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【マンガ】『HUNTER×HUNTER』(36巻)—幻影旅団(゚∀゚)キタコレ!!

『HUNTER×HUNTER』冨樫義博 / 集英社

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王位継承戦だけでも死ぬほど複雑なのに、とうとう幻影旅団まで絡んでくる事態になりました。過去最高にややこしい勢力図・利害関係。

少年ジャンプなのに、もはや幼い少年読者を振るい落とそうとしているのでは?

自分が小学生なら付いて行ける自信がありません。

『ONE PIECE』で海軍VS白ひげの頂上決戦時、ルフィが戦った強敵たちが大集合しましたが、そんな感じになりつつありますね。

一つの船の中に、クラピカとレオリオをはじめ、十二干んのメンバー、ヒソカ、幻影旅団。さらにここにジンやパリストンチームも加わる。

参加してないのはゴンとキルアだけ。

 

これだけのメンバーが新大陸に到着したら(その前にぶつかったら)多くの脱落者(死亡者)が出るでしょう。船内はもう大混乱に陥ること必至です。

読者的にはワクワクしかしない展開ですが・・・

これはちゃんと話を収束できるのでしょうか?

伏線がありすぎて冨樫氏の描く気力が萎えてしまうことが懸念されます。

35巻から36巻までの刊行ペースは、過去を鑑みると早い方ですが、これが続くとは思えません。なんとか今のペースで頑張っていただきたい。

お願いします。まじで。

 

この巻では幻影旅団ファンのキャラが登場します。

あなたの気持ちは非常によく分かります。

サイン欲しいですよね。

 

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【マンガ】『オフサイドを教えて』—オフサイドを説明できますか?

『オフサイドを教えて』西尾維新・中山敦支 / 集英社

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西尾維新原作の短編集『大斬  -オオギリ-』に収録。

この短編集では全話原作を西尾維新氏が務め、作画がジャンプ連載陣という豪華極まりない企画本です。

作画担当作家は中山敦支、暁月あきら、小畑健、池田晃久、河下水希ほか4名。

 

一番印象に残ったのは『オフサイドを教えて』でした。

これは原作と作画担当者のそれぞれの特性が完璧な融合を果たし、相乗効果を発揮させた作品です。おそらく他の作画担当者だとここまでのものにならない。

(それはその他の作品にも言えることで、西尾維新氏がそれぞれの作画担当者の作風に合わせた原作を提供したからこそ、個々の作品がそれぞれの輝きを持つことに成功しているわけです。作画に合わせた原作づくりって恐るべきセンスですよね。)

 

タイトル通り、サッカーのことを何も知らない少女が、元サッカー部だった少年にオフサイドについて教わるストーリーです。

サッカーの初心者はもちろん、中級レベルの方でも

「なぜオフサイドが生まれたのか」をきちんと説明できないのではないでしょうか。

僕も御多分に漏れず、1ミリも説明できません。

 

このマンガでは分かりやすく丁寧に、多くの疑問点とともに解説してくれます。

同時になぜ少女はそこまでしてオフサイドを知りたいのかが後半に分かります。

 

中山敦支氏の容赦のない迫力ある作画が物語に緩急と起伏を与えています。

短編として非の打ちどころがありません。完璧です。

 

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【エッセイ】『侏儒の言葉』―芥川流ツイート集

『侏儒の言葉』芥川龍之介 / 岩波書店

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マンガ『ナナマルサンバツ』に出てきたので読んで見ました。

小説ではありません。

 

芥川龍之介が現代に生きていてTwitterをやっていたら、

おそらくこんなツイートが書かれていたのではないか。

そんな箴言集です。

 

本当に一つ一つに脈絡がなく、思いついた順に?つぶやきが書かれています。

 そのうちのいくつかを紹介します。

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人生は一箱のマッチに似ている。

重大に扱うのは馬鹿々々しい。重大に扱わなければ危険である。

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上手いこと言いますねぇ~。

僕は昔の人の名言を集めるのが好きなので、この本の存在を知れたことは嬉しいです。

最近マッチ箱自体を見かけませんが、まだあるのでしょうか?

