【小説・ミステリー】『無垢なる者たちの煉獄』―シリアルキラー VS 強盗団
【広告】
紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『無垢なる者たちの煉獄』カリーヌ・ジエベル / 訳:吉野さやか / 竹書房
⇧2019年1月30日発売。(文庫版)
<誘拐もの>
サスペンスやミステリーには「誘拐もの」というカテゴリーがあります。
大きく分けて「警察VS誘拐犯」を描くものか、「誘拐犯VS人質」を描くものかの2パターンがあります。
前者は身代金の受け渡し方法を一体どうするのか、人質は無事に救出できるかが物語の焦点になります。
後者は犯人が人質を口封じのために殺そうとすることから回避できるか、あるいは誘拐犯のスキをついて人質が拘束場所から脱出できるかが見所となります。
前者がミステリー、後者がサスペンスとして描かれることが多いです。
この小説は後者の変形パターンです。
また、大抵は誘拐犯と人質との関係性(支配する者とされる者、立場が強い者と弱い者)は変化しませんが、この小説では途中から逆転します。
普通の誘拐ものでは読者は人質に共感し、応援しながら読み進めるように書かれているものですが、この小説では中盤からどっちを応援すればいいか分からなくなります。
読者によって読み方が正反対になる珍しい作品です。
フランスの人気作家によるサイコサスペンスです。
【広告】
<あらすじ>
舞台はフランス。
主人公・ラファエルは青年の頃から札付きの悪党でした。
何度も強盗を繰り返し、20年近く刑務所を出たり入ったりしています。
しかし反省するどころか、強盗こそ自分の生きる道だと考えている節があります。
救いようのないクソ野郎です。
長い刑期を終えて出所した彼は、すぐさま次の強盗計画を練り上げます。
今回は彼と弟のウィリアムと友人とその彼女の4人で、宝石店に強盗に入りました。
3000万ユーロに相当する宝石を奪うことには成功しましたが、追手の警察と銃撃戦になり、警察の一人を銃殺した代わりに弟のウィリアムも腹に重傷を負ってしまいます。
あらかじめ用意していた隠れ家の周辺にはすでに警察がおり、ウィリアムを早急に治療するために別の隠れ家を見つける必要がありました。
とある村にたどり着いた強盗団一行は、そこで医者を探しますが見つけられません。
仕方なく獣医のサンドラに治療を依頼しました。(銃で脅して強制的に)
サンドラには夫がいましたが現在外出中であり、家にはサンドラ一人だけでした。
ウィリアムを治療させるとき以外はラファエルはサンドラを拘束し、従順にさせるために暴力も振るいました。
サンドラはスキを見て反撃に出ましたが、失敗してラファエルの怒りを買うだけに終わります。
やがてサンドラの夫・パトリックが帰宅します。
彼は最初からラファエルの言う事に従順で、すぐに立ち去ってくれるならこれからの逃亡生活に必要な車も提供してもいいと提案しました。
ラファエルはその車を確認するために家の側にある小屋に向かいます。
小屋の扉を開けて中に入ったラファエルが目にしたものは、拘束された二人の少女でした。
あり得ない光景に驚いた彼はスキを見せてしまい、その瞬間にパトリックにバットでめった打ちにされて拘束されてしまいました。
なんとパトリックの正体は、各地から幼女を誘拐してきては殺害を繰り返しているシリアルキラーだったのです。
(サンドラは幼少期から支配され続けてきて、完全にパトリックに依存してしまっています。少女達を積極的に痛めつけることはしないものの、助けることもしない共犯者でした。)
その後は完全に立場が逆転し、強盗団は全員拘束され、パトリックにいたぶられるだけの存在になりました。
もちろん宝石もパトリックが奪いましたが、換金方法はラファエルしか知りません。
ラファエルの口を割らせるためにパトリックは色んな拷問を試していきます。
(ラファエルを痛めつけるだけではく、弟や少女たちにも危害を加えてラファエルの正義感に訴えかけ、阻止したければ換金方法を教えろと迫ります。)
果たして、シリアルキラーと強盗団のかけ引きはどちらが勝つのでしょうか。
【広告】
<まとめ>
悪党のはずの強盗団が、サイコパスの夫婦の家に転がり込んでしまってひどい目に合うという話です。
連続殺人犯のサイコパス VS 強盗団という構図です。
どちらがヤバいかといえば、間違いなく前者です。
後者は殺人をするにしても、ためらいがあります。
前者の行動や発想には一般人には理解できない怖さがあります。
ただの強盗団の立てこもり事件ならば、読者は被害者(人質)を応援する読み方をするでしょう。
しかし人質がシリアルキラーで、さらに反撃が成功して拘束する立場が逆転したらどちらを応援しますか?
強盗団も極悪人なのに、助かるためにパトリックに向かってたまに常識的なことを口にする時があります。
「お前が言うな」というツッコミを入れざる得ません。
シリアスなシーンなのに笑えます。
人は完全なる悪には中々なれないということでしょう。
⇦クリックするとAmazonに飛べます
⇩⇩⇩⇩⇩
⇧⇧⇧⇧⇧
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△