【科学】『天才と分裂病の進化論』—人類は分裂病があったから進化した
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『天才と分裂病の進化論』デイヴィッド・ホロビン / 訳:金沢泰子 / 新潮社
17年前に出版された本なので、現在の精神医学や生物学の最先端の知見をご存知の方にはやや物足りないかもしれません。しかし、最新の学術論文をチェックしている方でも忘れがちな落とし穴を教えてもらえる本です。
この本が出版された当時に「統合失調症」という言葉が決められましたが、まだ一般に浸透していなかったので「精神分裂病」と翻訳されています。ですが多重人格のことではありません。(精神医学素人の僕からすれば「統合失調症」もいいネーミングとは思えないのですが、「分裂」という言葉が誤解を生みかねないという懸念から名前が変更されたそうです。)
著者によれば、分裂病は2~4つの遺伝子がそろわないと発症しない。そろっても発症するとは限らないそうです。
遺伝子という言葉からもお分かりのように、環境的な要因だけで分裂病になるのではなく、遺伝的な要因との複合的作用によって発症してしまうとのこと。
全世界で分裂病が発症している割合は、国や地域に極端に偏っているのではなく均等に存在しているそうです。
驚愕の事実ですね。なんとなく先進国に多いイメージがありました。
(※論文ならデータが提示してあるはずですが、この本は論文ではないので具体的なデータや参考文献は記載されていませんでした。残念です。)
つまり分裂病が世界で同じ割合で発症しているなら、人類がアフリカから分布していく以前から遺伝子は存在したのではないかと著者は推測します。
「現生人類」と「ネアンデルタール人などの現生人類以外の原人」との脳の比較によって、人類がなぜここまで進歩できたのかを推理していきます。
ネアンデルタール人もそこそこ長い年月生存していたのに、生活スタイルはほぼ変わらないままだったのに対し、現生人類はある時期から脳が大きくなり生活スタイルも進化していったようです。
突然変異によって脳が大きくなったことで、創意工夫を覚えた代わりに、分裂病になってしまうリスクも同時に抱え込んでしまったのです。
どんどん創造性を発揮して狩猟生活から農耕生活に変化し、道具も多く生み出した。
これまでは海や川の近くでしか生活できなかったけれど、内陸の方まで住処を作れるようになった。
近代になって工業化し、人々の食生活も変化しました。
以前は魚を中心とした食事が、飽和脂肪酸の多い食事になってきました。
(つまり必須脂肪酸が摂取できなくなってきた。)
必須脂肪酸が足りないと脳機能が正常に働かないそうです。
飽和脂肪酸では必須脂肪酸と同じ機能をはたせない。
精神障害というのは「ゼロか100か」というものではなく段階的なもの(風邪と同じで弱いのもあればキツイのもある)なのだそう。
昔は必須脂肪酸をきちんと摂取できていたので、発症しても軽度で済んだものが、現在発症したら軽度で済まなくなってきたと著者は訴えています。
栄養学は現在、最新の科学者からしたらもう終わった学問であり、精神障害はもっと高度で専門的な原因があるのだと捉えられていて考慮されていないそうです。
そこに警鐘を鳴らしています。
これは大きな落とし穴だと思います。
別に栄養をきちんと取るようにすればいいのだから、実行してみて損はないはず。
そういった視点が見落とされているのは怖いですね。
必須脂肪酸を取るように努力したいと思います。