【マンガ】『BLUE GIANT SUPREME』7巻―ひたむきさが人を魅了する
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『BLUE GIANT SUPREME』 石塚真一 / 小学館
⇧2019年2月28日発売。
最高にアツいマンガです!
<前巻までのあらすじ>
プロのサックスプレイヤーを目指してヨーロッパにやって来た主人公・宮本大。
彼が演奏しているのはジャズです。
目標は世界一のジャズマンに なることですが、独りでライブを繰り返しているだけでは限界があることを感じます。
仲間を集めて、4人組のバンド(サックス、ピアノ、コントラバス、ドラム)を結成しました。メンバーは皆プロではないけれど、腕に覚えのある者たちぞろいなので、日々の練習でも演奏に関してよくモメています。
初めての4人のライブは力み過ぎて全員の演奏が噛み合わず、大失敗に終わりました。
めげずに彼らはヨーロッパ中を回るツアーに旅立ちます。
行く先々のライブでそれなりに好評を得て、自信をつけていきます。
技術も才能もあるメンバーたちなので、それは半ば必然の結果ともいえます。
噛み合わなかった4人の歯車がようやくうまく回り出したのです。
まだまだ無名の彼らは、ライブをさせてくれる会場があると知れば、どこにでも足を運んで行きます。(東洋人のいる無名のアマチュアジャズバンドというだけで、演奏を断るライブ会場やジャズバーもけっこうあるのです。)
ツアーの途中、オランダの小さな街・ホルストでフェスが開催されることを知ります。
フェスに参加するためのオーディションにも合格し、演奏の順番も決まり、いよいよ本番が始まりました。
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<アツい演奏が他のプレイヤー達にも伝染する>
ホルストでのフェスはなんと第一回目の開催で、フェスとしての知名度はゼロでした。
規模も小さく資金も少ないので、有名なバンドを呼ぶにも1組だけで限界でした。
だからこそ、無名のアマチュアバンドが飛び入り参加できたともいえますが、
大たちはどんな小さなステージでも、いつも全力で演奏することを繰り返してきたので、舞台があるだけでそこは最高の戦場になるのです。
本番の第一組目は大たちのバンドでした。
そこで彼らは会場の観客や他のバンドのプレイヤーたち、フェスのスタッフたちの度肝を抜く演奏をして、会場を最高潮に盛り上げます。
目玉のゲストとして呼ばれた、プロの有名ベテランジャズプレイヤーのサム・ジョーダンも、初めは小さなフェスだということで乗り気ではありませんでしたが、
大たちの演奏を聴いて、気持ちが本気モードに切り替わります。
二組目は高校生のバンドでした。
彼らも本番直前まではビビッていましたが、大たちの演奏を聴いて、下手くそでもいいから一生懸命に演奏することに集中して成功を収めます。
大たちのアツい演奏が、皆に伝染したのです。
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<有名プレイヤーへの失望>
フェスの会場にいる観客の中には、ヨーロッパの音楽フェスの主催やコーディネートをしているアーサー・ウッドがいました。
彼はこれまで、数々の有名ジャズプレイヤーと出演交渉をしてきました。
大たちの演奏を聴きながら、これまでの経験を回想します。
小さな会場で歌うことに不平を言う女性シンガー。
フェスに来てもらうための飛行機にはエコノミークラスしか空席が無いことに怒って、ビジネスクラスでないと契約はしないと宣言する者。
ギャラを倍にしないと出演しないとゴネる者。
予定より早くライブを終えて、自分がもう満足したからアンコールもしないと言って帰ってしまった老ピアニスト。
飲んだくれてホテルで寝てしまい、ライブ会場に現れなかったドラマー。
客が小さな咳をしたというだけで、演奏の邪魔をしたと言ってライブを中止して帰っていくピアニスト。
彼らは皆、技術も才能も、それに見合った地位と名声も持っていました。
しかしあまりにもてはやされ過ぎて、偉そうに振る舞い、自分を中心に世界が回っていると勘違いするようになってもいました。
「皆あなたの演奏を聴きたがっているのですよ」と訴えても、返ってくるのは不平不満ばかり。
ジャズが好きで最初は彼らを尊敬していたアーサーは、やがて失望と諦念を抱くようになっていきます。
そんなアーサーの目には、小さなフェスで無名のバンドたちがひたむきに演奏している姿が美しく見えたのです。
<ひたむきさに人は魅了される>
地位や名声を得ると、人は自分の人間としての価値が上がったと思いがちです。
商品価値が一時的に上がっただけなのに。
そして同時に、ひたむきになることを忘れていきます。
現状維持さえしていれば、そこそこの結果が付いてくるような安定した(と錯覚している)ポジションにいるからです。
周囲に尊大に振る舞うことが常態化し、自分が最高の待遇で迎えられないと不満を持つようにさえなります。
自分のそんな姿が、他人からは失望されていることに気付きもしないで。
最初は誰もが、どんな舞台であろうとも、そこで演奏できるだけで純粋に嬉しかったはずなのに。
偉そうな態度をとっていたとしても、密かに努力している人もいます。
向上心があるのならそれでもOKです。
ただ、過去の栄光にあぐらをかいて、ひたむきさを失い、尊大さだけを増長させた者は失望されていくだけです。
ライブの演奏ではウソはつけません。
観客は演奏者の地位や技術ではなく、真剣さ・ひたむきさに魅了されるのです。
「こんな大人になっちゃダメだぜ」というメッセージが
痛いほど伝わってくるマンガです。
カッコイイ生き方とカッコ悪い生き方の見本市のようです。
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