マッチってまだ販売されているのでしょうか?

タバコを吸っている人は嫌ですが、タバコに火を着ける仕草はライターではなくマッチの方がカッコイイと感じるのは僕だけでしょうか。

 

他にはこんなのもありました。

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軍人は小児に近いものである。

機械的訓練を貴んだり、動物的勇気を重んじたりするのも小学校にのみ見得る現象である。殺戮を何とも思わぬなどは一層小児と選ぶところはない。

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35歳で亡くなったので第二次世界大戦時はすでに他界されていましたが、

日露戦争などはドンピシャの世代でしょう。

身近なところに戦争があった。

けれど軍人は嫌いだったようですね。

 

あとはこういうものも。

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大作を傑作と混同するものは確かに鑑賞上の物質主義である。

大作は手間賃の問題に過ぎない。

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何か気に入らない他者の作品が念頭にあったのでしょうか。

たしかに芥川作品というのは名作は多くありますが、大作はないイメージです。

こだわりがあったのでしょうか。

 

他にも無数の箴言があります。

適当にページを開いたところから気軽に読めるので、芥川作品と聞いて尻込みしてしまう方には入門編としてオススメですよ。

 

【哲学・思想】『リヴァイアサン』―社会契約による国家の成立

『リヴァイアサン』トマス・ホッブズ / 訳:角田安正 / 光文社

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岩波書店からも出ていますが、古そうなので新訳の光文社版を買いました。

 

中学のときにうっすら習った記憶があったのですが、小説だと思ってました。

リヴァイアサンというのは旧約聖書に出てくる海の怪物だそうです。

国家というものをリヴァイアサンに例えたものである。

・・というのが作品の事前知識としてありました。

 

ですので、リヴァイアサンというのはゴジラ的なストーリーなのかなと思っていました。(海からザバーっと登場し、人々を恐怖させ街を蹂躙する。)

姿としては『ワンパンマン』の深海王をイメージしてました。

 

なんと1ミリも小説ではありませんでした。

完全に自分の思い込みに騙されました。

 

13章くらいまでは、著者が鼻糞でもほじりながら書いてるのかと思えるような雑で粗い理屈の文章でしたが、急にエンジンがかかります。

14章の自然権の説明から難易度が上がって面くらいました。

「もう前半部分いらないのでは?」とすら思っていました。

現代中学生にも失笑されるレベルの理屈しか書かれていないからです。

「いくら偉大な著作として現在まで読み継がれてこようと、所詮は400年前の古臭い理屈に過ぎないな。馬鹿馬鹿しい。」と完全にナメ切っていた頃に、

いきなりアクセルを踏み込まれた感じです。

最初から本気出して書けよ!

 

人間は何も制約が無い(「自然状態」と呼ばれる)と争い合う存在である。

自然状態のままだと「万人の万人に対する闘争状態」から抜け出せない。

それは平和や生産活動を妨げるので社会が成り立たないし、進歩しない。

人間は生まれ持って自分の好きなように生きる「自然権」を持っている。

しかし皆が自然権を全開で発動させたら闘争状態になる。(権利同士がぶつかる。)

「社会契約」によって社会を組織し機能させるために、社会の中で生活するのであればある程度自然権を放棄しなければならない。

社会契約を皆に遵守させようとすれば、強大な権力が必要だ。

契約を破る者には、不正によって得られる利益と比べたら割に合わない罰を与え、社会の中で生活するには契約を履行する方が誰にとってもお得だと思わせられる存在――

つまり国家が必要だ。

 

・・・という内容でした。

2018年に生きる我々からすれば、当たり前のことを言っているように聞こえます。

こんなことをわざわざ本として出版しないといけない程、当時のイギリスは混乱していたのでしょうか?

この本が賞賛されて受け入れられる程、当時の世界情勢はグチャグチャだったのでしょうか?

