【マンガ】『あさドラ!』1巻―名もなき女性の一代記
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『あさドラ!』浦沢直樹 / 小学館
⇧2019年3月29日発売。
著者の浦沢直樹さんといえば、
『Happy!』や『20世紀少年』 、『MONSTER』、『BILLY BAT』など、
出す作品のほとんど全てをヒットさせている化物級の作家です。
大体、小学館のビッグコミック系で連載されています。
この『あさドラ!』もビッグコミックスピリッツ連載です。
スピリッツは週刊誌ですが、このマンガの掲載は隔週っぽいです。
<あらすじ>
舞台は1959年の名古屋港。
大型台風が迫る中、主人公の少女・浅田アサは港を走っていました。
母が産気づいたために、産婦人科医を呼びに来たのでした。
時間短縮のために、医者には独りで自転車で彼女の自宅に向かわせます。
歩いて帰る彼女はその途中、偶然にも泥棒を目撃してしまい、口封じのために誘拐されてしまいました。
倉庫に監禁されたアサは、誘拐犯・春日とお互いに身の上話をします。
そこで少しだけ親しくなったアサは、拘束を解いてもらえました。
台風が激しさを増す中、とりあえず緊急避難として二人でコンテナの中に逃げ込みます。
台風が過ぎ去り、コンテナの扉を開けたアサたちの目の前には、水没した街が広がっていました。つまり、彼女の実家も水没したようなのです。
家族の安否も気になりますが、街には水没した家の屋根に避難したはいいものの、そこから身動き出来ない人々が大勢いました。
各家族が自宅の屋根に登って溺死を逃れたのです。
船も流されて調達できず、警察も機能していません。
空腹で困っているだろうから、アサは彼らにおにぎりを届けたいと言います。
水没を免れた家庭の奥様方に、おにぎりの大量生産をお願いします。
しかし船がないので届ける手段がありません。
春日は戦闘機の元パイロットだったことを明かし、空から投下するアイデアを提案します。
春日とアサは飛行場から借りた(盗んだ?)プロペラ機に乗り込み、逃げ遅れた人々におにぎりを配っていきました。
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<細部のこだわり>
読後に調べたところ、1959年の名古屋港の水害は史実だと知りました。
「伊勢湾台風」と呼ばれ、実際に大変な被害だったみたいです。
マンガの画面の迫力もありますが、「3.11」を彷彿とさせます。
貯木場が高潮で崩壊して街は流木だらけになるのは、「日本の水害あるある」なのかもしれません。
また、1964年の東京オリンピックの準備をする選手や、三輪自動車、当時の流行りの曲など、細かな時事ネタを入れてある点が時代の空気を感じさせてくれます。
細部にまで著者のこだわりを感じます。
一番笑ったのは、ラジオから流れる台風情報です。
とくにフリガナが付いているわけでもなく「mb」と表記されています。
これは台風の気圧を示す単位で、「ミリバール」と読みます。
現在の気象情報では、台風の気圧は「hPa」(ヘクトパスカル)が使用されています。
いつ変わったのか気になりますね。
1992年に国際単位規格である「hPa」に変更になったそうです。
ちなみに「1mb=1hPa」なので、単位が変更になって困ったことはなかったとか。
1959年の段階ではまだ「mb」であることがきちんとおさえてある点に感動しました。
(ほとんどの方がどうでもいいポイントだとは思いますが。)
浦沢直樹さんの絵は、一見ラフに描かれているように思えるのですが、
実は線の一本一本に表情があって意味があるという恐るべき魅力があります。
ジックリ見れば、適当に引かれた線は一つもないことが分かります。
真新しさを感じないのに、まったく古びることがない最強の絵柄です。
個性と普遍性を同時に獲得した絵柄は無敵です。
著者の絵を見るといつも懐かしさを感じると同時に、そのさりげない上手さにゾッとさせられます。
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<まとめ>
冒頭で「この物語は戦後から現代にかけて生きた、名もなき女性の一代記である」
と書かれてはいますが、一体どんな話になるのか1巻を読んだ限りでは見当もつきません。
『20世紀少年』のときに特に思いましたが、最初の段階ではどういうジャンルなのかも分からず、作者が何を目指して描いているのか全く掴めません。
普通ならこういう漠然とした始まり方は、読者に評価されません。
多くのマンガ読者は「分かりやすさ」や「手っ取り早いカタルシス」を求めているからです。
そんなワガママ読者も飽きさせないストーリーの牽引力が、このマンガにはあります。
安心して読むことができる安定した品質の高さです。
この先どうなるかは未知数ですが、非常に楽しみなマンガです。
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