【マンガ】『アルマ』1巻―未来都市での戦闘(ストップモーションの美学)
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『アルマ』三都慎司 / 集英社
⇧2019/12/19発売。
<ストップモーションの美学>
映画やアニメには、動いている被写体を急に静止させる「ストップモーション」という技法があります。
画面が常に動いているからこそ、視聴者をそこに注目させる効果があります。
「重要なシーンになるとスローモーションになる」のも似た効果があります。
一方漫画は、映画やアニメのような動画ではないので、全部の絵がストップモーションといえます。
漫画で人物や物体の動き(現象)を描く場合、適切な瞬間を適切な画角で切り取る必要があります。
これは非常に難しいため、大抵は複数のコマに分けて描かれます。
例えば「銃撃戦」を描く場合。
銃を構える➡敵に狙いをつける➡引き金を引く➡発砲の反動が腕に伝わる➡銃弾が飛ぶ➡敵に当たる➡敵が倒れる
という一連の流れを個別に描いていくわけです。
大抵の作家さんはそうした描き方をしています。
複数のコマに分けた方が、状況説明が簡単だからです。
けれどインパクトが弱くなるというデメリットもあります。
逆に言えば、ある現象(動作)を少ない枚数の絵で表現するほどインパクトが強くなるのです。
漫画家の中には、一連の現象(動作)を1コマ(1枚の絵)だけで描く「ストップモーションの魔術師」ともいえる人がたまにいます。
代表的な方が『スプリガン』『ARMS』『PEACE MAKER』の著者・皆川亮二さんです。
カッコイイ動きの瞬間を切り取らせたら、彼の右に出る者はいません。
そしてこれから紹介する『アルマ』の著者・三都慎司さんも、ストップモーションを描くのが非常に上手いです。
上手い背景画を描くには、極端な方法として、綺麗な風景の写真を探してトレースすれば出来ます。
つまり静止画は対象が明確なので描きやすいのです。
一方、動きのある絵は、何かの動画を参考にしたとしても、どの瞬間を切り取るかは描き手のセンスが問われます。
そもそも作者が描きたいと思っている場面が、そのままお手本となった状態で世の中で動画になっていることはありません。
ストップモーションは、漫画家の脳内に明確なイメージがないと描けません。
カメラの位置、重力の方向、光の方向、風向き、髪や服のなびき方、筋肉の動き方、全身の姿勢、服のシワの寄り方、木の葉や水しぶきや炎の舞い方などです。
これらの参考動画を撮影しようとしても、現実はカッコよく動いてくれません。
カッコイイ瞬間を動画に収めることは、静止画よりも圧倒的に難しいのです。
橋本環奈さんを広く世に知らしめた「奇跡の一枚」とは、
被写体の可愛さもさることながら、ベストなタイミングとカメラの角度という条件をクリアしたから生まれたものなのだと思います。
脳内に明確なイメージを持ち、かつ最上級の画力を持っている漫画家だけが、ストップモーションを効果的に使えます。
誰が見ても何が起きているのか理解できる瞬間を切り取るセンスと、この瞬間こそが一番カッコイイ(綺麗)のだという作家の美学が問われるからです。
この漫画のジャンルはSFですが、ストップモーションにも注目しながら読んでみて下さい。
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<あらすじ>
2105年。
過去に起きた戦争によって、人類文明は崩壊しました。
今や人間の姿はどこにもなく、かつて人間が生活していた都市は荒れ果てています。
主人公の青年・レイは、そんな都市の中でリチェという女と二人だけで暮らしていました。
彼らの生活圏に他の人間はいません。
レイたちがなぜ生き残っているのかは、読者には明かされません
レイは毎日、他に生存者がいないか都市の中を探し回っています。
彼はハムスター型のサポートロボット(ラムダ)と一緒に行動し、まだ行ったことのない場所のデータを集め、自分が住んでいる場所を中心とした地図を作成中です。
地図は日に日に拡大していきますが、人間はまだ一人も見当たりません。
だからリチェは、もう世界には自分達しか残っていないと諦めています。
しかしレイは「いつか他の人間に出会えるだろう」と希望を捨てていませんでした。
ある日突然、飛行バイクに乗った女型アンドロイドが、レイたちのもとへやって来ました。
アンドロイドはリチェに襲いかかり、リチェは応戦します。
二人は互角の戦いをしましたが、アンドロイドの仲間が通り過ぎて行ったため、アンドロイドは戦いを切り上げて去っていきました。
アンドロイドは去り際に一言残していきました。
「明日の南中、人工フレアの打ち上げによるギジンの掃討が行われる。」
詳しいことは分かりませんでしたが、レイたちは今住んでいる場所が危険だと判断し、北へ向かうことにしました。
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<まとめ>
未来の荒廃した都市を舞台としたSFアクションです。
まだまだ物語は始まったばかりで、「ギジンとは何なのか」「レイはなぜ生きていられたのか」といった謎は次巻以降で明かされていくようです。
冒頭の見開きもそうですし、戦闘シーンのストップモーションが非常に躍動感があってカッコイイです。
ヤングジャンプに連載されているのですが、このクオリティの絵を週刊誌でやっているのは驚異的です。
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