【小説・SF】『ブラインドサイト』―想像のナナメ上をいく知的生命
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『ブラインドサイト』ピーター・ワッツ / 訳:嶋田洋一 / 東京創元社
いわゆるSFのジャンルの一つである「ファーストコンタクト」もの。
宇宙において、人間と地球外知的生命体とが出会うというもの。
ひと昔、いや、ふた昔くらい前はそうなったら大体戦争して領土争いをしていた(現実世界の冷戦のメタファー?)感じですが、最近の「ファーストコンタクト」ものはそんな野蛮な展開にはなりにくい印象です。(そこまで読み込んでないので、あくまで個人的な感触です。)
この小説でも戦争には当然?なりません。
まずは意志の疎通をはかるところから。(人間同士でも基本ですよね)
初めは大きな宇宙船みたいなものが接近してくるのですが、
・それが知性体なのかどうかの確認(ただの大きな自動操縦船かも?ドローンとか)
・意志の伝達手段の探索(当然、日本語英語をはじめとした言語は通じない。昔のSFでよく出てきたテレパシーかもしれないし、光の明滅信号かもしれないし、電波かもしれない。)
・相手の科学技術・文化レベルの判断(とにかく地球の常識を手放して想像してみる)
・こちらの情報をどこまで開示するか(もし攻撃されたときに不利にならないように)
などを順次確認していくことに上巻は使われます。
言われてみれば当たり前のことですが、これまでのSFではここまでリアルに意志疎通の段階を描いたことはなかったのではないでしょうか。
意志伝達手段から模索しないといけないというのは、メチャクチャ大変なことなんだと分かります。しかも相手は攻撃してくるかもしれないというギリギリの状況下で。
話が全く通じない相手は対面するだけで怖いですよね。
そういうレベルの話ではなく、まず相手にこちらのメッセージが伝わったのかが分からない。
伝わったのだとして、相手がそれを理解できたのか分からない。
相手が何か反応(メッセージの応答)をしたのかも分からない。(こちらが電波を送信したからといって、同じ手段で返答するとは限らない。)
意志の疎通というのは非常に高度なことだったんだと気付かされます。
読み手としては非常に面白いです。そういう可能性もあるか、と。
想像力と推理を駆使しての意志伝達手段探索は楽しいですね。
そして下巻(ネタバレ注意)。
意志の疎通が出来かけたと思いきや・・
こちらが相手の意図を知るために送ったメッセージ電波が、相手には攻撃を受けたと取られることが分かってきます。
なんじゃそりゃあ!
どうやってこちらの意図を伝えればいいのか?
本当に方法がない。どうするどうする!?
まさか、そういうコミュニケーション手段の齟齬が発生するとは想像できませんでした。
こちらに悪意がないのに、相手は悪意を向けられたと受け取ってしまうのって一番怖いことですよね。(人間関係でも。)
著者は膨大な研究成果と参考文献を調べていて、設定も細かく作り込んであります。
「ファーストコンタクト」もののマイルストーン的な位置付けの本になるのではないでしょうか。
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