【マンガ】『ひとりぼっち』—マンガを芸術たらしめる作品
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ひとりぼっち』クリストフ・シャブテ / 訳:中里修作 / 国書刊行会
⇧2010年12月発売。
(まだ絶版になっていないので、新品を入手可能です)
1冊で完結です。
短編マンガというより、1冊の長編小説と捉えた方が感覚的には近いかもしれません。
<海外のマンガ>
外国にもマンガがあることをご存知でしょうか?
日本には数多くのマンガが存在するので、わざわざ海外にまで目を向ける人はマンガ好きの方でも少ないのではないかと思います。
そもそも翻訳されて日本で出版されている数が相対的に少ないことも、注目されにくい原因の一つです。
日本のマンガが多すぎると言った方がいいかもしれません。
翻訳という作業が必要なことや、サイズが大きくフルカラーなものも多いことから
日本のコミックよりも値段が高めになっています。
サイズも日本のコミックよりも大きめのものが多く、
この「ひとりぼっち」もジャンプなどのマンガ雑誌と同じ大きさです。
本の表紙と裏も日本とは逆です。
日本のマンガは右開きですが、海外では文章が横書きのために左開きになっています。
吹き出しの中のセリフも、日本は縦書きですが、海外のマンガは横書きです。
アメリカの「アメコミ」やフランス語圏の「バンド・デシネ」を始めとして、
韓国やタイやベトナムといった国でもさかんに漫画が描かれています。
この『ひとりぼっち』は「バンド・デシネ」です。
「バンド・デシネ」とは、
フランス・ベルギー・スイスなどフランス語圏で読まれるマンガの総称です。
「バンド・デシネ」は他の国のマンガよりも芸術性に重きを置いている特徴があります。
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<娯楽か芸術か>
マンガは「娯楽」か「芸術」か。
・・という議論が『バクマン』(小畑健・大場つぐみ)の中で交わされてましたね。
主人公の真城は、
「芸術でもある作品を描くことができればそれは素晴らしいけれど、
今の自分たちにはそこまでの実力がないから、今出来ることを全力でやるしかない。
どちらを目指すかは人それぞれなんだ」という結論を出していました。
この『ひとりぼっち』というマンガは芸術の要素が高いです。
だからといって娯楽要素がないわけではありません。
日本のマンガを娯楽性90%、芸術性10%だとすると
このマンガは娯楽性30%、芸術性70%くらいです。
著者はフランスの作家さんですが、フランスのお国柄(?)もあってか芸術志向が強いです。
絵も抜群に上手いし、日本人作家には見られない画風です。
絵が上手いからこそ、セリフが少なくても最強に説得力があります。
たまに芸術性を重視した同人誌作品や一部のマンガに対して、
「絵は上手いのに物語性がないからキツい」という評価を目にします。
その読者が狭量なのか、ないものねだりなのか、
波乱万丈で起伏のある、オチとカタルシスが用意されたストーリーを「物語性がある」と思い込んでいるのか分かりませんが、もう少し寛容な心を持って読んでもらいたいものです。
しかしこの作品は、芸術性の割合を高めつつも、変化のあるストーリーも文学性もバッチリ詰め込まれていて、文句の言いようがありません。
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<あらすじ>
ある島の灯台で独りひっそりと生きている男の話です。
彼は陸を知らず、生活物資は週1回水夫が届けてくれるもののみ。
一番の楽しみは無作為に開いたページを指差し、そこに記載されている単語からイメージを羽ばたかせる「辞書遊び」。
男は辞書の説明文を読むことができる理解力を持ってはいますが、実物を見たことがないために、めちゃくちゃなイメージを膨らませます。
たとえばオーボエやホルン、交響曲は変な形の楽器ばかりで笑えます。
実物を知らなければ、辞書の説明文がいかに曖昧で想像の余地だらけかということに読者は気付かされます。
彼がなぜそんな生活を送ることになったのか詳しい説明はされません。
日本のマンガならば必ずといっていいほど、人物の過去が描かれますが、
このマンガにとって、主人公の生い立ちなど些細なことだと言わんばかりに描写はカットされています。
彼は孤独に苦しんでいるわけでも、悲しんでいるわけでもありません。
毎日そこそこ楽しそうです。
物資を届けてくれる新人の水夫の計らいにより、男が独りだけで完結していた閉じた世界が徐々に変わり始めることになりました。
<まとめ>
1冊の文学作品を読み終えたような静かで切ない読後感です。
日本のマンガに少し飽きてきたけど、アメリカンコミックのようなマッチョなのを代替物として読む気にはならない方にオススメです。
世界にはこんな作家、作品が存在するのかと驚かれると思います。
自分がいかに日本のマンガに慣れ過ぎていたのかも実感できます。
なにより、マンガの可能性を感じられます。
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