 

「タイムマシンがあったら過去に行ってみたい」とよく言われますが、

こんな基本的な概念さえ一般に浸透していない時代なんて怖くて行きたくないです。

現代に生まれてよかった~!

 

【マンガ】『全能のノア』全3巻―文句なしの最高のSFマンガ!

『全能のノア』小野洋一郎  / 新潮社

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キレがあってスタイリッシュ。

スピード感もあって絵が上手い。

見事なストーリー構成とテーマの融合。

キャラクターの豊富さと設定の美しさ。

あらゆる点で満点の、最高のSFマンガ。

ここまで綺麗にまとまっていることは、連載マンガにおいて奇蹟に近い。

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 2038年。東京都心で100万人の同時多発記憶障害が起きた。

原因不明で治療方法も確立できない。

感染症の可能性を考慮して、彼らは東京の地下都市に収容された。

言葉以外の全ての記憶が無くなった彼らは、性別年齢は違えど同じ学校施設で教育を受ける毎日を送っていた。

ある日その地下都市に侵入され、爆破テロが実行される。

 テロリストは警察に追われる途中で、主人公の王生ノアと出会う。

テロリストは「王生ノアこそが2年前の同時記憶障害事件の真犯人である」ことを告げる。ノアが「特殊な電磁波が降り注いで脳細胞にダメージを与える記憶を奪う爆弾」を作ったというのだ。

しかしノア本人は記憶が失われているので、その製作方法や治療法は分からない。

 

ノアはなぜそんな爆弾を作ったのか。

はたして皆は記憶を取り戻せるのか。

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 3巻のラストで衝撃の事実が明かされます。

最後のページの切ないこと。

 

人は記憶を失った方が幸せに生きられるのではないか。

壮大な実験だったわけですが、他人の記憶を制御できるというのはとてつもなく強大な権力と同じなんですね。

 

3巻で完結してしまったのは寂しいですが

無駄のない構成で、最高に満足しています。

 

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【マンガ】『シュトヘル』(1-5巻)―文字を守ることは 全てを守ること

『シュトヘル』伊藤悠 / 小学館

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現在、世界では7000の言語が使われているそうです。

しかし2週間に1つのペースで消滅していっているらしく、7000の内の半分は今世紀中に無くなるという予測があります。

 

西夏文字も消滅した言語の一つ。

 

このマンガでは西夏文字を守ろうと奮闘する少年の姿が描かれています。

復讐だったり戦争だったりいろんなことが描かれていますが、このマンガで僕が注目してしまうのはやはり西夏文字を含む「言語の絶滅」問題です。

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13世紀初頭。

史上最強のモンゴル軍に「悪霊」と恐れられた女戦士がいた。

彼女の名はシュトヘル。

 

蒙古に属するツォグ族の皇子ユルールは、敵国であり亡き義母の出身国である西夏の文字に魅せられた。

その義母が残した“玉音同”と呼ばれる文字盤を手に一族を捨てる覚悟を決める。

西夏を憎み全てを焼き尽くす蒙古から文字を守るため、シュトヘルと共に防衛戦に身を投じる。

彼女と、一族を敵に回したモンゴルの皇子の壮大な物語。

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なぜ西夏文字を滅ぼそうとするのか。

それはツォグ族の長であるユルールの父が、かつて西夏の奴隷だったからだ。

奴隷の証として背中に大きな焼き印を押されて、一生消えない屈辱の痕跡が残された。

背中を見られたら奴隷であった過去が周囲にバレるし、その跡を見るたびに憎悪が蘇ってくる。

もしも西夏文字がこの世から消えたら、背中の文字を読める人間はいなくなり、奴隷であったことも分からなくなる。(本人以外は)

 

一つの国家とともに、文字まで消滅させようとする理由としてはこの上なく納得できます。史実なのかどうかは知りませんが、これ以上の強い動機は有り得ないでしょう。

 

