【小説・ミステリー】『そして誰も死ななかった』―バカげたホラーに見せかけた本格ミステリー
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『そして誰も死ななかった』白井智之 / KADOKAWA
⇧2019年9月30日発売。
ハードカバーです。文庫版はまだありません。
ホラーミステリーです 。
<著者の作風>
著者の白井智之さんの作風は、『人間の顔は食べづらい』や『少女を殺す100の方法』など、身も蓋もないスプラッターホラーと見せかけて、実は論理的なミステリーだったという展開が多いです。
◆『人間の顔は食べづらい』角川文庫 / 2017年8月発売
⇧食用クローン人間を生産する工場で働く主人公が、生首を商品として発送しようとした犯人として疑われます。
◆『少女を殺す100の方法』光文社 / 2018年1月発売
⇧5話収録の短編集です。
表題作は空から少女が降ってくるというファンタジーのような設定ですが、その中で起きた事件については論理的に解決されます。
これから紹介する『そして誰も死ななかった』も、科学的には起こるはずのないホラーな状況になった上で、そこで起きた事件の謎は本格ミステリー的手法によって解き明かされます。
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<あらすじ>
主人公は児童養護施設で育った21歳の青年・大亦牛男(おおまた うしお)。
5年前から日雇い仕事で食いつないできた彼に、ある日、弁護士から封書が届きました。
彼の父親が亡くなったため、遺産相続の権利が彼にもあるとの知らせです。
牛男の父・錫木帖は文化人類学者でした。
彼は生前、東南アジアやオセアニアの少数民族と生活を共にするフィールドワークを頻繁に行っていました。
それと同時に各地の売春街で貧しい女を買い、就労ビザを出させて日本へ連れ帰ってもいました。
牛男は、父がマレーシアから連れ帰った売春婦の二人目の子どもでした。
遺産相続権のある人間が多くいたため、一人あたりに相続される遺産はわずかなものになりました。
弁護士から通知が来てから半年後、牛男の元に遺品の入ったダンボール箱がたくさん届きます。
そこには本や学術書の他に、父親の研究を下地にした未発表の小説が入っていました。
小説が非常に面白かったので、牛男は自分名義で出版社に送りました。
その後、出版社に送った『奔拇島の惨劇』という小説は大ヒットになり、牛男は小説家としてデビューすることになりました。
ちょっとした有名人になって調子に乗っていた彼は、彼のファンだと名乗る綾巻晴夏という女と肉体関係を持ちました。
その数日後、晴夏はトラックに轢かれて死亡してしまいます。
それから10年後。
牛男は新しく作品を発表することなく、デリヘルの店長をしていました。
そんな彼の元に、天城菖蒲というベテラン作家から20周年記念パーティーの招待状が届きました。
どうやら何人もの推理作家に向けての企画のようです。
開催場所は、無人島(条島)にある天城の自宅です。
島に向かうためのフェリーがある港に集まったのは、牛男を含めた5人の推理作家たちでした。
フェリーは鯨に衝突するというドラブルに遭遇しつつ、なんとか条島に到着しました。
ところが天城邸には天城菖蒲も誰もおらず、代わりに牛男の父が研究していた奔拇族の「悪魔の泥人形」が5体置いてあるだけでした。
気味悪がる5人でしたが、帰りのフェリーの燃料が足りず、携帯も圏外でつながらないので、仕方なく天城邸に泊まることにしました。
その夜、5人は全員何者に殺害されてしまいます。
ところがその半日後、頭を釘で貫かれた牛男はなぜか生き返って目を覚ましました。
数時間後、他のメンバーたちも続々と生き返ってきます。
果たして5人を殺害した犯人は誰なのでしょうか。
なぜ殺されたのに生き返ってくるのでしょうか。
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<まとめ>
とんでもない設定のホラーに見せかけた本格ミステリーという形式は、著者の他の作品と変わりません。
今回はトリックが本格ミステリーと見せかけて「バカミス」になりかけ、「バカミス」というオチかと見せかけてやっぱり本格ミステリーという二重フェイントが仕掛けられています。
どちらであっても面白かったですが、「バカミス」で提唱されたトリックは、メチャクチャ過ぎるけれど、よく出来ていて笑えます。
※ちなみに「バカミス」とは、あまりにもバカらしい真相やトリックがオチのミステリーのことです。
(例:宇宙人がやって来て、未知の科学技術で全員殺害した等)
本格ミステリーのガチのファンは、こういう本に出会うと怒ります。
ただこの小説は「バカミス」で終わらないので安心して下さい。
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