【小説・ミステリー】『渇きと偽り』―干魃が人を追い詰める
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『渇きと偽り』ジェイン・ハーパー / 訳:青木創 / 早川書房
⇧2018年7月に文庫版が発売されました。
原題は『THE DRY』 。
<オーストラリアの気候>
日本という年中湿潤な国で暮らしていると実感しにくいことかもしれませんが、
世界には長期間雨が降らない干魃で苦しんでいる国もあります。
オーストラリアもその中の一つです。
オーストラリアは周りを海に囲まれていますが、内陸部には広大な砂漠があります。
オーストラリアはもともと年間の降水量が日本の1/3程度なのに、降雨が安定していません。
エル・ニーニョ現象などの影響を受けると、日照りが数ヶ月から数年も続くことがあるそうです。
大体10~20年に一度は大規模な干魃に襲われています。
干魃は単に、水不足という問題だけに留まりません。
森林火災が頻発するという被害もあるのです。
オーストラリアに広く分布するユーカリは、引火性物質(テルペン)を放出し、気温が高い夏にはその量が増えます。
日照りが続いて乾燥していれば、どこかに火種が発生するとたちまち森全体に燃え広がります。
2009年に起きた森林火災では、東京都の2倍の面積が焼けてしまいました。
また、干魃が起これば農家や牧畜をしている人々も困ります。
作物や草(=エサ)が育たないので、商品が作れないからです。
こういった土地柄で暮らしているオーストラリアの人々は、干魃が続くとピリピリしてきます。
死活問題なのだから当然です。
そういった余裕のない状況では、人々のトラブルも起きやすくなります。
この小説は、そんな大干魃の中で起きた殺人事件が描かれています。
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<あらすじ>
舞台はオーストラリアの田舎町・キエワラ。
メルボルン(首都)で連邦警察に勤めるアーロンは、友人(ルーク)の葬儀のためにキエワラに20年ぶりに帰郷しました。
ルークは自宅から離れた場所に停めたトラックの中で、頭をショットガンで打ち抜いて死んだのです。
自宅にいた妻と息子もショットガンで撃たれて死亡しました。
警察は、ルークが干魃による生活苦から逃れるため、家族を射殺した後に自殺したと判断しました。
しかしまだ幼児である娘だけは射殺されずに生き残っていました。
これに違和感を覚えたルークの両親は、アーロンに再捜査を依頼します。
息子は自殺したのではなく、誰かに殺されたのではないかと。
娘は犯行の目撃証言もできない年齢だから生かされたのではないかと。
かつてアーロンはルークと親友でした。
二人はエリーという少女とも仲が良く、いつも一緒に遊んでいました。
しかしアーロンが16歳のとき、エリーの溺死体が発見されたことで、仲良しグループの関係は終焉を迎えました。
エリーは書き置きを残しており、そこにはアーロンの苗字(フォーク)が書かれていました。
もちろんアーロンには身に覚えがありません。
しかしその日から、アーロンと彼の父は町の住人に嫌がらせを受けるようになりました。
どちらかがエリーを殺した犯人に違いないと決めつけられたからです。
ルークはアーロンをかばうために、事件当日は二人でウサギを狩りに行っていたという偽のアリバイをでっち上げ、ボロが出ないように二人で口裏合わせまでしました。
しかし周囲はそれを信じてくれませんでした。
アーロンの父はエリーと関わりがないにも関わらず、疑われたままでした。
結局嫌がらせに耐えられなくなったアーロン一家は、キエワラを出ていくことになったのです。
その20年前の事件がキエワラの町ではまだ風化しておらず、ルークの事件捜査でアーロンは嫌がらせを受けました。
そのため捜査が難航します。
同時に、アーロンはエリーの死についての真相にも近づいていきます。
果たしてエリーやルークの事件は他殺だったのでしょうか。
だとしたら誰が殺したのか。
自殺だったとしたら一体どんな理由だったのでしょうか。
難航していた捜査の謎が一気に解ける瞬間をお見逃しなく。
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<まとめ>
事件自体は他のミステリー作品と比べてそこまで珍しいものではありませんが、
干魃で町の住人達の余裕がなくなっている状況下で起こる殺人事件の捜査は一味違います。
皆、自分に都合の悪い事実を隠していて、それらが合わさってしまうことで捜査が進展しない前半部分にはヤキモキさせられるかもしれません。
しかし現実の捜査は本来こういうものです。
そんなに都合よく証拠や目撃者が次々出てくるはずがありません。
だからこそ、意外な人物のささいな一言で謎が一気に解決する瞬間は爽快です。
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