文字が世界から消えるということは、その文化、歴史、記録、記憶がすべて消滅するということ。これほどの哀しみってあるのでしょうか。

全部がなくなるってことは誰も憶えてないってこと。

自分が生きたという証、大切な人がいた形跡、あらゆる思い出、苦労して打ち建てた業績、崇高な理念、教訓、学問、技術、芸術、文化、歴史の消滅。

なんという虚しさでしょうか。

文化の虐殺は大罪だと思います。

 

バベルの塔が破壊されて、人々が意思疎通できなくなるように世界には多くの言語が生まれたと旧約聖書ではいわれます。

でも世界にたった一つしか言語がなかったらなんと画一的でつまらないことか。

 

多様性があるということが、豊かであるということだと僕は考えています。

 言語の消滅を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

自分が勉強してそれを実際に使うしかない?

英語なんて別に使えなくていいのだ。

Googleが翻訳してくれるのだから。

 

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【マンガ】『ゴールデンゴールド』(1-3巻)—どうにも説明できない怖さと面白さ

『ゴールデンゴールド』堀尾省太/ 講談社

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変なタイトルである。

それ以上に奇妙なのはストーリーである。

面白いのに、人にその面白さを伝えようとしても1ミリも伝わらない。

たぶん初読の方の感想の多くが「何これ?!」でしょう。

説明が難しすぎるという一点で誰もが共感していただけるはず。 

 

マンガは基本的にある程度ジャンル分けができます。

(ジャンルが予め想像できているからこそ、多少安心して読者は1巻を買ってみようという気になれるともいえます。)

しかしこのマンガはジャンル分けできません。

ギャグなのか、サスペンスなのか、ミステリーなのか、SFなのか、ホラーなのか・・

すべてを含んでいるようで、不定形で捉えにくく、フワッとしているようでどこか重い「世にも奇妙な物語」にありそうな話。 

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 ある島で暮らす中学2年の少女・琉花。

彼女はある日、海岸で奇妙な木像?を拾う。不思議と求心力のある像だ。

小さな祭壇に置いて日頃のささいな願望をその像に向けて祈ってみる。

 帰宅時にその像がドラえもんサイズくらいに巨大化し、琉花の後を付いてくる。

事態が呑み込めずに恐怖した彼女はなんとか振り切って逃げる。

しかしその像は家まで追ってきて居付いてしまう。

叔母の家(民宿経営)に住まわせてもらっていたのだが、だれもその像が動いている姿に違和感を抱かずに受け入れて対応している。

なぜ誰も変に思わないのか。

廃棄したり追い出したと思ってもいつの間にか家に戻っている。

 叔母はその像をフクノカミと呼び、家の中に仏壇まで設置して祀り上げる。

フクノカミが居付いてから、やたらと民宿が繁盛しだす。

叔母はお金儲けの欲望が増幅されて、自分の妨害をする人間には容赦しなくなる。

フクノカミが関与した事柄・人達のもとにはお金が集まり、それ以外の人達は徐々にお金が入らなくなる。

この島は一体どうなってしまうのか。

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フクノカミに完全にマインドコントロールされているわけではなく、お金に対する欲望だけが増幅されてしまう状態。

冷静さや優しさといった感情は残っていて、日常生活もほとんど変わらず送っているはずなのに、フクノカミに憑りつかれた家は富み栄え、それ以外を滅ぼしてしまうように社会コミュニティの中では全体としてそういう流れで動いていってしまう。

 

少女一人の力ではとうてい堰き止められない大きな流れ。

個人個人を説得したり止めたりしても全体としての流れは変わらない。

どうしたらいいのか分からない恐怖。

琉花自身の願望も叶えてもらっていくわけだが、単純に喜べない。

言いようのない不安感。

元の島に戻ってほしいけど、そうなったら片思いの少年は島を出ていってしまう。

(フクノカミの働きかけ?によって少年は島を出なくてもいいかという気になってきている。)

 

『幽遊白書』の蟲寄市を思い出しました。(仙水編)

人々はいつも通りの生活をしているのに、魔界の瘴気が境界トンネルから漏れ出して、町の人々がだんだん変わっていくような怖さ。

 

