【マンガ】『今日の授業は良い授業』―科挙受験の凄まじさ
【広告】
紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『今日の授業は良い授業』佐藤真通
⇧2018年1月発売。
紙の本バージョンはありません。
短編集です。
この記事では、最初に掲載されている『儒林外奇譚』を紹介します。
<科挙について>
中国の難関試験の代名詞・「科挙」をご存じでしょうか。
587年~1904年まで1300年も続いた官吏登用試験のことです。
科挙は小説や映画で時々描かれる題材ですが、どう難しいのでしょうか。
あるいは合格した者は、なぜすごいのでしょうか。
この本の冒頭の短編『儒林外奇譚』を読めばその一端が分かります。
科挙は長い間続いてきたので、受験科目などの変遷はもちろんありましたし、時代を追うごとに競争は激化していきました。
合格倍率は数千倍にもなったそうです。
(ちなみに東大の倍率は3~4倍くらいです。)
さらに驚くべきことは、受験生たちの暗記量です。
『論語』『孟子』『周礼』『尚書』『詩経』などの多くの経典を憶える必要があるのですが、その数なんと57万字です。
円周率の暗唱ギネス記録が10万桁であることを考えると、その凄まじさが分かります。
たとえば1日に200文字を毎日休みなく覚えたとしても、8年かかります。
当然、一字も忘れずに暗記できたとしてです。
さらに恐ろしいことに、これは基本的な量であり、この数倍にも及ぶ注釈、大量の史書、文学書を読み込む必要がありました。
クレイジーすぎますね。
その代わり合格すれば大変な名誉であり、一生安泰であり、一族全員が豊かに暮らせるほどの恩恵に与れました。
科挙は誰でも受験できるとはいえ、合格するには幼少期から勉強に打ち込める環境がないと到底不可能です。
才能だけではダメで、才能のある者が超絶な努力をして初めて達成可能な目標なのです。
小さい頃からひたすら受験勉強をさせられ、それが何十年も続くのですから、途中で自殺したり発狂してしまう者もいたそうです。
この『儒林外奇譚』は、科挙合格を目指す青年の物語です。
(⇩科挙の試験会場の様子)
【広告】
<あらすじ>
時は17世紀。
舞台は甘粛省の首府・蘭州。
そこで科挙が行われようとしていました。
主人公・楊洲王(ヨウ・スワン)は受験者の一人です。
彼は現在28歳。
幼少期から春夏秋冬、朝夕を問わず勉学に励み続け、ついには身体が変形してしまいました。
病で死んだ母や姉、そして一族のために、彼は主席合格を狙っていました。
試験会場に入る前には身体検査があり、カンニングペーパーを隠し持っている受験者は発見され次第死刑になります。
試験が始まっても、極度の緊張から発狂してしまう者もいました。
受験生の会場入場だけで丸一日かかり、会場の門は試験終了まで何があろうとも開かれることはありません。
科挙試験は、郷試、会試、殿試の三段階に分かれており、全てに合格すると晴れて進士(高級官僚候補)となります。
楊が初めに取り掛かったのは郷試です。
厳正な本人確認の後、答案用紙と問題が配られます。
問われるのは、
・古典への精通
・詩文作成能力
・論文作成のための歴史的知識
です。
解答には丸一日以上の時間が与えられます。
誤字はおろか、汚れ、やぶれ、にじみ等、わずかなミスも許されません。
順調に解答を進めていく楊でしたが、ふとした瞬間に
「何のための勉学か。詩が何の役に立つ?論や策が何になる?」
という迷いが襲いかかってきました。
果たして楊は、科挙に合格することができるのでしょうか。
【広告】
<まとめ>
『儒林外奇譚』の一番すごい所は、解答シーンです。
楊の脳内が描かれるのですが、その背景は膨大な漢字で埋め尽くされています。
おそらく著者の手書きです。
非常に細かい作画作業だったでしょう。
米粒に般若心経を書く職人さんのようです。
楊の狂気と科挙の凄まじさが伝わってくる、迫力ある画面です。
著者のクレイジーさに驚かされます。
著者は週刊青年マンガ誌・モーニングで『アイアンバディ』(講談社 / 全4巻)を連載していた佐藤真通さんです。
⇧二足歩行ロボットの研究開発に人生をかける男(西村真琴)の物語です。
彼は起業して自分の好きなようにロボットを作っていますが、常に資金難です。
彼の技術力は確かなのでスカウトもやって来るのですが、自分の好きなように作れる環境が最優先なので、彼はどこかの会社に所属することを嫌がります。
そんな彼の志に共感してくれる仲間が少しずつ増えていき、ロボットの性能を競うコンテストに参加します。
アツいものづくり漫画です。
⇦クリックするとAmazonに飛べます
⇩⇩⇩⇩⇩
⇧⇧⇧⇧⇧
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△