覚えます。
この漫画は文学コメディですが、あながちフィクションとも言い切れない「感性の溝」というテーマが、作品に深みを与えています。
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