先の展開もゴールも全く予測できない奇妙すぎるマンガです。

面白いのに刊行ペースが遅いのが難点です。

 

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【マンガ】『二月の勝者』(1-2巻)―ホラーより怖い受験戦争

『二月の勝者』高瀬志帆 / 小学館

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一部の子どもは「早く大人になりたい」と願い、

一部の大人は「子どもに戻りたい」と願うものです。

僕はどちらでもありませんでした。

大人になった今「学生時代に戻りたい」と1ミリも思わないのは受験があるからです。

受験というイベントが死ぬほど嫌でした。

 

このマンガは「受験マンガ」です。

「受験マンガ」といえば『ドラゴン桜』(作:三田紀房)が有名ですが、このマンガとは対象読者(作者や編集部が想定しているメインターゲット層)が違います。

『ドラゴン桜』が受験生本人たちに向けてのもの。

『二月の勝者』は受験生の子どもをもつ親に向けてのものです。

前者は大学受験、後者は中学受験です。

このマンガでは受験のための学習塾業界の裏事情が詳細に描かれています。

 

冒頭の3ページですべてを物語っています。

 

「自分は天才とでも思っているのか?

君たちが合格できたのは、父親の「経済力」、そして母親の「狂気」

 

超久しぶりにマンガを読んでいてゾッとしました。

確かにその通りなんですが、改めて言葉にされるとメチャクチャ怖いですよね。

中学受験というのは現代社会の狂気的ホラーなんだと思います。

 

韓国は日本よりもさらに厳しい受験戦争だと聞いたことがありますし、

中国では大学受験は一発勝負で、その1回で人生が決まるらしいです。

プレッシャーとストレスが半端じゃない。

日本では落ちても浪人すればいいからまだマシなのでしょうか?

 

受験というシステムを取り入れてる国ではどこも似たようなものなのかもしれません。

逆に、受験という概念がない社会や国家では若者はどうやって過ごしているのでしょうか。小さい頃から受験に専念しなくていいから、青春時代をぜんぶ遊ぶことに使えるのでしょうか。そういうわけでもないでしょう。内戦だったり、貧困だったり、子供の頃から労働力として社会に組み込まれていたり、色んな苦労があるはずです。

 

受験というシステムを無くせばOKなのかといえば、それもまたそういうわけにはいかないでしょう。

そもそも受験というのはなぜ生まれたのか。

受験というのはつまり、「学問で身を立てれば出世できる」という成功(成り上がり)への道として開設された唯一のルートだったはず。

それまでは身分制度でガチガチに固められて、選択できる職業や結婚相手も限定されていたわけで、人生の自由度を上げるためには勉強していい学校に入るしかなかった。

でもそれは初期の話であって、現在では職業選択はほぼ自由です。

自由に生きるためにそこまで「学歴」が重要なわけではなくなったし、人生を保障してくれるものでもなくなりました。(学歴があった方が有利かも、という程度)

 

ではなぜ小学生から受験しないといけないのか。

その理由の一端がマンガ内で示されています。

 

本当に自分が今現在小学生でなくてよかった。

受験生の方はこのマンガを読まない方が精神衛生上よいかもしれません。

 

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【マンガ】『アヴァルト』(1-2巻)―世界観の設定が天才的に上手い

『アヴァルト』光永康則 / 講談社

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 ある日、宇宙飛行士?の主人公・ロイドは冷凍睡眠から目が覚めた。

宇宙船内には仲間の乗組員の姿はなく、一人がミイラ化状態になっているのを発見する。ミイラの乗組員はゲームをやりながら死んでしまったように見える。彼の座っていた座席のモニターにはゲームサーバが1万年稼働しているログが残っていた。

(ロイドは1万年冷凍睡眠していたようだ。)

地球に交信を試みるも返答はなし。

地表の様子を観察したところ、人類が死滅したわけではなさそうだがその数は激減し、後退したわずかな文明を残して細々と生き延びている状況のようだ。

1万年間稼働していたゲーム(RPG)のマップと地表の配置が一致したことから、地球と自分に何が起きたのかを知る鍵はゲームにあると推測し、ロイドは過去に使っていた自分のアバターを使ってゲームにログインし、世界を確認しようと試みる。

