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【小説・SF】『ランドスケープと夏の定理』―和製グレッグ・イーガン

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『ランドスケープと夏の定理』高島雄哉 / 東京創元社

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SFのガジェットといえば物質的な道具、器具、乗り物や建造物を最初にイメージしてしまうものですが、物語内で通用する概念、(物理)法則もその一つ。

つまり設定の内、形而上学的なものも含まれます。

 

この小説では「知性原理」という理論が基礎となって物語は展開します。

(もちろん近未来(21世紀後半)の設定なので物質的なSF的ガジェットも登場しますが、それはさして重要ではありません。)

「知性原理」というのは、主人公・ネルスが発見した新理論です。

一言で表現すれば、「あらゆる知性の型が互いに翻訳可能」というもの。

つまり、時間をかければどんな知性だろうと分かり合えるということ。

 

旅行が好きで世界平和を望んでいて世の中は話し合えば皆分かり合えると思っている、浅はかなヒューマニズム信奉者には当然のことだと言われるかもしれません。

しかしこれは、SF的にはかなり挑戦的な設定なのです。

 

これまでSFでは「人類とは理解し合えない知性が存在する」ことが多く語られてきました。価値観はもちろんのこと、生態系、意思伝達手段、知性としての構造が異なればそれは当然のことだというのが常識的な考え方でした。

地球でだって人類はいつまで経っても戦争を根絶できない・分かり合えないのだから、

宇宙人となら当然、理解し合うのは困難を極めることは想像に難くないはず。

 

「あらゆる知性が翻訳可能」というのは、過去のSF的常識設定に反逆しようとする野心的な試みなのです。著者の自信がうかがえますね。

生半可な覚悟でこの設定は書けません。破綻が目に見えているからです。

しかしその困難を跳ねのけて見事にラストまで描ききっています。

 

グレッグ・イーガン『万物理論』でも物質的なガジェットは少なく、

理論や概念、主義の多様さを提示することで設定を盛り上げていました。

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SFってこういうことをやってもいいんだ、と読後に感動しました。

SFって自分が想像していたよりもっと自由なジャンルなんだなと。

 

『ランドスケープと夏の定理』でも読後に同じ感覚を味わえます。

グレッグ・イーガンよりもややコメディ寄りなので、未読の日本人にはこちらの方が親しみやすいかもしれません。

天才物理学者の姉に振り回される弟(主人公)の話です。

今年読んだSFで一番斬新でした。

 

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