【マンガ】『刑事ゆがみ』1巻―振り込め詐欺の実態
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『刑事ゆがみ』井浦秀夫 / 小学館
⇧2016年10月発売。
現在は6巻まで出ています。
2017年にドラマ化しています。(浅野忠信さん、神木隆之介さん他)
『弁護士のくず』と同じ著者です。
『弁護士のくず』でもそうでしたが、とにかくストーリーテリングが上手い作家さんです。
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<あらすじ>
昔は優秀な刑事だったが、今は不真面目に仕事をこなしている(ように見える)主人公・弓神(ゆがみ)。
ある日、住人ではない男がマンションの一室から転落死する事件が起きました。
死んだ男はかつて弓神が逮捕した泥棒でした。
警察はその元泥棒の男が再犯を企てたが、逃亡の際に足を滑らせて転落した事故死だと判断しました。
しかし弓神はその見解に納得がいかず、一人で捜査を進めます。
その元泥棒は取り調べの際、弓神に「もう二度と悪事は働かない」と誓っていたからです。
男の人柄や境遇からくる信念の強さを考慮すると、それは信じるに足るものだと弓神は思ったのです。
一方、他の刑事たちは振り込め詐欺の案件に手を取られて大忙し。
弓神は「特設された振り込め詐欺対策班に手伝いに行け」という指示にも従わず、すでに終わった転落事件を捜査し続けます。
やがて転落事故のあったマンションの一室が、振り込め詐欺の主犯のアジトである可能性が浮上してきました。
まったく別の事件かと思われたのが、一つに交差していく展開は見事です。
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<振り込め詐欺>
振り込め詐欺に関しては、
マンガ『ギャングース』(肥谷圭介・鈴木大介/講談社)にもその内部やシステムが描かれていましたが、この『刑事ゆがみ』にも細かく描かれています。
両者ともよく取材されているなと感心しました。
彼らが捕まらないようにどういう工夫をしているのかはもちろん、
前者では犯罪組織のスカウトから人材育成までの手法が描かれ、
後者では警察がどういう部分に手を焼いているかが描かれています。
振り込め詐欺が中々根絶できないのは、その捕まらないための方法論が見事に構築されているからです。
被害者から送金された口座からの現金引き出しも、「出し子」と呼ばれる者を使い、監視カメラに映るのは使い捨ての人材にやらせます。
その後の金の運搬も主犯格が実際に現場に受け取りに行くことはなく、事情を何も知らないホームレスなどを数人雇って「運び屋」として使います。
公園のトイレやコインロッカーを中継地として何人もバトンタッチして間に挟むことで、運び屋自体も警察の目を眩ませる効果があります。(女子トイレでバトンタッチしたら、男性の刑事には追跡できません。)
そして途中で「運び屋」の誰かが捕まっても事情を知らないので、主犯格まで捜査の手が届かないようになっています。
賢いですね。
最初の電話をかけることからすでに手口が巧妙です。
「オレだよ、オレ!」と言ってターゲット(老人)の孫になりすます役。
孫にチカンや車をぶつけられて怒りが収まらない架空の被害者役。
冷静に話を収めようとする弁護士役。
この3人がシナリオに基づいて切羽詰まった空気感を作り出すために、「今振り込んでもらえば、事を大きくしないで済む」と言われれば、ターゲットは冷静さを失って警察に相談する前にATMに駆け込むという寸法です。
まるで一流の俳優たちの演劇を見ているかのようです。
ターゲットのことは最初から、住所・氏名・年齢・性別・趣味・貯金額などが予め調べてある(そういうリストが裏社会では販売されている)ので、表面的な会話だけだと犯人の正体(本当の孫ではないこと)を見破れません。
用意周到すぎて怖いですね。
一時的なお金欲しさに使い捨てのコマになりたがる人間は大勢いるし、お金をため込んでいるターゲットの老人たちもまだまだいるので、捕まりにくいことを考えれば最強のビジネスモデルとも言えます。
安全に犯行を繰り返せるというのが、振り込め詐欺を根絶できない理由の一つなのです。
こういうマンガが普及して犯罪の手口が知れ渡り、少しでも被害者が減ればいいですね。
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