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【小説・ミステリー】『ベルリンで追われる男』―ドイツの不法残留者が冤罪に!?

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『ベルリンで追われる男』マックス・アンナス / 訳:北川和代 / 東京創元社

⇧2019年9月30日発売。

文庫です。

 

 

<ドイツの移民政策>

ドイツは20世紀半ばから労働力不足を補うために出稼ぎ労働者を招致し始めました。

その後もEU諸国からの移住者や、紛争地域からの難民などを受け入れ、移民大国となりました。

しかし大量の難民流入は政治的混乱と社会的不安を招き、難民の受け入れを抑える方向にシフトチェンジすることになりました。

 

ドイツ国民の中には反移民・反難民を訴える人も多く、そういった政策を掲げている政党もあります。

EU域外の者がドイツ在留資格を取得するには、厳しい条件が設けられています。

そのため、国内には不法在留者が30~40万人いるといわれています。

 

この小説の主人公も不法在留者です。

身分証明書が必要になる行為も出来ませんし、仕事や住む場所も自由に選べません。

とにかく警察に目を付けられないよう、常に周囲を警戒しながら暮らしています。

捕まったら母国に強制送還されるからです。

 

この小説では、そんな不法残留者ならではの生活の大変さが描かれています。

さらに、やってもいない殺人事件の犯人の容疑がかけられてしまいます。

 

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<あらすじ>

舞台はドイツの首都・ベルリン。

主人公はガーナ出身の青年・コージョ・アヴジ。

彼は黒人なため、それだけで警察に目を付けられやすい立場にあります。

警察は点数稼ぎのために、犯罪を犯していない黒人にも難癖をつけたがるからです。

 

コージョは元々はドイツ人の女性と結婚して、ドイツ在留資格を持っていました。

しかし3年前に仕事先のNGOで職を失い、離婚もしたことで、不法残留者になってしまいました。

彼は母国に帰るつもりはなく、警察に職務質問されようものなら、身分証明書がないことがバレて強制送還されてしまう立場にあります。

 アフガニスタン出身の友人のサイーフは、夜に警官と出くわし、つい反射的に逃げ出してしまったので捕まってしまいました。

ベルリンにいる黒人は、怪しまれないように「私は在留資格を持っていますよ」という何気ない態度を常にしていないといけないのです。

 

 コージョは警察と出来るだけ接触することを避け、トルコ人が多く暮らす地区のカフェで働くことにしました。

そこのスタッフや常連客には黒人の互助グループのような連帯があり、「白人からのいわれなき差別には皆で対抗していこう」という共通認識があります。

彼らにはコージョが不法残留者だと知られていますが、誰も警察に密告したりはしません。

 

コージョには愛人がいて、彼の住まいはその愛人が管理する空きビルの屋根裏部屋を使わせてもらっていました。

彼の住む部屋からは、隣にあるアパートの部屋が見えます。

アパートの部屋には娼婦が住んでいます。

 

ある日コージョは、娼婦が部屋に招き入れた白人の男性客に殺されている場面を目撃しました。

彼は急いで現場に駆け付けます。

その際、犯人だと思われる男とすれ違いましたが、娼婦の安否を確認するために追いかけることはしませんでした。

とはいえ、一応、男が乗っていった車のナンバーと後ろ側の写真を撮影しておきました。

 

娼婦の部屋には鍵がかかっており、中に入ることができなかったので、コージョは自室に戻りました。

翌日、娼婦の死体が発見されてニュースになりました。

そしてコージョの姿を見た娼婦と同じアパートの住人は、コージョが犯人だと証言していることが分かります。

娼婦の元に駆けつけたことが、アダとなってしまったのです。

警察もその目撃証言を参考にして犯人を捜索し始めています。

 

真犯人を知っているのはコージョのみ。

しかし彼は不法残留者なので警察と接触したくありません。

とはいえ、このまま放っておくと自分が殺人事件の犯人にされてしまいます。

コージョは昨晩の記憶と写真を頼りに、警察の力を借りずに真犯人の居場所を探すことにしました。

 

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<まとめ>

 ベルリンで暮らす不法残留者で黒人の主人公(コージョ)が、警察に追われながら殺人事件の真犯人を探すミステリーです。

コージョは強制送還をされたくないので、とにかく警察の目につかないよう毎日生活しています。

不法残留は違法ですが、それがなくても黒人にやたら難癖をつけてくる白人警官の存在はやっかいです。

 

ラストは切ない結末を迎えます。

果たしてコージョはどうなってしまうのでしょうか。

 

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