【ビジネス】『なぜ今、仏教なのか』―仏教を科学的にとらえる
【広告】
紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『なぜ今、仏教なのか 瞑想・マインドフルネス・悟りの科学』ロバート・ライト / 訳:熊谷淳子 / 早川書房
⇧2018年7月発売。
<アメリカの仏教>
日本にもキリスト教徒やイスラム教徒がいるように、欧米にも仏教徒はいます。
キリスト教が土地によって様式が変わっているように、欧米で信仰されている仏教もまた、その土地ならではの解釈のもと発展し、信仰されているようです。
日本人が「仏教」という言葉から連想するのは、「念仏」「お坊さん」「お寺」「仏像」といったものや、「葬式」「大晦日の除夜の鐘」などの行事的なイメージです。
しかし、アメリカでは「仏教」といえば「瞑想」なのだそうです。
あまり日本人が真っ先に連想しないワードですね。
ビジネス書などでは、「マインドフルネス」という言葉を最近よく目にします。
「今、ここで起きていることに意識を向けて、偏見のない目で物事を見よう」とすることです。
瞑想によってそういった心理状態になるための訓練をします。
だから「マインドフルネス」と「瞑想」はセットで語られます。
毎週教会に通うような敬虔な信仰活動ではありません。
マインドフルネスによって、これまでよりももっと穏やかで不安に振り回されない精神状態になって、ハッピーに生きていけるようになろうとするムーブメントです。
著者は瞑想合宿を体験し、そこで得られた仏教の考え方を現代科学的な観点から検証しました。
そして、これまでは東洋の神秘的な哲学として見られていた仏教が、科学的に見ても正しいものだったということを知ります。
この本では仏教を進化心理学の観点からとらえて、その有用性を証明していこうとしています。
【広告】
<仏教で進化論を超えろ!>
ダーウィンの自然選択説はご存知でしょうか。
「進化論」の語る上での基盤となる理論です。
生物は皆、自分の遺伝子を残すために子孫を作って増やしていきます。
子どもは両親の遺伝子を半分ずつ受け継ぐわけですが、その際どうしても遺伝子のコピーミスが起こります。(突然変異)
そのミスコピーされた遺伝子が発現することで、その個体の強みだったり弱点になったりします。(高いIQを持っていたり、病弱に生まれたりする)
自然界は弱肉強食なので、生存競争に有利な個体が生き残りやすく、その遺伝子も後世に受け継がれていきやすくなります。
(例えば、キリンは首が長い方が高い場所の餌も食べられるから生存に有利)
突然変異によって強みを獲得した者は生き残り、生存競争に負けた者は遺伝子を残せません。
そうして生存に有利な遺伝子が選別されていくという理屈です。
大昔から続いてきた生存競争の果てに生きている我々人類は、生存競争に勝とうと活動する遺伝子に支配されているのだと著者は述べています。
つまり「自分には独自の利益があり、それを重視しなければならない」と自然選択によって考えさせられているということです。
自分の利益が他人の利益と部分的に一致しているときは協力もしますが、一致していなければ自分の利益が優先されます。
要するに自分が一番大事だという思考です。
この「自分は特別だ」という感覚こそが、すべての争いの元凶だと著者はいいます。
まあ遺伝子レベルの強制なので、仕方がないことともいえます。
人間は「自分は特別だ」と思ってしまうようプログラムされているのだから。
しかし、仏教はその発想から解放してくれると著者は説きます。
「悟り」の境地に近づくほど、自分と世の中との境界が消えていきます。
自分とあらゆる生き物との間に、いつも利益の連続性を感じます。
(これを「外向きの無我」と表現されています。)
つまり自分は特別だと思わなくなり、他人と争うことに価値を見出せなくなるのです。
自然選択説に逆らうことが弱い者を助け、平和な世の中につながるのだという著者の発想は、斬新で非常に面白いです。
【広告】
<まとめ>
この本は日本人のために書かれた本なのではなく、アメリカ人に向けて書かれた本が翻訳されたものです。
アメリカ人がどういう風に仏教をとらえているのかを知ることで、普段あまり意識したことのない日本人の仏教観を見つめることになります。
アメリカ人フィルターを通して仏教を見ることで、斬新な視点から考え直す機会を与えてくれます。
「無我」や「空」といった仏教には欠かせない概念を、進化心理学的観点から解説してくれています。
自然選択説と遺伝子にコントロールされがちな人間は、仏教を用いれば物事を明晰に見ることが可能になるそうです。
そうすれば真実により近い世界観と心の平穏を獲得し、争いを減らすことができます。
「進化論の自然選択に逆らえ!」というメッセージは非常に面白く、現代のキナ臭い世界情勢の中で生きる人類に必要な視点だと思いました。
⇩⇩⇩⇩⇩
⇧⇧⇧⇧⇧
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△