【小説・ミステリー】『国語教師』―物語の競作で相手の真意を探れ!【このミステリーがすごい2020・10位】
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『国語教師』ユーディト・W・タシュラー / 訳:浅井晶子 / 集英社
⇧2019年5月24日発売
『このミステリーがすごい!2020年版』の海外編・第10位を獲得しました。
<競作と共作>
「 競作」という行為をご存知でしょうか。
芸術全般に通用する考え方で、テーマに沿って数人が競って作品をつくることです。
音楽、絵画、写真、映画などで行われています。
もちろん、小説においても「 競作」は行われます。
プロの作家たちが編集者に依頼されたテーマで書いた物語を、一冊にまとめた本が世の中には多くあります。
あるいは腕に覚えのあるアマチュア作家同士が集まって、完成品や途中経過を見せ合って、お互いの作品について批評したりすることもあります。
また「交互に少しずつ自分の作品を作りながら相手に語っていく」というやり方も、広い意味で競作といえます。
一方、一つの作品を二人で一緒に作る「共作」という形態もあります。
二人がそれぞれアイデアを出し合って議論している内は楽しいものですが、いざ出版する段階になると、「どちらの名義で出すか」とか、「作品の完成にどちらがより貢献したか」とかでモメたりします。
この小説では、「競作」も「共作」も行われます。
作品づくりが目的なのではなく、それらが主人公たちの長年のコミュニケーション手段の一つなのです。
この作品は、競作によって相手の真意を探っていくミステリーです。
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<あらすじ>
主人公は、ギムナジウムに勤める国語教師のマティルダ。
(※ギムナジウムとは、ドイツなどの7年制または9年制の大学進学を前提とした中等教育機関のことです。)
マティルダはある日、有名作家である元恋人のクサヴァーからメールを受け取りました。
マティルダのいる学校で開催される創作ワークショップに、彼がゲスト講師として派遣されることになったという知らせです。
マティルダとクサヴァーは、大学時代で出会いました。
その当時から、クサヴァーは作家を目指していました。
大学を卒業してからは、二人は結婚して一緒に暮らすようになります。
マティルダが国語教師として働いてお金を稼ぐ一方で、クサヴァーは本を出しても全く売れずに悩んでいました。
ある日、マティルダは子どもたちの作文からヒントを得て、児童文学を書いてみるようクサヴァーに勧めました。
初めは乗り気ではなかったクサヴァーでしたが、マティルダの熱意に負けて共同でアイデアを出し合い、一つの作品を書き上げました。
なんとそれが大ヒットし、彼は一躍人気作家となりました。
ところがある日突然、クサヴァーはマティルダのもとから姿を消しました。
彼がいなくなった理由が分からないマティルダは、長年苦しむことになりました。
しばらく後になって、マティルダは雑誌でクサヴァーがセレブの娘と結婚して、子どもも生まれていることを知りました。
さらにその後、その子どもが誘拐されて、行方が分からないまま現在に至ります。
クサヴァーがいなくなってから16年間が経過し、二人は創作ワークショップのために再会を果たしました。
マティルダはずっと聞きたかったあれこれをクサヴァーに質問しますが、彼は過去を無理やり美化したり、自分に都合の悪い話題は避けたりして、肝心な答えははぐらかそうとします。
やがて二人は昔やっていたように、少しずつ物語を創作して、交互に相手に聞かせるゲームを始めました。
クサヴァーが語るのは、彼の祖父の人生を題材とした話です。
マティルダが語るのは、少年を連れ去って軟禁する女の話です。
一見なんでもない遊びのようですが、
実はクサヴァーの話には自分の過去を正当化しようという意図があり、
マティルダの話には彼を精神的に揺さぶり、過去にあった出来事の彼の真意を探ろうとする目的がありました。
果たして、マティルダのもとを去ったクサヴァーの身に、何が起きたのでしょうか。
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<まとめ>
過去に結婚していた二人が別れ、16年ぶりに再会します。
別れは夫の突然の失踪という形で訪れたため、妻のマティルダは長年事情が分からずに苦しんでいました。
再会後に元夫を問い詰めても、中々真相を話そうとしません。
この小説は、別れから再会までの16年間に、一体クサヴァーに何が起きたのかを探るミステリーです。
登場人物は少なく、ほとんどマティルダとクサヴァーのやりとりだけで物語は進みます。
海外小説を読んでいると人物の名前が覚えられなくて混乱するものですが、この小説にはそれがないので非常に読みやすいです。
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