【マンガ】『角の男』全2巻―力強い友情の物語
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『角の男』山うた / 新潮社
⇧2019年2月に2巻が出て完結しています。
著者の構想通りなのか、非常に良くまとまっています。
長期連載すればいいってもんじゃないという見本のような漫画です。
<差別と友情>
異なる2種族間の差別と友情を描いた作品です。
登場するのは「人族」と「角が生えた人種(角族)」です。
前者は後者を「鬼」と呼んで蔑み、
後者は前者を「角なし」と呼んで嫌っています。
何が発端で争い、憎み合っているのかは不明です。
差別の歴史が長く続くと、その中で生まれ育った者は始まりがどうだったかなんてどうでもよく、周囲からの同調圧力によって差別の推進者になってしまいがちです。
差別は行き過ぎると迫害になって奴隷化や虐殺に至ります。
ナチスのユダヤ人迫害がいい例です。
この漫画では、今は角族たちよりも人族の方が優勢であり、多くの角族たちは奴隷として使役されています。
そのため、人族に見つからないように山奥に隠れ住んでいる角族たちの集団もあります。
たとえ異なる種族の大人同士が嫌い合っていたとしても、そこに根拠がないならばそんな慣習に従わない子どもたちも出て来ます。
小さい子どもほど、観念的なことで差別をしないからです。
ただ子ども同士の友情は、大人の世界のルールを押し付けられると簡単に潰されてしまいます。
この漫画は、人族の少年と角族の少年が友達になったのに、大人たちによってそれが引き裂かれてしまう話です。
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<あらすじ>
人族のユエは雪山で道に迷い倒れていたところを、角族のジャオに助けられました。
ジャオたちの仲間は山奥で人族に知られないようにひっそりと暮らしており、ユエはジャオの村に連れていかれて手当てを受けました。
多くの角族は人族を憎んでおり、ユエのことも体調が回復したら奴隷のようにこき使ってやろうと考えていました。
ジャオだけがユエに興味を示し、ジャオの家にユエは住むことになりました。
木の実採集や雪合戦を通して二人は徐々に仲良くなっていきます。
その様子を見たジャオの母はユエのことを認め、村長にユエを人として扱うことを進言します。
角族の村のことを知られるわけにはいかないのでユエを村から出すことはできないけれど、角族の一員としてユエは村人たちに受け入れられていきます。
最初は家族のもとへ帰りたかったユエでしたが、角族の村での暮らしが心地よく、帰りたいという気持ちは次第に薄れていきました。
しかしある日、道に迷ったジャオが帰宅して母親と抱き合っている光景を目にしたユエは、自分も母親に会いたいと強く思います。
その気持ちに気付いたジャオは、村の掟を破ってユエを深夜に村の外へ連れ出しました。
そこからが悲劇の始まりでした。
実はユエは母親に意図的に山中に置き去りにされたのでした。
ユエは母親から愛情を受け取ることなく育ち、不要になったから捨てられたのです。
ユエはそれに薄々気付いてはいましたが、自分がいなくなったことで母が少しでも寂しいと思ってくれていたら・・・という一縷の望みにかけて帰宅したのです。
ユエの期待も空しく、母は再会したユエを「なぜ帰って来たのか」と殴りました。
直後に母の態度は一変します。
そして「今までどこで世話になっていたのか」と問いかけます。
ユエは角族の村の場所を明かしてはならないと分かってはいましたが、生まれて初めて母から物をもらったことで白状してしまいます。
人族の社会では角族は奴隷としての価値が上がっており、ユエがいた村の角族を捕まえれば大きな利益が出せると母は考えたのです。
その後、ジャオの村は発見され、角族は全員殺されるか捕まって奴隷として働かされることになりました。
ユエは手遅れだと知りつつも、贖罪のためにジャオと角族を救うために奔走します。
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<まとめ>
全2巻です。
短いからこそストーリーの力強さを鮮烈に感じられます。
せっかく築いた友情が憎しみに変わり、たとえ許してもらえないとしてもジャオの命を救うために命がけで悪役を演じるユエの姿は涙を誘います。
カメラワークや構図も凝っていて、1巻と2巻の対比でまた泣けます。
種族が違うがゆえの憎悪と友情。
シンプルでストレートなストーリーが胸に刺さります。
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