【マンガ】『ゴールデンゴールド』(1-3巻)—どうにも説明できない怖さと面白さ
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『ゴールデンゴールド』堀尾省太/ 講談社
変なタイトルである。
それ以上に奇妙なのはストーリーである。
面白いのに、人にその面白さを伝えようとしても1ミリも伝わらない。
たぶん初読の方の感想の多くが「何これ?!」でしょう。
説明が難しすぎるという一点で誰もが共感していただけるはず。
マンガは基本的にある程度ジャンル分けができます。
(ジャンルが予め想像できているからこそ、多少安心して読者は1巻を買ってみようという気になれるともいえます。)
しかしこのマンガはジャンル分けできません。
ギャグなのか、サスペンスなのか、ミステリーなのか、SFなのか、ホラーなのか・・
すべてを含んでいるようで、不定形で捉えにくく、フワッとしているようでどこか重い「世にも奇妙な物語」にありそうな話。
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ある島で暮らす中学2年の少女・琉花。
彼女はある日、海岸で奇妙な木像?を拾う。不思議と求心力のある像だ。
小さな祭壇に置いて日頃のささいな願望をその像に向けて祈ってみる。
帰宅時にその像がドラえもんサイズくらいに巨大化し、琉花の後を付いてくる。
事態が呑み込めずに恐怖した彼女はなんとか振り切って逃げる。
しかしその像は家まで追ってきて居付いてしまう。
叔母の家(民宿経営)に住まわせてもらっていたのだが、だれもその像が動いている姿に違和感を抱かずに受け入れて対応している。
なぜ誰も変に思わないのか。
廃棄したり追い出したと思ってもいつの間にか家に戻っている。
叔母はその像をフクノカミと呼び、家の中に仏壇まで設置して祀り上げる。
フクノカミが居付いてから、やたらと民宿が繁盛しだす。
叔母はお金儲けの欲望が増幅されて、自分の妨害をする人間には容赦しなくなる。
フクノカミが関与した事柄・人達のもとにはお金が集まり、それ以外の人達は徐々にお金が入らなくなる。
この島は一体どうなってしまうのか。
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フクノカミに完全にマインドコントロールされているわけではなく、お金に対する欲望だけが増幅されてしまう状態。
冷静さや優しさといった感情は残っていて、日常生活もほとんど変わらず送っているはずなのに、フクノカミに憑りつかれた家は富み栄え、それ以外を滅ぼしてしまうように社会コミュニティの中では全体としてそういう流れで動いていってしまう。
少女一人の力ではとうてい堰き止められない大きな流れ。
個人個人を説得したり止めたりしても全体としての流れは変わらない。
どうしたらいいのか分からない恐怖。
琉花自身の願望も叶えてもらっていくわけだが、単純に喜べない。
言いようのない不安感。
元の島に戻ってほしいけど、そうなったら片思いの少年は島を出ていってしまう。
(フクノカミの働きかけ?によって少年は島を出なくてもいいかという気になってきている。)
『幽遊白書』の蟲寄市を思い出しました。(仙水編)
人々はいつも通りの生活をしているのに、魔界の瘴気が境界トンネルから漏れ出して、町の人々がだんだん変わっていくような怖さ。
先の展開もゴールも全く予測できない奇妙すぎるマンガです。
面白いのに刊行ペースが遅いのが難点です。
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