【マンガ】『私の少年』―善意の手助けすら容易ではない社会
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『私の少年』高野ひと深 / 講談社
⇧1巻は2018年6月発売。
最新刊の7巻は、2019年11月6日に出ました。
4巻までは双葉社から出版されていましたが、講談社(週刊ヤングマガジン)に移籍してからは、既刊も5巻以降も講談社から出版されています。
『このマンガがすごい!2017』オトコ編第2位を獲得した漫画です。
<善意と犯罪>
夜の住宅街。
あなたの目の前で、一人の異性の未成年(小中学生)が困っていたとします。
その時、何も考えずに手をさしのべられるでしょうか。
同世代の人間なら問題ないかもしれませんが、大抵の大人は
「周囲の人に不審者だと思われたらどうしよう」とか、
「何の関係もない自分が出る幕じゃない」
などと考えてしまい、声をかけるのすら躊躇してしまうはずです。
昭和の日本は、しがらみの多い村社会でした。
そんな陰湿で過干渉な人間関係を嫌った人々は、都会を中心にあまり他人に干渉しない社会を作り上げてきました。
それと同時に「赤の他人が困っていても安易に口を出すべきじゃない」という風潮も生まれました。
無関係の大人が未成年に声をかけるのは犯罪につながる可能性があるとはいえ、他人に干渉すべきじゃないという現在の常識は、善意の手助けすら容易ではない社会にしてしまったわけです。
「冷たい世の中になった」と評価する人もいるでしょうが、多くの人々が願ったからそうなったのです。
法規制や監視の目はより厳しくなり、これからもさらにこの状況が強化されていくでしょう。
この漫画では、そんな世間から風当たりの強い、大人と子どもの微妙な人間関係を描いています。
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<あらすじ>
主人公はスポーツ用品メーカーに勤める30歳のOL・多和田聡子。
最近、彼女は毎朝の出勤で使うバス停から見える公園で、リフティングの練習をしている少年を目にしていました。
その少年のあまり上達していない様子が気になるのは、彼女が大学時代にフットサルサークルに入っていたからです。
聡子の職場には、大学で同じサークルメンバーだった元彼の椎川がいました。
聡子は彼が事あるごとに絡んでくるので、鬱陶しく思っていました。
それでストレスが溜まっていた彼女は、退社後、家の近くの公園でビールを飲むことにしました。
夜の公園には、毎朝見かける例の少年がいました。
少年の名前は早見真修。12歳の小学6年生です。
彼は朝と同じくリフティングの練習をしていました。
彼が所属するサッカークラブで、夏合宿前にレギュラーテストがあるからです。
「夜遅いし、お家の人が心配してるんじゃないの?」と聡子が聞いても、
「心配はしていないと思います」と真修は答えるだけでした。
その夜は二人はそれで別れましたが、翌日の夜にその公園を聡子が通りががったとき、真修は見知らぬ男に腕をつかまれていました。
聡子が声をかけたところ、男はすぐに走り去っていきました。
彼女は真修に「知らない大人には気を付けろ」と注意し、夜遅くに公園で練習することを禁止しました。
しかし真修は「家で練習したら怒られるし、来週の金曜日が本番だから・・」と納得でいないようです。
仕方なく聡子は「明日からここで練習していいのは私がいるときだけ」と言い、毎晩19時に駅前に集合することに決めました。
翌日の夜から、二人のサッカー練習が始まりました。
二人は徐々に親しくなっていきます。
その中で、真修には母親がおらず、弟が一人いることが判明します。
どうやら真修はまともな食事をしていないために痩せており、彼の父親があまり子どもの養育に熱心ではないことも分かってきました。
聡子は出しゃばり過ぎだと自覚しつつも、目の前の真修が不幸になってほしくない一心で、何かと世話を焼き始めます。
一方、真修はサッカーが上手くなりたい以上に、聡子に会いたいという理由で聡子の元に通うようになっていきます。
やがて、そういった第三者から見れば邪推されかねない状況を、真修の父親や聡子の職場の上司に知られることになります。
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<まとめ>
30歳のOLと12歳の小学生の少年とが心通わせる物語なのですが、設定だけを聞くと小児性愛と結びつけられかねない繊細なテーマです。
作品内では、善意の手助けが誤解を生んでしまう展開が描かれています。
どんな説明をしたところで、第三者から見れば、その年齢差の無関係な人間が二人きりでいることは「異常なこと」だと捉えられるわけです。
哀しく切ないストーリーです。
「母性」や「恋愛」といったありふれた言葉では説明できない感情が、この世にはあるのです。
明らかに女性漫画誌に載っていそうな作品なのに、バリバリの青年漫画誌のヤングマガジンで連載されているのが異質です。
これまでにない読者層を開拓しようとしているのでしょう。
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