【小説・ミステリー】『そしてミランダを殺す』―サイコパスな女同士の対決!
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン / 訳:務台夏子 / 東京創元社
⇧2018年2月発売。文庫版です。
『このミステリーがすごい!2019』海外編第2位!
翻訳は『クリスマスに少女は還る』でもおなじみの務台夏子さんです。
(つまり翻訳のクオリティは心配無用)
⇧1999年発売(文庫版)
読み終えた後にタイトルの意味を考えると感動します。
<浮気をする者には死を>
あなたは「浮気する奴なんて死んだらいいのに」と思ったことはありますか?
これまでに付き合った人数を自慢しているような人は思わないかもしれませんが、
真剣に恋愛している人なら、そう考えてしまうことが多いのではないでしょうか。
とくに相手に裏切られた場合はなおさらです。
実際に浮気が発覚して修羅場となり、刃傷沙汰になる事例もあります。
しかし殺してしまうまでいくことはまれでしょう。
この小説の主人公は、浮気相手を罰するために本気で殺そうと考え、実行します。
そしてその自分の行為には正当性があると考えます。
殺人を実践した自分が悪いとは一ミリも思わず、悪いのは浮気をしたり人を裏切ったりする人間だという信念で行動しています。
「人はいずれ死ぬのだから、私がそれを少し早めても大した問題ではない。他人に害を与えるような人間はこの世から消えてもらった方がいい」ということです。
あとがきの解説には
頭の回転が速く、殺人に恐怖という感情をほとんど持たない主人公を、ソシオパス(社会病質者)・サイコパス(精神病質者)の傾向があると書かれています。
そう、この小説に登場する主要人物たちは皆、共感できる部分もありつつもどこかネジが外れているのです。
これは恋愛サスペンスと見せかけた、サイコパス同士が対決するミステリーなのです。
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<あらすじ>
事業が成功した大金持ちの男・テッド。
彼は空港での飛行機の待ち時間に、見知らぬ女・リリーと出会います。
仲良くなった二人は出発した機内で秘密を話し合います。
実はテッドの妻・ミランダが浮気をしていて、テッドが殺したいほど妻を憎んでいることも告白します。
半ば冗談のつもりで言った言葉でしたが、リリーは「そんな女は殺されて当然だ」と言い、協力を申し出ます。
リリーの言葉に乗せられたテッドはミランダの殺害を計画し始めますが、先にミランダの浮気相手に殺されてしまいます。
実はミランダも夫のテッドを殺害しようと計画しており、浮気相手に協力させたのです。リリーは友人のテッドの敵討ちのために、ミランダとその浮気相手を殺害しようと行動を開始しました。
初めはリリーのことを知りようもなかったミランダでしたが、テッドの死の直前の奇怪な行動からリリーの存在にたどり着きます。
お互いが相手を殺すための計画を進めていき、準備が整い、いよいよ対決の時がやってきました。
果たしてどちらが生き残るのでしょうか。
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<まとめ>
第一部では単なる男女のいざこざ、つまり浮気の証拠を集めて殺害計画を進めるという凡庸な展開でしたが、第二部から一気に女同士の戦いが加速します。
実はリリーとミランダは過去に同じ男を恋人にしていたという因縁があり、
リリーはミランダを憎んでいたのです。
リリーが空港でテッドと出会ったのは偶然ですが、そこからの展開はすべて計画されたものでした。
リリーもミランダも、殺害するという行為そのものには恐怖を感じていません
いかに警察に捕まらないようにするかに細心の注意を払っています。
アリバイを用意したり、実行犯を他人にやらせたり、警察に疑われても自然な言い訳を使って動揺していることを悟らせません。
最終的には警察に捕まるのか、捕まらずに逃げ切れるのかが物語の焦点になり、最後のオチにつながります。
ラスト1ページの皮肉な終わらせ方は見事でした。
終盤で二転三転させて、ラスト数行でさらにどんでん返しするというのが最近のミステリーの流行なのかもしれません。
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