【小説・SF】『魔法を召し上がれ』―マジックが理解できれば人間を理解できる
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『魔法を召し上がれ』瀬名秀明 / 講談社
⇧2019年5月16日発売。
<人工知能の意識と感情>
チューリング・テストをご存じでしょうか?
正体不明の相手が「人間なのか、人間の真似をした人工知能なのか」を判定する試験です。人間のフリをした人工知能が、それと気づかれなければ合格です。
(参加者は隔離された部屋で試験を実施し、音声だとバレるので文字を使って交信。)
色んな話題で話し合い、きちんと会話が成立するか、相手の話の意図を理解しているかを見極めます。
2014年に「13歳の少年」という設定で、チューリング・テストで初めて合格が出ました。
人工知能の「人間っぽさ」は日々、どんどん精度を上げてきています。
今ではスマホに語りかけるだけで、AIアシスタント・Siriが何でも応えてくれますし、ユーモアセンスも一般人を上回っており、人工知能がすごいことは誰もが知っている時代になりました。
チューリング・テストをしても人工知能だと見抜ける自信がありません。
一方で、人工知能が意識や感情を持つことができるのかはまだ謎です。
そもそも意識や感情をどう定義すればいいのかすら難しいのに、それをAIに移植するなんて出来るのでしょうか。
感情とは人間(や一部の生き物)だけが持つもので、無機物から作られたロボットが獲得できないものだという主張もあり、「他人が意識を持っている事をどうやって分かるのか」という哲学の問題もあり、「意識や感情」は人工知能における永遠のテーマとも言えます。
ドラえもんはロボット(人工知能搭載?)ですが、喜怒哀楽を明確に表現し、感情をもった存在として描かれています。
ドラえもんほどではないですが、この小説にも感情のようなものが芽生えつつあるロボットが登場します。
人間の子どもも小さい頃から様々な経験を通して複雑な感情を学んでいくように、AIも
ディープラーニング(深層学習)によって感情を獲得することができるのでしょうか。
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<あらすじ>
レストランで料理が来るまでの間、各テーブルを回ってお客さんにマジックを披露する、テーブルホッピングという仕事をしている主人公・ヒカル。
ある日、お客としてやってきたスゴ腕のマジシャンの前で、ヒカルは大失敗をやらかします。
彼はもう一度挽回のチャンスをくれるよう、そのマジシャンに再来店をお願いします。
後日再来店したマジシャンは、一人の少年を連れてきました。
その少年・ミチルはなんとロボットでした
マジシャンはヒカルの人柄を気に入り、ミチルを預けて去ってしまいます。
そして、ヒカルとミチルの共同生活が始まりました。
ヒカルはミチル相手にマジックの練習を重ねて腕を磨き、ミチルにもマジックを習得させようとします。
また、ヒカルは毎晩、ミチルに物語を朗読してあげます。
そうしてミチルは人間の「意識」について学習していきました。
ヒカルとミチルはますます仲良くなっていきましたが、突然ミチルはヒカルの前から姿を消してしまいました。
マジシャンの元へ戻ったわけでも、ミチルを製作した博士の元へ行ったわけでもないようです。
一体どこへ行ってしまったのか。
ミチルを探す旅が始まります。
ヒカルは高校時代に、同級生の美波という女の子と仲良くしていました。
しかし彼女はある日、ヒカルの目の前で自殺してしまいます。
ヒカルはそれ以来、ずっと美波のことが忘れられません。
ミチルの失踪は、どうやら美波の死と関係がありそうなことが分かってきました。
果たして美波の死の真相は?
ヒカルはミチルを見つけ出すことができるのでしょうか?
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<まとめ>
マジシャンとロボット(人工知能)を組み合わせるアイデアは斬新です。
そもそも我々は、なぜマジックを見て「不思議だ」と感じるのでしょうか。
人間は赤ちゃんの頃から世界をたくさん見て、物事の因果関係の原理原則を学習します。マジックはそういう思い込みを逆手に取るパフォーマンスです。
ボールを持ってハンカチかける➡ハンカチを取ると花束になっている➡予想を裏切る現象に驚く・・・というメカニズムです。
つまりロボットがマジックで人を驚かせるためには、何が常識的な現象で、何がそこから外れた現象なのかを理解できていなければいけません。
ロボットに常識は理解できるのでしょうか?
ロボットはマジックで驚くことが出来るのでしょうか?
ロボットはマジックで人を楽しませることが出来るのでしょうか?
もしそれができれば、ロボットは世界を理解したと言えるかもしれません。
小説を朗読してあげることで、人工知能は物語を学習していきます。
マジックにも物語があります。
物語を理解できるならマジックも理解できるでしょう。
マジックが理解できるということは、人間の意識を理解できるかもしれないということです。
この小説を読むと、ロボットが本当に意識をもった存在になる日は近いような気がしてきます。
夢のようでもあり、現実感もあるという不思議な物語です。
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