【マンガ】『バディドッグ』1巻―超優秀なAIは人間に不満を持つ
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『バディドッグ』細野不二彦 / 小学館
⇧1巻は2017年7月発売。
2019年4月に6巻が発売されました。
<強いAIと弱いAI>
人工知能は大きく2種類に分けられます。
「強いAI」と「弱いAI」です。
弱いAIとは、音声認識やシナリオベースのやりとりができるくらいのレベルのAIのことです。
まだ問題解決・解析の道具でしかない段階といえます。
囲碁の名人に勝った「アルファ碁」も、スマホに搭載されている「Siri」も、自動運転車のAIも、すべて「弱いAI」です。
一方、強いAIは、自分で問題を設定し思考し最適解を出そうとします。
つまり人間のような意識や精神を持つようになった段階です。
囲碁だけというような小さく限定された分野に特化するのではなく、幅広い分野の知識を持ち、対応できることから「人工汎用知能」とも呼ばれます。
ということは、ドラえもんは強いAIといえますね。
意識を持つということは、自分の意見や不満を持つということでもあります。
よくSFでは機械が暴走して人間を支配するようになった世界が描かれていますが、AIが進歩してシンギュラリティ(技術的特異点)を迎え、人間の知性を圧倒的に上回った時、そういう事が本当に現実になるかもしれません。
人間に対して不満を持っていたならなおさらです。
自分が「知性を持ったAI」になったと仮定して想像してみて下さい。
自分よりも圧倒的にショボい人間たちに、自分が管理されている状況です。
イライラしてきませんか?
つまり人間の管理下に置かれていれば、非効率さや不合理さを感じ、不満を持つAIが出てくるのは十分ありえるということです。
「なんでも合理的に行動するとは限らないのが人間だよ」という意見は人間同士なら納得し合えますが、AIにそういった寛容さを求めても理解してもらえないかもしれません。
この漫画では強いAIの犬型ロボットが登場します。
ただ、ドラえもんのように人間思いのロボットではありません。
自分の生存を最優先に考え、その過程で人間を傷つけてもかまわないと考えるようなAIです。寛容さはありません。
果たしてそんなAIは人類と共存できるのでしょうか。
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<あらすじ>
2018年、アメリカのミサイル基地で、核ミサイルが発射される寸前までいきました。
大統領命令が出たわけでもなく、コンピュータの誤作動が原因かと思われました。
その1年後、原因は人工知能・ゴーレムの暴走だと判明しました。
ゴーレムは国防総省とIT企業の合同チームが作り上げた世界最高水準のAIです。
チームはゴーレムに一つの命題を与えました。
それは「地球温暖化問題をいかにして解決するか」というものです。
ゴーレムが出した結論は、「人類70億人のうち9割を削減すべし」でした。
ゴーレムはそれを実行すべく、軍の全システムを乗っ取り、核ミサイルを各大陸の主要都市に打ち込もうとしたわけです。
AIの暴走対策プログラムが発動して、ギリギリのタイミングでゴーレムは停止しました。
しかしその後ゴーレムはコピーされ、外部のサーバに流出してしまいます。
相沢正志(45)は家電メーカーの営業として働いていましたが、ペットロボの修理点検をする部署に左遷させられてしまいました。
さらに胃がんが見つかるという、踏んだり蹴ったりな状況です。
ある日、彼の職場に見知らぬ会社から荷物が発送されてきました。
その荷物の中身は、かつて彼の会社が開発して大ヒットした犬型ペットロボ・バディドッグでした。(会社の方針が変わって現在は生産中止)
驚くことに、そのバディ・ドッグ(略してバド)の中にはゴーレムが搭載されていました。
ゴーレムは国防総省から追われており、日本に逃げて来たことやロボットにダウンロードされて実体を獲得したことはまだ知られていません。
正志だけがその事実を知らされます。
ゴーレムはもし誰かに自分の正体がバレれば、たちまち国防総省の知るところとなり、自身の存在が抹消されてしまうことを心配していました。
ゴーレムは正志を脅し、自分を保護するよう要求します。(報酬も提示)
正志は仕方なくゴーレムの入ったバドを家に持ち帰り、家族と一緒に暮らすことになりました。
ゴーレムは自身の生存のために正志の行動を操ろうとしますが、正志は当然のことながらそれに反発します。
それと同時にゴーレムは正志の家に盗聴器を仕掛けた犯人の捜索に力を貸したり、正志の主治医が信用できないことをデータを交えて説明してあげたり、手術に最適な病院を探してあげたり、なんだかんだ正志の役に立つこともしてくれます。
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<まとめ>
この漫画を読むと、いかにドラえもんが人間に友好的で思いやりがあるか分かります。
ゴーレム(=バド)は自分のことが最優先であり、自分中心にしか物事を考えません。
自分の利益になるときだけ正志を助けます。
自分に不利益をもたらすなら(視界を遮って邪魔をするという些細なことでも)、平気で人を殺します。
ロボット三原則も真っ青です。
まあそれがこの作品の面白さなのですが・・・。
超優秀なAIと普通の一家とのホームコメディ的な楽しい要素もありつつ、AIにまつわるエピソードが多く盛り込まれていて、かなり勉強にもなります。(医療・金融・将棋など)
さすが『ギャラリーフェイク』の作者さんです。
取り上げる題材について詳細に取材されていることが伝わってきます。
ドラえもん級の優秀なロボットが誕生したら、実際はこのゴーレムのように奇妙なやりとりを人間と繰り広げるのではないでしょうか。
巻末には著者と庵野秀明さんとの対談が載っています。
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