 

地球では本来のゲームには登場していなかったモンスターが人々を襲って、街を破壊していた。そこへ自らを「神」と呼ぶ巨人たちが現れ、モンスターたちを倒していく。

一見、人類を助けたかのように思えるが、人間の数を適当に減らしたところでストップをかける意味でモンスターを排除していただけに過ぎなかった。

「神」は反抗的な人間は許さず、彼らをも斬殺してしまう。

母を殺された少年は、「神」に復讐を誓う。

「神」の殺戮行為から少年を守ったロイドは、地下迷宮のダンジョンに挑む。

そこに「神」を倒す方法や、世界の謎を解く鍵がある。

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『怪物王女』のときからそうですが、読者の想像のナナメ上をいく設定・世界観を構築するセンスに脱帽です。よくこんなこと考えつきますね。

独特な世界観を構築しても、それを上手く面白いストーリーとして展開させるのは別の技量が要求されます。それらが両立されているのが素晴らしい。

世界観の構築に注力しすぎると、ストーリーやセリフが説明的になりがちで読者が共感しにくくなってしまうという危険が発生しますが、それを見事に回避しています。

情報を小出しにして読者を混乱させず、かつワクワクさせる展開を描けるのは天才の証です。

 

「神」が宇宙船の位置を特定し、地表から岩を投擲して宇宙船を破壊したのには驚きました。主人公は宇宙船という安全圏にいたのではなかったのです。

宇宙船が爆発したときは

「おいおい、主人公死ぬやん。どうやって助かるわけ?」

と心配になり、ロイドは主人公ではなかったのかと思ったりもしました。

流石、ストーリーテラーと呼ばれる作家さんですね。

先の展開がまったく読めません!

 

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【マンガ】『星明かりグラフィクス』(1巻)ー潔癖症の女子大生の日常

『星明かりグラフィクス』山本和音 / KADOKAWA

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デザインセンスは天才的だがコミュ障で友達が少ない美大生の主人公・吉持。

彼女は潔癖症のため苦労の絶えない日常を送っていた。

一方、同じ美大に通う吉持の唯一の友達・園部。

彼女は吉持とは逆に、凡才だがコミュニケーションスキルは高く、様々なサークルに入って人脈を広げようと日夜励んでいる。

園部は周囲と吉持との仲を取り持ってあげようと気を配るも、人に触られるのが嫌で人見知りな吉持は他人との溝をなかなか埋めることができない。

ちょっと変わった女子大生二人が織りなす美大ライフ。

美大といっても『ハチミツとクローバー』のような恋愛要素はありません。

 

現代人には潔癖症気味の人が増えているのではないかと秘かに思っています。

除菌アイテムが巷にはあふれていますよね。

気にしだすとキリがないと思いますし、買うのにお金がかかるのであえて実行はしませんが、あれば使いたくなります。

 

このマンガで吉持は握手を極度に嫌がり、友達でもない異性との服交換(美大の課題制作のバイトの一過程)も拒否していました。態度はやりすぎですが共感はできました。

僕も他人と服交換は嫌ですし(まあバイトでお金がもらえるならやるかもしれませんが積極的にやりたいとは思いません。)、電車でつり革を持ちたくないですし、

買った本は全部外側を拭いてから読みます。

 昔は古本もできれば買いたくなくて新刊ばかり買っていましたが、それでは絶版本が手に入らないので仕方なく徐々に妥協していった記憶があります。

もちろん古本も外側を拭いてから読みます。

 

日常生活で潔癖に傾きすぎるとキリがないし、逆にストレスばかりになってしまいます。

「分かってはいるけどなんか気になってしまう。第一、不潔よりかはマシでしょ」

と自分に言い聞かせて(言い訳して)、今日もまた買った本を拭いています。

キンドルは使いません。(紙の方が好きだから。)

 

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