【広告】

紙の本も読みなよ

読み終わったマンガ、小説、その他の本の中でオススメのものを紹介しています。 ブログのYou Tube動画版(チャンネル名は同じ)もあります ➡ https://www.youtube.com/channel/UCPzX3QHV6x9LM1AMOdme7qw

【小説・ミステリー】『カインは言わなかった』―ミステリーとホラーの境界線

【広告】

紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『カインは言わなかった』芦沢央 / 文藝春秋

 ⇧2019/8/28発売。

ハードカバーです。

 

 

<ミステリーとホラーの違い>

 ミステリーとホラーは何が違うのでしょうか。

自論ですが、「答え」が明示されるかどうかだと思います。

ミステリーは謎の説明(解明)がありますが、ホラーにはありません。

 

物語で何か事件が発生したとき、6つの謎が生まれます。

「何が」「誰が」「どこで」「いつ」「なぜ」「どうやって」起きたのかという疑問です。

ミステリーでは「何が」起きたのかはすでに明らかで、「誰が」「なぜ」やったのかがメインの謎になります。

つまり、犯人と犯行動機です。

「いつ」「どこで」「どうやって」というのは、アリバイやトリックに該当します。

 

一方、ホラーの場合は、「何が起きているのか」が明らかではありません。

非日常的で、良くないことが起きていることは感じ取れるけれど、具体的にうまく説明できない現象が起こります。

「何かおかしい」という状況を引っぱるわけです。

 

人は何を怖がるのかといえば、それは「分からないもの」に対してです。

例えば殺人事件が起きた場合、怖いのは事件ではなく、犯人や犯行動機のはずです。

「何が起きたのか明らかな事実」に対して残酷だと感じることはあっても、怖いと感じることはありません。

逆に、何が起きているのか分からない事件に対しては、人は不安や恐怖を覚えます。

 

この小説は、ミステリーとホラーの中間のような書き方がされています。

被害者に何が起きたのか終盤まで分からないのです。

謎と恐怖で物語を牽引する、趣向の凝った作品です。

 

「不安 恐怖 画像」の画像検索結果

 

【広告】
 

 

<あらすじ>

藤谷誠はパリで暮らした幼少期から、バレエ一筋で生きてきました。

日本に帰国した後は、誉田規一(ほんだ きいち)率いる「HHカンパニー」という劇団に所属して、バレエを続けています。

そして彼は次の公演「カインとアベル」で、主役(カイン)に抜擢されました。

カインというのは、旧約聖書において「人類最初の殺人者」として描かれる男です。

 

誉田は業界内で絶大な力を持っており、主役に厳しい稽古をつけることでも有名でした。

誠は練習に集中するために、7歳下の彼女の嶋貫あゆ子に「しばらく距離を置かせてもらいたい」と伝えました。

あゆ子は、日に日に練習で痩せていく誠を心配しながらも、できるだけ自分からは連絡をしないように気をつけました。

 

公演の本番が迫ったある日、あゆ子のスマホに、誠から「カインに出られなくなった」というメッセージが届きました。

あゆ子は慌てて電話をかけてみますが、誠にはつながりません。

だから誠が住んでいるシェアハウスのルームメイトであり、同じHHカンパニーにも所属している尾上和馬に状況を尋ねました。

尾上は昨日は自宅に帰らなかったので、誠の居場所が分からないと答えました。

ちなみに、尾上はあゆ子の元同級生でもあります。

 

尾上はどうせ今日の練習でも誠と顔を合わせるだろうから、その時にあゆ子から連絡があったことを伝えればいいかと考えました。

ところが誠は、練習時間になってもスタジオにやって来ませんでした。

遅刻どころか、連絡なしの欠席です。

厳格な誉田はそれが分かると誠を降板させることを決定し、即座に代役のオーディションを始めました。

尾上はそのチャンスを見逃さず、カイン役をゲットします。

 

公演の本番まで時間がなかったので、尾上にも厳しい稽古がつけられました。

彼は主役の誠がどれほど追い込まれていたのかを、その時理解しました。

 

実は3年前、HHカンパニーで死亡事故がありました。

当時主役に抜擢された松本穂乃果が、スタジオで熱中症で倒れ、そのまま亡くなったのです。

また、誉田の理不尽に厳しい指導に潰されて、HHカンパニーからは毎年退団者が出ていました。

 

果たして誠は、どこかで死んでいたり、監禁されているのでしょうか。

それとも退団者たちと同じように、精神的に潰されてしまったのでしょうか。

 

関連画像

 

【広告】
 

 

<まとめ>

 バレエの公演で主役を務めることになっていた青年が、突如行方不明になる話です。

青年(誠)の周囲の人間たちが、何らかの形で彼を探そうとします。

 

大抵のミステリーでは、被害者に何が起きたのか、ある程度明示されるものです。

しかしこの小説では全く説明されません。

殺されたようでもあり、誘拐(監禁)されているようでもあり、事故に遭ったようでもあり、自主的に失踪したようでもあります。

読者を不安にさせたままページをめくらせていく構成が、非常に上手いです。

 

後半の怒涛の展開も面白いし、登場人物たちの心理描写も実に巧みでした。

 

⇦クリックするとAmazonに飛べます

⇩⇩⇩⇩⇩

⇧⇧⇧⇧⇧

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

【マンガ】の過去記事リスト(1)~(100)はこちら

【マンガ】の過去記事リスト(101)~(200)はこちら

【マンガ】の過去記事リスト(201)~(300)はこちら

【マンガ】の過去記事リスト(301)~(400)はこちら

【小説】の過去記事リスト(1)~(100)はこちら

【小説】の過去記事リスト(101)~(200)はこちら

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

紙の本も読みなよ / A-key-Hit