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【小説・文学】『そして、バトンは渡された』—友だち最優先主義を疑え【本屋大賞】

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ / 文藝春秋

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 ⇧2018年2月発売。(文庫化はまだです。)

 2019年の本屋大賞受賞作です。

 

<学生時代の友人>

例外はありますが、学生時代の友人一生の友達になることが多い一方で、

社会人になってからの友人はそうはならない(一時的なもので終わる)場合がほとんどです。

利害関係が絡んでいる時期かそうでないかが決め手なのでしょうか?

付き合うメリットを考え出すのは大人になってからだからでしょうか?

 

とはいえ学生時代にどんなときも友人を最優先に考えてしまうのは、視野が狭いと言わざるを得ません。

言葉だけ聞けば理想的で美しい響きを持っているように感じますが、困るのはこの価値観を押し付けられたときです。

どんな高邁な理想も、他人に強要した時点で醜悪になります。

タチが悪いのは、本人が自分の主張する価値観を正義だと信じて疑わず、それに理解を示せない人間を悪とみなし、非難すべき敵だと周りに吹聴する点です。

 

友だち最優先主義の人間は非常にやっかいで面倒くさいものです。

この小説の中で女子生徒たちはこう言います。

 

「普通、友達を優先しない?」

「友達って一番大事じゃないの?これくらいのことやってくれてもいいじゃん」

「友達がいのない奴っているよね」

 

これ以上気持ち悪いことがあるのかと思うほど、吐き気がするセリフです。

「友達」を強要する奴なんて友達じゃないと、大人になったら即座に言い返すことができますが、学生時代は教室内が世界のほとんど全てなわけで、この価値観が生徒の大半を占めている場合はその空気に負けてしまいそうになるでしょう。

 

学生時代の男子グループも女子グループもマウントの取り合いなので、「少数派=悪者、批判すべき対象」として扱われやすいものです。

そうなると嫌がらせを受けたりして、学校生活がなかなか大変なものになりがちです。

 

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<あらすじ>

主人公・森宮優子は高校生です。

彼女はこれまで母が1回、父が2回変わるという珍しい人生を歩んできました。

 

《詳細》

3歳のときに実の母が交通事故で亡くなり、小学校2年のときに父が再婚します。

小学校5年のときに離婚になり、継母と暮らすことになります。

中学1年のときに継母が再婚し、直後に継母が家出したので今度は義父と暮らします。

その後に戻って来た継母に連れられ、別の男性(森宮壮介)と再婚します。

 

苗字も「水戸」➡「田中」➡「泉ヶ原」➡「森宮」と変わっていきました。 

 

極端に貧しいときもあり、裕福なときも経験しました。

それぞれの転機で別れは悲しかったものの、どの親も優しく親切で、愛情をもって彼女を育ててくれました。

優子の小学校から高校卒業までの日々の暮らしと、ピアノの習い事、合唱コンクール、受験勉強、就職などの象徴的なイベントのエピソードが淡々と描かれていきます。

そして最後に、優子は結婚式を迎えました。

 

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<友だち幻想>

優子は友達をくだらないとは思っていませんし、教室で女子全員から無視され続けた期間は寂しさも感じていました。

しかし友達は大切だけれど、いつでも最優先に考えるべきだとは思っていません。

だから無視されてもそれほどショックを受けることなく、堪えることなく学校生活を送ることができていました。 

 

 周りのクラスメートたちは些細なことで悲しんだり怒ったりしています。

学校での人間関係が自分の世界の全てだと思って生きているからです。

優子だけは本当はそうではないことをすでに知っているし、実際に経験もしてきました。だから周りを見渡してみて「そんなに怒るほどのことなのか?」と疑問に思っています。

 

優子は親が変わることを何度も経験し、その都度なんとか乗り越えてきました。

親になった人達は皆優しかったので、彼女自身は苦労した記憶はないように書かれていますが、実際はそんなことはないでしょう。

 

ある日突然、「この人が新しいお父さん(お母さん)だよ」と紹介されても感情が追いつかないのは当然ですし、その人とうまくやっていけるか不安になるものです。

一緒に暮らすとなれば毎日緊張も伴いますし、それなりに気を使って生活することになります。

たとえ親切にされても元々は他人なわけなので、その真意を探ってしまうものです。

 

中学、高校時代に、見知らぬ大人と一つ屋根の下で暮らすことになったら、かなりの精神的ストレスがかかることは誰でも想像できることです。

慣れればそうでもないのでしょうけれど。

 

大抵の学生は親が頻繁に変わる経験などしないので、見知らぬ大人と急に一緒に暮らすことになる経験もしないでしょう。

優子は小さい頃からそういうことの連続だったのです。

つまり彼女にとって学校での人間関係など、人生のほんの一部でしかなかったのです。

 

友達と仲が悪くなることよりも、親が頻繁に変わることの方が人生の一大事でしょう。

 「友だち関係」を強要してくる奴よりも、世の中にはもっと目を向けるべき大切なことがあるのです。

 

(※ちなみにこの小説は優しい家族の物語です。血は繋がっていなくても深い愛情は生まれるし、子どもを育てることは負担でしかないわけでは決してないことが描かれている感動のストーリーです。)

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