【小説・SF】『アリスマ王の愛した魔物』―数えることに取りつかれた男
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『アリスマ王の愛した魔物』小川一水 / 早川書房
⇧2017年12月発売。
文庫です。ハードカバー版はありません。
<幅広いタイプのSF小説を書き分ける作家>
著者の代表作といえば、今や『天冥の標』シリーズになっていますが、
その他にも数多くの名作を生み出しておられます。
『老ヴォールの惑星』、『時砂の王』、『コロロギ岳から木星トロヤへ』、『フリーランチの時代』、『天涯の砦』など、様々な題材を扱った面白い作品ばかりです。
ジャンルはSFですが、ファンタジー寄りのものからハードSFまでバラエティに富んでいます。
上記の作品は全部読みましたが、ハズレがありませんでした。
長編も書けるし短編も書けるという、オールマイティな作家さんです。
特に、短編のアイデアの量がすごいです。
よくこんなに面白いものをいくつも思いつくなと感心します。
この『アリスマ王の愛した魔物』も5話収録の短編集です。
全部SFですが、誰が読んでも楽しめるように色んなタイプの物語が集められています。
アイデアマンとは、こういう作家のような人のことを言うのでしょう。
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<5つの短編紹介>
ざっと収録されている5つの話を紹介します。
◆『ろーどそうるず』
バイクが意志をもって、言葉でものを考えて、バイク同士は話せるという設定の、バイクが一人称の話です。
ライトノベル『キノの旅』(時雨沢恵一)のエルメスを思い出させます。
乗り手のことをいかに思いやっているのかが描写されます。
乗り手とバイクの相性は大切です。
◆『ゴールデンブレッド』
日本と西洋人の立場と文化をごちゃまぜにして反転させた討論ストーリーです。
宇宙が舞台ですがあまり関係ありません。
自分が日本の文化・習慣を全く知らずに日本に不時着したとしたら、
「もしかしたら食文化や価値観に全くなじめなかったかもしれないな」と、
自分の立場を客観視できる話になっています。
「タタミ・マット」「フスマ・ドア」「アグラ座り」など、言葉のチョイスが非常に面白いです。
◆『アリスマ王の愛した魔物』
ひ弱で見た目が醜いけれど、計算能力だけは高いアリスマ王が、その才能をフルに使って戦国時代をのし上っていくファンタジーです。
彼はものを数えることに取りつかれた人間でした。
自国の人口、田畑の大きさ、家畜の数、橋の本数、山の高さ、木の本数、街道の長さなど、すべてを把握することで、他国を支配するまでに至ります。
アリスマ王の命令のもと、計算の殿堂・算廠(さんしょう)に集められた計算役の若者たちをつなぎ合わせて膨大な量の計算をしていく様は、まるでパソコンの内部を擬人化したかのようです。
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◆『星のみなとのオペレーター』
宇宙港へ帰還したり、そこから出発していく宇宙船のオペレーションを仕事にしている女の子が主人公の話です。
仕事は毎日丁寧にやっているけれど、いつも同じようなことの繰り返しです。
見送る宇宙飛行士たちのように華々しい人生や、映画のように劇的な出会いなど自分にはこれからも起こらないだろうと諦め始めています。
劣等感を持て余していたある日、人類に危機が迫っていることが分かり、彼女の人生と仕事は、劇的に忙しくなることになります。
少女マンガ的SFです。
◆『リグ・ライト 機械が愛する権利について』
「機械(AI)は人格を持つことができるか、感情を持つことができるか」という、
SFでは昔からある普遍的なテーマを題材とした話です。
「そんなことあるわけないじゃん」という方は想像力がないだけです。
極限まで姿形や反応を人間に似せたら、人間には本物と区別できなくなります。
AIのディープラーニングは今や人間の子どもを超える勢いで進化しています。
人格やその他の権利は保障されていないのに、ロボット三原則(人間への安全性、命令への服従、自己防衛)や、そこから延長された規則を頑なに守ろうとしているAIと接していると、人間の方が感傷的になってしまいますね。
よくこんなに様々な面白い短編を量産できるものです。
こんなに何冊も短編集を出されている作家さんは他にいないでしょう。
短編集は売れないといわれる出版業界ですが、それでもいくつも出版されるということは、著者の実力は折り紙付きだということです。
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