【小説】『medium 霊媒探偵城塚翡翠』―誰が犯人かは重要ではない【このミステリーがすごい2020・1位】
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 / 講談社
⇧2019/9/12発売。
ハードカバーです。
『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第1位。
「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング 第1位。
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【小説】『medium 霊媒探偵城塚翡翠』―誰が犯人かは重要ではない【このミステリーがすごい2020・1位】
<「犯人当て」は重要ではない>
ミステリーにおいて登場人物が少ないと、選択肢が限られるので、真犯人が誰なのかは当てやすくなります。
たとえトリックが分からなくても、「物語に意外性を持たせるならこの人物を犯人にするはずだ」というメタ視点で予測することも可能です。
そういうことは作者にも分かっていて、あえてそう書いています。
解決編の前に真犯人が誰なのかを当てられても大丈夫なように、大抵は他に「見せ場」が用意してあります。
それは斬新なトリックだったり、意外な犯行動機だったりします。
作者は「犯人当てゲーム」よりも、そちらに力を注いでいるのです。
この小説でも登場人物は少なく、メタ視点から考えれば犯人はすぐに分かります。
つまりこの小説で「犯人当て」はそこまで重要ではないのです。
一方で、トリックは見抜けないでしょう。
そして、それだけで年間1位の座を獲得したわけではありません。
トリックの他にも驚くべき仕掛けが用意してあります。
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<あらすじ>
ここ数年、関東地方で連続死体遺棄事件が起こり、世間を騒がせていました。
判明しているだけですでに8人の被害者が出ていました。
被害者は女子大生か20代の女性会社員がターゲットになっています。
容姿と年齢が似通っている以外に彼女たちに共通点はなく、殺害現場も不明で、遺棄現場もバラバラで、目撃情報もありません。
犯人につながる手がかりは全く得られていない状況です。
推理作家の香月史郎は、ある日、彼は大学のサークルの後輩だった倉持結花から相談を受けました。
彼女と一緒に霊能者に会ってほしいという依頼です。
倉持は1ヶ月前に占い師に運勢を占ってもらい、その数日後からベッドの側に泣いている女の人が立つようになりました。
気味が悪くなり、もう一度占い師のもとを訪れてみましたが、「対処できない」と言われて「霊媒」と呼ばれる人物を紹介されました。
しかし霊媒という怪しげなものに、一人で会いに行くのは怖いものです。
また、霊感商法で壺などを押し売りされたりすることを心配し、倉持は誰かに一緒に行ってもらうことにしました。
そして選ばれたのが香月です。
香月たちは指定された高級マンションの一室を訪れました。
そこには霊媒師の城塚翡翠という女性がいました。
彼女はたちどころに香月たちの職業を当ててみせました。
霊的な匂いが彼女にそれを教えたそうです。
そして倉持の悩みを解決するため、翡翠は一度倉持の部屋を見に行かせてくれるよう頼みました。
数日後、香月は翡翠と待ち合わせて倉持の家を訪れました。
そこで二人は、すでに死んでいる倉持を発見します。
彼女はテーブルの角に頭をぶつけて殺されたようです。
その後、容疑者は何人かに絞れましたが、決定的な証拠は見つかりません。
そこで翡翠は倉持の霊魂を自分の身体に降霊させ、倉持が死の直前に目にしたものを霊視します。
これにより、犯人は女性だと分かりました。
翡翠の霊媒師としての能力は、死者の霊魂を呼び寄せて、被害者が死の直前に見たものや感じた感情を体験できるというものです。
犯人の情報を得るのは簡単ですが、弱点もあります。
それは霊視して得た情報に証拠能力はないという点です。
だから結局は論理的な推理を構築して、犯人を指摘する手順を踏む必要があります。
また、殺害現場からしか死者の魂を降ろすことが出来ないため、殺害現場の分からない事件では情報が得られません。
それ以降、香月と翡翠はコンビを組んで様々な殺人事件を解決していきます。
そして最終的に、世間を騒がせている連続死体遺棄事件に取り組みます。
殺害場所が一切分かっていないのに、翡翠はどうやって犯人を見つけるのでしょうか。
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<まとめ>
霊媒師の翡翠が死者が直前に見た光景を霊視し、推理作家の香月がそれをもとに推理を組み立て、真犯人を論理的に追い詰めるミステリーです。
「どちらが探偵役か」というより、二人が力を合わせて謎を解くスタイルです。
この記事の前半にも書きましたが、この物語の犯人を当てることはさほど難しくありません。
むしろわざと読者に分かりやすく書いている節もあります。
それによって読者を油断させ、もっと重要な仕掛けに気づかせなくしてあります。
この小説で重要なのは「犯人が誰か」なのではありません。
トリックはもちろんですが、一番驚かされるのは「小説の構造」です。
この形式のミステリーは、たしかに「霊媒探偵」でなければ成立しません。
トリックよりも、作者のアイデア・構成力の勝利と言える小説です。
「2019年の1位」にランクインしたのも納得の一作です。
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