【小説・ファンタジー】『図書館の魔女』―本格ファンタジーを体感せよ
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『図書館の魔女』高田大介 / 講談社
⇧2016年4月発売。
2013年に出たハードカバー版(上下巻)を、文庫化するにあたって4冊に分けたものです。メフィスト賞受賞作です。
<メフィスト賞>
ミステリー好きな方には有名なメフィスト賞ですが、一般には知られていないのかもしれません。
メフィスト賞は「江戸川乱歩賞」や「このミステリーがすごい!大賞」と同じように、新人のための賞です。(すでにデビューしている人は応募資格なし)
ここからデビューして現在でも活躍されている作家さんは多数おられます。
たとえば、
・『すべてがFになる』の森博嗣
・『煙か土か食い物』の舞城王太郎
・『クビキリサイクル』の西尾維新
・『冷たい校舎の時は止まる』の辻村深月
です。
どれも名作です。
他には、清涼院流水、乾くるみ、深水黎一郎、古野まほろ、早坂吝、周木律、井上真偽など錚々たるメンバーがデビューを飾っています。
彼らの多くの作品がアニメ化だったりマンガ化、映画化、ドラマ化されているのはすでにご存知の通りです。
メフィスト賞の応募条件は「面白ければ何でもアリ」と謳われてはいますが、
ほとんどの受賞作がジャンルでいうとミステリーに分類されます。
その中で珍しく、ゴリゴリの本格ファンタジーで受賞したのがこの『図書館の魔女』なのです。
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<あらすじ>
ド田舎で暮らしていた少年・キリヒトは、王宮からの招集でそこの図書館で働くよう指令を受けます。
古い塔の図書館には膨大な量の本が収められていました。
図書館の最高管理責任者はマツリカという少女でした。
彼女は圧倒的な知識と洞察力を持っていましたが、口をきくことができないというハンディキャップを抱えていました。
そのため自分の意志や意図を迅速に的確に伝えてくれる助手を探していました。
その役を務めるためにキリヒトが呼ばれたのです。
最初はキリヒトが手話を覚えて会話していましたが、どうしても表現に限界があるということで、お互いに手をつないで指の動きで会話する「指話」という技術を開発してしまいます。
傍から見ればただ手をつないでいるだけなので、密談にも使えます。
それはその後の展開で活きることになります。
彼らが住む一の谷という小さな国は、大きな隣国のニザマによって戦争を仕掛けられつつありました。
ニザマは他国を侵略して領土拡大を狙っていたので、戦争になるきっかけ(口実)作りに励んでいたのです。
マツリカは戦争回避のために多くの策謀を巡らせていきます。
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<まとめ>
著者の高田大介さんは文学研究で大学院にまで行かれている言語学者です。
東京芸大で講師をされていたこともあるそうです。
この物語の設定はライトノベル的要素もあって、入り込みやすさと親しみやすさが計算されて作りこまれていますが、文体は重厚で濃密で、これぞファンタジー小説という見本のような作品です。
つまり文学の専門家が本気でファンタジーを書いてみたら、最上級の物語が生み出されたということです。
当然のことながら言葉の扱いが丁寧で、「言葉」に対する見方が変わりさえする体験ができます。
頭脳明晰で偉そうなマツリカと、本については無知だけど観察力に優れたキリヒトという二人のキャラクター性ももちろん素晴らしいですが、脇役たちもキャラが立っていて面白いです。
キャラクターにもストーリーにも、文句のつけどころが無いほどの完成度の高さです。
学者でもあった才能のある作家がすべてを計算して作ると、これほど緻密で存在感のある物語がつくれるのかと感動しました。
面白い小説は大抵は映像化されていくものですが、この作品はまだです。
「完成度の高すぎる小説作品は、映像化すると逆にショボくなってしまうから皆尻込みしてしまって出来ないのだろう」と推測しています。
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