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【小説・文学】『穴の町』―消え始める町から脱出せよ!

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『穴の町』ショーン・プレスコット / 訳:北田絵里子 / 早川書房

⇧2019年7月4日発売。

文庫版はまだありません。

 

 

<オーストラリアの小説>

 オーストラリアで人々が主に居住している区域をご存じでしょうか。

⇩下図はオーストラリアの地図ですが、白い部分に国民の98%が暮らしています。 

しかもそのほとんどは海岸部の都市に住んでいるそうです。

 

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 なぜこんなに人口分布が偏っているのかというと、内陸部が砂漠だからです。

 日本でも山間部の居住者は少なく、海に面した平野部に人口が集中しているものですが、オーストラリアはもっと偏っていますね。

 

こういう国では、自国であっても内陸部の詳細は謎に満ちています。

というより、ほとんど誰にも知られていません。

悪く言えば、少ないながらも人や町が存在しているのに、皆から忘れられているのです。

 

著者はそんなオーストラリア内陸部の出身です。

以前はあったはずの町や集落が、地図上に名前だけを残したままいつの間にか実体が消えているという現象を、著者は身近で経験しています。

そういったことから着想を得て、この小説は出来上がったそうです。

 

 オーストラリアの奥地の村で育った作家ならではの物語です。

 

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<あらすじ>

 舞台はオーストラリアのニューサウスウェールズ州。

(下図の赤い部分です)

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その中西部の名もなき町に主人公の「ぼく」はやって来ました。

作家志望の彼は、世の中から忘れ去られようとしている地方の町について調べ、それをテーマに本を書こうとしていました。

 

最初は町の人々の話を聞いて回ったり、図書館に調べに行ったりしましたが、誰も町の来歴を知りません。

興味もないようです。

町の人々は皆、例外なく倦怠感に包まれていました。

「ぼく」がインタビューの過程で親しくなった人達も同様です。

客が全く来なくなったパブを営みつづけるジェニー。

ミュージシャンを諦めてから、誰も利用しないバスの運転手をしているトム。

スーパーマーケットに行くことが唯一の生きがいであるリック。

 

町の人々は過去を懐かしんでいるわけでもなく、未来に希望を持っているわけでもなく、毎日退屈している割りには文化にも芸術にも興味がなく、ただ惰性で漫然と生きているだけでした。 

 

町に鉄道の駅はあるけれど、そこで列車は止まらず、列車の行き先を誰も知りません。

道路はあるけれど、車はほとんど通らず、通ってもその町で止まることはなく過ぎ去っていくだけです。

 町は発展するどころか徐々に縮小していっています。

なのに人々はその町を離れる気力すら失い、あらゆることを諦めていました。

「ぼく」は町の人々の無気力にあてられて、何の有益な情報も得られないので、やがて本を書くことをやめようと考えるようになりました。

 

そんなある日、突然、町の公園に大きな丸い穴が出現しました。(2平方メートル)

それはシャベルで掘ったような単純なものではなく、隅から隅まで深さがあるように見える空白でした。

黒色でも暗色でもなく、他のどんな色合いも帯びていません。

その穴は底が見えず、物を投げ入れても音がしません。

 

穴は町中で話題になりました。

過激派が仕組んだことだろうという者、超自然的なものだと考える者など、色んな説が飛び交います。

あれは穴というより入口に近く、穴の中に何があるにせよ、町よりも地球よりも大きい可能性があるという者もいました。

 

一応、穴の周りには立ち入り禁止のテープが警察によって張られているけれど、四六時中見回りをするほど、警察はその穴を気にかけていません。

やがて町中に、大きさの異なる同様の穴が次々と出現していきます。

その穴に落ちてしまう人も出てきます。

もちろん戻ってくる人はいません。 

 

町の閉塞感に耐えられなくなった「ぼく」は、町を離れることにしました。

同行者は、毎日誰も聴いていないラジオを流し続けていたDJのシアラです。

彼女だけが町で唯一、生きる気力を持っている人間だったからです。

彼女は都会に憧れていましたが、町を出て都市に到着してからは、様子が変わっていきました。

 

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<今いる場所の不確かさ>

 都会だろうと田舎だろうと、活気のない町はあります。

そこで暮らしている人々は、そういう雰囲気に慣れてしまって、町がどういう未来に向かっているか考えもしません。

つまり、自分のいる町が消滅するかもなんて想像しません。

人々は建設的な生き方ができず、何にも興味が持てず、町から出ようという気力すら失って、惰性で毎日を送っているだけです。

我々日本人も、気を抜くとそういう感じになってしまいがちです。

 

人は人生がうまくいっていない時に、

「自分の本物の人生はここではない別の場所にあるのではないか」と考えることがあります。

自分の今いる場所の不確かさに不安を覚えるわけです。

この小説で「穴」が何を意味するのかは、読者の解釈に委ねられていますが、町に穴が増えていくたびに、読者は不安な気分になっていくでしょう。

 

あ、自分の人生もこのままじゃヤバいかも・・・

 と危機感を持たせてくれる作品です。

 

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